158 / 345

第157話

男ならってどう言うことだ? 関係あるのか? 腕をグッと握って新藤さんは、口をへの字にさせて真っ直ぐ俺を見上げてきた。 そんな彼女の行動に、頭上に?を沢山浮かべて固まっていると、及川さんが大きなため息を吐いた。 「何言ってんの? いつも絶対誰かと一緒ってことないでしょ? 一人で帰る時もあるでしょ」 「そりゃあるけど……今日もしかしたら悪い人に襲われちゃうかもしれないよ! そしたら私を送っとけば良かったって、後悔すると思うけどなぁ~ ねぇ、とびお?」 「そんな都合よく今日襲われるわけないでしょ? 飛雄と帰りたいからってそんな適当なこと言って、飛雄を困らせないでよね。 ほら飛雄、梓ちゃんは一人でも大丈夫だから、帰るよ」 「うぅ~、とーびーおー!」 まぁ、確かに都合よく今日襲われるなんてあり得ないことだと思うけど、最近物騒だし本当に何があるか分からない。 もしかしたら一人で帰らせて、そこに危ない奴が絶対いないって言い切れるわけじゃねーし…… 「ホラ飛雄、早く帰るよ!」 「あ、あのすんません! やっぱり新藤さんを家まで送りませんか? 女一人で帰らすのは危ねーし」 苛立ちを隠さず俺を帰るよう促してくる及川さんに、待ったをかける。 そう言った俺に彼は、今日一番の歪み顔を見せてきた。 「は、ハァァ?! 何言ってんだよ飛雄! そんなこと言ってたら、毎日一緒に帰らなくちゃいけなくなるだろ」 「あ、明日からは友達と帰ってもらって……今は傍に俺達しかいねーし……だから、その……」 「わぁ~とびおやっさしぃーー! ありがとう♡ さ、いこいことびお!」 「あ、ちょっと! 手を握るのはダメだってば!」 及川さんの苛立ちに口ごもった俺の手を嬉しそうに握って、歩きだす新藤さん。 イライラを顔に滲み出させた及川さんが、俺と新藤さんの間にさっきと同じように割り込む。 バカだ俺……何ライバルに塩を送るようなことしてんだ。 本当にバカだ…… 新藤と書かれた表札が掲げられた家の前まできて、新藤さんがニコッと俺の方を向いて微笑んできた。 「わぁ~二人ともありがとう♡ 二人のお陰で無事帰れました!」 「あーハイハイ無事に送り届けたよ。 早く家の中に入れば?」 未だ不機嫌顔のまま新藤さんの手を離して、顔を背ける及川さん。 そんな彼を楽しそうに見つめてから、新藤さんが俺の方へニヤニヤ顔で近づいてきた。 「とびお……今日はありがとうね…… また、よろしく  ね……」 そう及川さんに聞こえないように怪しく笑って囁いてから、突然背伸びをして俺の頬にキスをしてきた。 「ッッ!?!!?」 「あっ! は、ちょっと梓ちゃん! ふざけないでよ!!」 「ふふふ~じゃあねぇ~二人とも! また遊ぼーねぇ!!」 意地悪そうに笑ってから、新藤さんは元気よく手を振って家の中へ入っていった。 突然のキスにはビックリしたけど、それよりも…… またよろしく、って…… それはつまり また利用するから よろしくってことか? 「もぉ飛雄! 何また梓ちゃんにキス許してんの! 本当に飛雄はバレー以外では鈍いんだから!! まんまと梓ちゃんの仕掛けた罠にはまったりして」 ギャーギャーと怒りながら俺の頬を乱暴に拭く及川さんの言葉が、上手く聞き取れないほど困惑していた。 こんなんじゃ俺……本当にまた利用されてしまうかもしれない……

ともだちにシェアしよう!