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第153話
結局あの後及川さんは、完全に風邪でダウンして寝込んでしまった。
真っ赤な顔して苦しそうに荒い息を吐く彼の看病をしてあげたかったけど、何をしてあげれば良いのか分からずただあたふたするばかりだった。
そんな俺に及川さんは、
「トビオちゃんは俺にお粥を作って、口移しで食べさせてくれるだけでいーからね」
風邪で苦しいはずなのにそんな冗談が言えるとは……
なんか大丈夫そうだな
さっきまで良い雰囲気だったのに、その言葉で全てが台無しになったよ及川さん……
なんてため息を吐きながら母さんに助けを求めるため電話したら、めっちゃくちゃ怒鳴られたけど及川さんの家に居るって言ったら笑って許してくれた……
なんか母さんって及川さんのことお気に入りだよな……
「で? 大王様もう大丈夫なのか?」
「おお。もう大分落ち着いて、熱も下がったみたいだ。
母さんが作ってくれた雑炊置いてきたから、あれ食ってゆっくり休んでればもう大丈夫だろ」
「そっか、良かった! それでお前の方は?」
「ああ、俺は見ての通りもう大丈夫だよ。
日向、その、心配かけたな……サンキュー…」
日頃から日向に礼なんてほとんど言ったことないから、改めて言うとなんかスゲー恥ずかしい。
明後日の方向に視線をずらして言うと、なんの前触れもなく日向が俺の髪をグシャッと掻き回してきた。
「オワッ! 日向やめ、イテーだろーがボゲェ!」
「ハハハっ、心配すんのは当たり前だろ! 俺達友達なんだからさ!」
乱暴に掻き回してくる手を掴んで睨んでやったけど、その怒りを吹き飛ばすような笑顔を浮かべて嬉しくなるようなこと言ってくれるから、思わず日向をマジマジと見つめてしまった。
自分のことを心配してくれる親友が居るって、なんかスゲー嬉しくて、スゲー特別な事なんだなって思う。
日向……俺の親友になってくれて、ありがとう……
「なぁ~に君達見つめあってんの?
気持ち悪いんだけど……」
まだまだ少し気まずさはあるけど、
それでも日向とまたこうやって話せて、親友として傍にいられる喜びを噛み締めていたら、月島が嫌~な顔をしながら近付いてきた。
「別に見つめあってなんかねーよ……」
「そー言えば大王様風邪引いたらしいけど
やっぱり王様と大王様二人で、貴族的な遊びしすぎて風邪引いちゃったんじゃないの~?
ほどほどにしなよ」
「んだよ貴族的な遊びって!」
「さぁ~? 一般庶民の僕には分かりませ~ん」
相変わらずいちいちむかつくこと言ってくる奴だな
なんでコイツこんなに喧嘩売ってくるんだ?
ムカつく……
イライラして思いっきり睨んでやったけど、月島は怯むことなく余裕そうな表情で俺を見返してくる。
そんな月島の腕を日向が苦笑いしながら、横からつついた。
「月島、そうやってあんまり影山を困らせんなよ。
お前が性格悪くて意地悪なのは皆知ってっけど、もう少し素直にならねーと影山鈍感なんだからさ。
普通分かることも影山には分かんねーんだから」
「んだ日向ボゲェ! バカにしてんのかゴラぁ!」
「王様うるさい……
別に分かんなくても良いし、余計なお世話だよ……
てゆーか、なんか日向余裕そうだね?
前までは僕に邪魔するなとか抜け駆けするなとか言ってたのに、なんかもう吹っ切れてる感じだね」
「まあね……月島には悪いけど、俺大王様の応援するって決めたから」
「何それ……」
及川さんの応援するって、それって俺達の応援してくれるってことだよな。
親友が味方でいてくれるってスゲー心強い。
恥ずかしいから顔や声には出せないけど、俺は嬉しすぎて心中で口角を上げた。
そんな俺と日向を交互に見てから、月島は何故かニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「ふ~ん。なんか色々あったみたいだね。
ま、邪魔な奴が減って楽になって良かったよ。
王様、日向は君達の味方になったみたいだけど、僕は違うから。
君達からかって遊ぶと面白いし、これからも邪魔して楽しませてもらうからね。
庶民の遊びに付き合ってよ、王様」
本当性格悪いな……ムカつく
俺は楽しそうに怪しく笑う月島をまた睨み付けてやったけど、効果はなさそうだった。
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