168 / 345

第167話

……なんで月島が俺にキスを? 意味分かんねぇ…… 俺が身体の熱を全て吐き出したのを見つめてから、月島がゆっくり唇を離した。 それと同時に及川さんが俺から素早く陰茎を抜いて、月島に掴みかかった。 イッたばっかでその余韻が残る身体は上手く動いてくれず、倦怠感で俺はその場に頽れた。 「メガネくん……君さ、俺を本気で怒らせたいの?」 「怒りたいならどうぞ。 僕はあなたの僕じゃないんで、命令されて素直に言うことを聞くと思ったら大間違いですよ」 睨み合う二人に混乱が消せない。 なんで月島は俺にキスをして、二人は睨み合っているんだ……? 月島の胸ぐらを掴み上げた及川さんの手に力が入ったのが見え、俺は身体に無理矢理鞭を打って、渾身の力をふりしぼり立ち上がった。 及川さんの腕にしがみつき首を振る。 「お、及川さん!! 暴力はダメです!」 「飛雄は俺以外の人にキスされて平気なの!? 俺は嫌だよ! 今メチャクチャ腹立ってる」 「もちろん平気じゃないですけど、暴力はダメです! バレー出来なくなったらどーするんすか? 俺だって嫌です。及川さんがバレー出来なくなるの!」 ギュッとしがみつき必死に訴え掛けると、及川さんは俺の顔をしばらく見つめた後、悲しそうに眉を顰めて月島から手を離した。 そんな彼にひとつ安堵のため息を吐いてから、月島をキッと睨み付けた。 「なんで、なんであんなことしたんだよ……?」 「なんでだと思う?」 「はぁ!?」 余裕綽々そうな笑みを浮かべた月島に、今度は俺が苛立ちを感じて思いっきり眉間にシワを寄せた。 すると月島は更に笑みを深くして、俺の頬へと手を伸ばしてきた。 スルリと撫でられくすぐったくて、でもゾワゾワする感触に怯んで身を引いた俺を、及川さんが守るように抱き締めてくれる。 「いい加減にしなよメガネくん……」 「だから僕はあなたの言うことは聞きませんって。 王様があまりにも可愛い声を出してたから面白くって、ちょっとからかっただけですよ。 王様、また遊んでよ。 たまには庶民の遊びに付き合うのも楽しいもんですよ」 そう笑いながら憎まれ口をたたいたくせに、月島の表情はどことなしか切なそうに見え、目を見開いた。 そんな俺を一瞥してから、月島は何も言わず眉を下げ笑って立ち去って行った……

ともだちにシェアしよう!