153 / 345

第152話

「これからもずっと心と心が繋がっていられるよう、俺達の間に秘密事は一切なし。 約束……守れるよね、飛雄」 もうこれ以上擦れ違わないように、悩まず苦しまないために 及川さんと繋がっていたいから…… 「約束、します……」 深く頷くと及川さんは嬉しそうに綺麗な笑顔を浮かべてから、スッと俺の方へ小指を差し出してきた。 「じゃあ、指きりしよ」 「えっ! 指きりってなんかガキっぽいっすよ?」 「ガキでもなんでもいーじゃん! 俺はどうしても飛雄と指きりしたいの。 恋人同士が小指と小指を絡めるのって、なんか良いと思わない? ね、やろーよ指きり」 そんな可愛い無邪気な顔で言われたら、断ることなんて出来るわけないじゃないか。 俺はおずおず手を及川さんの方へと差し出そうとすると、その手を素早く掴まれ小指を絡め取られた。 「フフ……じゃあ、始めるね! ゆーびきりげーんまーん」 楽しそうに手を上下に振る及川さんがあまりにも可愛くて、なんか恥ずかしくて俺は自然と頭が下へと下がってしまう。 恥ずかしがっている俺に、更に及川さんが追い討ちをかけてきた。 「嘘ついたら~キス1000回しても~らうっ!」 「えっキス!? 針は? え?」 「ゆ~びきった!!」 ブンブンと振った後パッと手を離してから、及川さんはニンマリと満面の笑みを浮かべた。 そんな彼に俺は下げていた顔を慌てて上げて、これでもかと言うほど大きく目を見開いた。 「あ、あの普通針1000本じゃあ?」 「イヤだ!」 「え?」 突然真面目な顔をして大きな声を出した及川さんに、俺はビクッと身体を揺らした。 そんな俺の肩に彼は両手を乗せてから、ゆっくり顔を近付けてくる。 「好きな人に針1000本も呑ませるなんてイヤだよ。 罰だろーがなんだろーが、恋人とならやっぱりキスしたいだろ」 指きりなんてたかが子供がする遊びのようなものに、そんな真面目な顔するなんて…… 今日のあんたはなんか可愛くて、ちょっと変ですよ? 風邪引いてるからか? それでも、恋人と小指と小指を絡めてドキドキして ただの遊びなのに、好きな人に針1000本も呑ませたくないなんて言われたら…… なんかもう……止まらなくなる 「それに、キス1000回もするのって、結構大変で疲れると思うよ」 「そーすね……でも、キス1000回してみたくなる…」 思わず口から飛び出してしまった言葉に、彼は目を細めてまた綺麗に微笑んだ。 「俺もそう思ってた…… でも、これは約束を破った時の罰なんだからね! キスしたいからって隠し事しちゃダメだよ」 「及川さんもですよ」 「ハハ……」 小さく笑って及川さんは、俺の頬を両手で包み込んでコツンと額と額をくっつけてきた。 それにドキドキしながら、やっぱり熱いなぁ~なんて思ったり。 約束を破った時の罰…… でもこれは、二人にとってのご褒美でもあるように思えた。 これってやっぱり罰じゃないだろって思うけど それでも絶対、絶対破りません 約束、守りますよ及川さん 必ず……

ともだちにシェアしよう!