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第157話
男ならってどう言うことだ? 関係あるのか?
腕をグッと握って新藤さんは、口をへの字にさせて真っ直ぐ俺を見上げてきた。
そんな彼女の行動に、頭上に?を沢山浮かべて固まっていると、及川さんが大きなため息を吐いた。
「何言ってんの? いつも絶対誰かと一緒ってことないでしょ?
一人で帰る時もあるでしょ」
「そりゃあるけど……今日もしかしたら悪い人に襲われちゃうかもしれないよ!
そしたら私を送っとけば良かったって、後悔すると思うけどなぁ~
ねぇ、とびお?」
「そんな都合よく今日襲われるわけないでしょ?
飛雄と帰りたいからってそんな適当なこと言って、飛雄を困らせないでよね。
ほら飛雄、梓ちゃんは一人でも大丈夫だから、帰るよ」
「うぅ~、とーびーおー!」
まぁ、確かに都合よく今日襲われるなんてあり得ないことだと思うけど、最近物騒だし本当に何があるか分からない。
もしかしたら一人で帰らせて、そこに危ない奴が絶対いないって言い切れるわけじゃねーし……
「ホラ飛雄、早く帰るよ!」
「あ、あのすんません! やっぱり新藤さんを家まで送りませんか?
女一人で帰らすのは危ねーし」
苛立ちを隠さず俺を帰るよう促してくる及川さんに、待ったをかける。
そう言った俺に彼は、今日一番の歪み顔を見せてきた。
「は、ハァァ?! 何言ってんだよ飛雄!
そんなこと言ってたら、毎日一緒に帰らなくちゃいけなくなるだろ」
「あ、明日からは友達と帰ってもらって……今は傍に俺達しかいねーし……だから、その……」
「わぁ~とびおやっさしぃーー! ありがとう♡
さ、いこいことびお!」
「あ、ちょっと! 手を握るのはダメだってば!」
及川さんの苛立ちに口ごもった俺の手を嬉しそうに握って、歩きだす新藤さん。
イライラを顔に滲み出させた及川さんが、俺と新藤さんの間にさっきと同じように割り込む。
バカだ俺……何ライバルに塩を送るようなことしてんだ。
本当にバカだ……
新藤と書かれた表札が掲げられた家の前まできて、新藤さんがニコッと俺の方を向いて微笑んできた。
「わぁ~二人ともありがとう♡
二人のお陰で無事帰れました!」
「あーハイハイ無事に送り届けたよ。
早く家の中に入れば?」
未だ不機嫌顔のまま新藤さんの手を離して、顔を背ける及川さん。
そんな彼を楽しそうに見つめてから、新藤さんが俺の方へニヤニヤ顔で近づいてきた。
「とびお……今日はありがとうね……
また、よろしく
ね……」
そう及川さんに聞こえないように怪しく笑って囁いてから、突然背伸びをして俺の頬にキスをしてきた。
「ッッ!?!!?」
「あっ! は、ちょっと梓ちゃん!
ふざけないでよ!!」
「ふふふ~じゃあねぇ~二人とも!
また遊ぼーねぇ!!」
意地悪そうに笑ってから、新藤さんは元気よく手を振って家の中へ入っていった。
突然のキスにはビックリしたけど、それよりも……
またよろしく、って……
それはつまり
また利用するから よろしくってことか?
「もぉ飛雄! 何また梓ちゃんにキス許してんの!
本当に飛雄はバレー以外では鈍いんだから!!
まんまと梓ちゃんの仕掛けた罠にはまったりして」
ギャーギャーと怒りながら俺の頬を乱暴に拭く及川さんの言葉が、上手く聞き取れないほど困惑していた。
こんなんじゃ俺……本当にまた利用されてしまうかもしれない……
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