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第167話
……なんで月島が俺にキスを?
意味分かんねぇ……
俺が身体の熱を全て吐き出したのを見つめてから、月島がゆっくり唇を離した。
それと同時に及川さんが俺から素早く陰茎を抜いて、月島に掴みかかった。
イッたばっかでその余韻が残る身体は上手く動いてくれず、倦怠感で俺はその場に頽れた。
「メガネくん……君さ、俺を本気で怒らせたいの?」
「怒りたいならどうぞ。
僕はあなたの僕じゃないんで、命令されて素直に言うことを聞くと思ったら大間違いですよ」
睨み合う二人に混乱が消せない。
なんで月島は俺にキスをして、二人は睨み合っているんだ……?
月島の胸ぐらを掴み上げた及川さんの手に力が入ったのが見え、俺は身体に無理矢理鞭を打って、渾身の力をふりしぼり立ち上がった。
及川さんの腕にしがみつき首を振る。
「お、及川さん!! 暴力はダメです!」
「飛雄は俺以外の人にキスされて平気なの!?
俺は嫌だよ! 今メチャクチャ腹立ってる」
「もちろん平気じゃないですけど、暴力はダメです!
バレー出来なくなったらどーするんすか?
俺だって嫌です。及川さんがバレー出来なくなるの!」
ギュッとしがみつき必死に訴え掛けると、及川さんは俺の顔をしばらく見つめた後、悲しそうに眉を顰めて月島から手を離した。
そんな彼にひとつ安堵のため息を吐いてから、月島をキッと睨み付けた。
「なんで、なんであんなことしたんだよ……?」
「なんでだと思う?」
「はぁ!?」
余裕綽々そうな笑みを浮かべた月島に、今度は俺が苛立ちを感じて思いっきり眉間にシワを寄せた。
すると月島は更に笑みを深くして、俺の頬へと手を伸ばしてきた。
スルリと撫でられくすぐったくて、でもゾワゾワする感触に怯んで身を引いた俺を、及川さんが守るように抱き締めてくれる。
「いい加減にしなよメガネくん……」
「だから僕はあなたの言うことは聞きませんって。
王様があまりにも可愛い声を出してたから面白くって、ちょっとからかっただけですよ。
王様、また遊んでよ。
たまには庶民の遊びに付き合うのも楽しいもんですよ」
そう笑いながら憎まれ口をたたいたくせに、月島の表情はどことなしか切なそうに見え、目を見開いた。
そんな俺を一瞥してから、月島は何も言わず眉を下げ笑って立ち去って行った……
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