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第170話

及川side 飛雄と喧嘩しちゃった なんであんなことで喧嘩しちゃったんだろう…… 本当は喧嘩なんてしたくなかったのに、飛雄が意地っ張りだから。 俺が謝るまで口きかないとか、そんなの我慢出来るかちょっと自信ないんだけど…… 飛雄の声聞きたいし、学校違うから離れてる分いっぱい喋りたいのに。 飛雄のバカ! 及川さんの気持ち全然分かってないんだから。 俺がなんで怒ってるのか、本当の意味絶対分かってないよあいつ! それがなんか悔しくて、寂しくなって 俺は長いため息を吐きながら窓の外をボンヤリ眺めていると、隣から岩ちゃんに声を掛けられた。 「おいグズ川。辛気くせー顔してっけど、影山となんかあったのか?」 「あ、やっぱり分かっちゃう? 岩ちゃんには隠し事出来ないなぁ…… 実は昨日飛雄と喧嘩しちゃって……ってうぇっ!!」 なんとか笑って喋りながら岩ちゃんの方へ目線を向けると、そこにいたのは岩ちゃんだけではなかった。 「ゲゲゲゲッ! 梓ちゃん!」 「やっほぉーー徹ぅ~昨日はありがとうねぇ~助かったよぉ~♪」 「な、なな、な、なんで岩ちゃんと梓ちゃんが一緒にいんのさ!!」 「んだよ? いたらワリーのか?」 「いや、悪いことはないけ……じゃなくて悪いよ!」 「んでワリーんだよ!?」 「悪いもんは悪いの!!」 飛雄と喧嘩をした原因の1つ梓ちゃんと、岩ちゃんが一緒にいることに苛立ちを感じて思わず声を荒らげた俺に、岩ちゃんも何故か声を荒らげてくる。 なんでそこで怒るのさ、岩ちゃんのバカ…… 俺は梓ちゃんのせいでこんなに苦しんでるのにさ…… 頬を膨らまして拗ねていると、梓ちゃんが慌てたように手を振った。 「わぁー喧嘩しないで! ただ昨日のお礼が言いたくて徹に会いに行こうと思ったら、岩ちゃんと廊下でバッタリ! 岩ちゃんも徹のとこに行くってゆーから、一緒に来ただけよ!」 「喧嘩しないでってこれ梓ちゃんのせいなんだけど。 てゆーかお礼って、俺は別に梓ちゃんを送るつもりなかったのに飛雄が…… だからお礼を言われる筋合いないよ!」 「でも送ってもらったのは確かだし、徹にちゃんとお礼が言いたかったの! ありがとうね徹」 梓ちゃんって律儀だよねぇー……初めて会って手当てした時も確かお礼にクッキーくれたことあったし。 飛雄を取り合ってライバルになっちゃってるけど、本来梓ちゃんは明るくて面白く、優しい人なんだって思う…… 梓ちゃんが飛雄を好きじゃなかったら、俺達絶対友達になれてたのに。 梓ちゃんの人間性は好きだって思ってるから…… でもだからって飛雄は渡さないけどね! 「てゆーかさっき、飛雄と喧嘩したって言ってたよね?」 いい人だとか人間性好きだとか考えてたけど、そーだよ! 飛雄と喧嘩しちゃった一番の原因は梓ちゃんだよ! さっきの聞かれちゃったけど、梓ちゃんにバレたら色々ヤバイよね。 隠さないと!! 「あぁ~言ってない言ってない、飛雄とは仲良し小好しだよ~うへぺろ~」 「…………岩ちゃん、徹って嘘つくの下手だね……」 「こいつ昔から嘘つくの下手なんだよな……」 「なっ! 嘘じゃないもん!! つーか岩ちゃんには言われたくないなその言葉!」 「あーー……それ自分でも自覚してっから。 この前影山にも言われちまったし……」 「……ねぇ、喧嘩したのって、もしかして私のせい?」 岩ちゃん飛雄にも嘘ついて見破られたんだ。 あのおバカ飛雄にバレるとは相当だよねなんて苦笑していると、梓ちゃんがらしくないちょっと低い声でそう質問してきた。 申し訳なさそうな顔をしてるように見えるけど、目線は逸らして合わせないようにしている。 何を思ってそう聞いてるの? 「そーだね……梓ちゃんのせいだよ」 俺はキッパリとそう言い切った。 梓ちゃんは一瞬体を揺らして動揺の色を見せたけど、表情は崩さず今もなお目線を合わせないまま静かに口を開いた。 「そっか…… このまま喧嘩して別れてくれたら良いのに……」 「なっ!」 「ごめんね……でも私それだけ本気だから」 そう言ってからやっとこちらを向いた梓ちゃんは切なそうに笑って、小さく手を振って立ち去っていった。 俺は酷いこと言われたのに、ムカつかなきゃいけないのに、何故か梓ちゃんが可哀想に見えて仕方なかった。

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