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第143話
今まで誰かと付き合ったことないし、だからもちろん誰かを抱いたこともない。
及川さんとは何もかもが初めて。
抱かれるも抱くも
俺の初めてが及川さんで良かった。
この人で最初で最後だと思ってる……
「及川さん……今から俺が気持ち良くしてあげます」
そう言って及川さんをベットに押し倒した。
緊張しながらもその上に覆い被さって、彼を見下ろす。
「まさかトビオちゃんを見上げる日がくるなんてねぇ~
しかもまさか、この及川さんが押し倒されるなんて……」
「嫌ですか? 俺に抱かれるの……」
目を閉じてため息を吐く及川さんに、今更不安で押し潰されそうになった。
彼を抱きたいと思う理由
風邪引いてるくせにどうしても俺に触れたいって言う、恋人の体に負担をかけさせないために
という理由もあるけど……
それよりも一番の理由は、
俺も好きだからあなたに触れたい、気持ち良くさせてみたいんだ。
あなたがそれを許して、望んでくれるなら……
でも……及川さんは俺に抱かれることを望んでない?
なら俺は……
「コ~ラ飛雄!
何辛気臭い顔して固まってんの?
ヤるならさっさと始めな」
「い、いーんすか? 俺が抱いても……」
「良いも何も、俺達付き合ってるんだよ。
好き同士なんだから、別にどっちが受けでも攻めでもいーでしょ?」
「お、及川さん……
じゃあ、俺があんたを抱いてもいーんすね!」
及川さんの言葉に嬉しさが込み上げてくる。
そんな俺に彼は、またニヤリと口角を上げた。
「でも好き同士でもやっぱり向き不向きってもんがあるんだよトビオちゃん」
「は? 向き不向き?」
「そ。つまり、お前に攻めは無理って俺がちょっとでも思ったら、容赦なく俺が攻めに戻ってお前をぐっちゃぐっちゃに抱いてやるよ♪」
「そんなことには絶対なりませんよ!
俺が及川さんをぐちゃぐちゃに抱いてやります!
及川さんは風邪引いてんだから俺に任せて、おとなしく横になってれば良いんすよ!」
「風邪は何ともないに……まあいっか。
飛雄、思いっきり俺を抱いて満足させてみなよ」
「ハ、ハイ!」
別に攻めになりたいとかじゃ無いけど、
あなたのことが好きだから……
俺は及川さんの服をゆっくり捲り上げた。
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