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第140話
「お前が言った言葉、全てそのままお返しするよ!
お前は可愛いから、俺だってお前を誰かに奪われないか不安で不安で気が狂いそうだよ!」
「可愛いとか、そんなこと思ってるのあんただけだよ……」
「そんなことない!!
チビちゃんとかメガネくんとか梓ちゃんとか、他にもお前を好きだって思ってる人なんて腐るほどいるよ!」
「なっ、なんでそこで月島が出てくるんだ!?
それに新藤さんは……」
新藤さんは本当は及川さんが好きだけど、それを彼には知られたくなくて思わず口ごもる。
それに日向のことも、俺からは何も言えない。
「お前はおバカだから気付いてないだけだよ。それで飛雄は好みの奴に告白されたら、あっさりと俺を捨てるの?」
「そんなことあるわけねーだろ!!」
及川さんの言葉に無性に腹が立って声を荒らげると、彼も険しい顔つきになって、グッと痛いほど肩を掴んできた。
「っっ!!」
「そんな保証何処にもないだろ!!」
「俺の好みの奴は及川さんなんだよ!
俺は及川さん以外の人なんて考えられない。
あんたは俺の初恋で、この恋は叶わない、ずっと心の中に隠しておこうって決めた中学のあの日からずっと今までずっと、変わることなんてないんだ!
俺の初恋をバカにするんじゃねーよ!!」
そう捲し立てて今度は俺が及川さんの肩を掴もうとしたその次の瞬間に、それをかわされて痛いほど力強く抱き締められた。
「ちょっ! 及、川、さん、ぐるじぃ……」
あまりの苦しさに彼の背中を叩くと、少しだけ力を緩めてくれた。
だけど、まだ苦しく抱き締めたままだ。
「我慢しろ! それもそっくりそのままお返ししてやるよ!
俺だってお前が初恋だって言っただろバカ! それに昨日のチビちゃんとの話聞いてたんでしょ?」
図星過ぎて、思わずギクッと体が揺れる。
やっぱりバレてたよな……
「あれでバレてなかったと思ってたの?
あの話で分かっただろ……俺は飛雄を忘れたことなんて一度もなかった。
ずっと飛雄でいっぱいで、飛雄以外の人なんて好きになれない。
俺はお前に捨てられたら、もう恋なんて出来ないし、ずっと一人ぼっちだよ?
そんな可哀想な及川さんをお前は見捨てるの?」
「見捨てるわけねーだろ……さっき言ったでしょ?
俺だって及川さん以外の人なんて考えられないって……
他の誰かに告白されたとしても、及川さんじゃねーとダメなんだよ俺は……
及川さんは初恋の人で、それ以外の人を今まで好きになったことなんてありません。
これからもずっとそれは絶対に変わりません!」
「ふふっ、俺達お揃いだね!」
「お揃いって、なんだよそれ」
彼がやっと笑ってくれて、俺も嬉しくて笑顔になれる。
「飛雄、自分の言葉には責任持てよ。
絶対約束守れよ!」
「及川さんこそ!」
「俺は絶対に大丈夫ですぅ~」
「俺だって大丈夫です!」
「ほんとかなぁ~?」
「本当です!!」
意地悪な顔で彼がからかってくるから、俺は向きになりながらも、でも彼らしくて、嬉しくて、自然と笑顔になる。
あんたが泣くと、スゲーこっちまで辛くなる。
意地悪な顔は腹立つこともあるけど、でもそれは及川さんらしくて、好きだって思った。
そんなことを考えて思わず笑っていると、突然チュッと音をたててキスされた。
「な"っ!!」
「可愛かったから、キスしたくなっちゃった」
「あんたまた可愛いって! 可愛くなんかないです!」
そう言っているのに彼はそれを無視して、またキスしてくる。
「でも、いーでしょ?
大好きな及川さんのチューなんだから。
有り難く受け取りなよ飛雄!」
何言ってんだよって言ってやりたかったけど、あまりにもものすごい満面の笑顔で満足そうに言うもんだから、やり返してやりたくなる。
「あんたも俺のこと大好きだろ?」
その質問に及川さんは瞳を甘くして、妖美な笑みを浮かべた。
ちょっとは照れろよ……
質問したこっちが恥ずかしくなるだろ……
なんて思いながら、彼の首に腕を回して強引にキス返ししてやる。
「大好きだから……ずっと俺の傍にいてください」
顔熱い……
自分でしたくせに、ものすごく恥ずかしくて。
彼の顔を恐る恐る見ると、さっきまで余裕そうな笑みを浮かべていたくせに、なんだか頬が赤くなった気がする。
そんな及川さんのせいで余計に顔が熱くなる。
二人で真っ赤になって
彼は悔しそうな顔をしながらも、大きく頷いた。
「もちろんっ!」
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