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第171話
及川side
似合わないよ、あの顔は……
前にも見たことあるその顔に、胸の辺りがザワザワしだした。
俺は沢山の人を傷付けてきた。
梓ちゃんもその一人で、俺は存在するだけでこれからも沢山の人を傷付け続けるのかもしれない。
どうしたら人を悲しませずにすむのだろうか?
その方法があるのなら、俺は今すぐ知りたい。
「ねぇ岩ちゃん、俺また梓ちゃんを傷付けちゃった。
いったい何人の人を傷付ければ気が済むんだろーね?
本当にやになっちゃうよ……」
こんなことを岩ちゃんに言ったってこの事実を消すことなんて出来ないのに、彼を困らせると分かっていながらも答えが欲しくて。
遣る瀬無い気持ちでジッと岩ちゃんを見つめて、返事を待つしか思い付かない。
岩ちゃんは1つ長いため息を吐いて、見つめ返してきた。
「新藤を心配してる場合か?
お前影山と喧嘩したんだろ? それを引きずってバレーに集中出来ないとか言ったら、ブッ飛ばすからな!」
「わ、分かってるよそんなこと!」
「本当だろーな? たくっ……
でもまぁ仕方ねーだろ、お前は影山が好きなんだから。
誰も傷付けたくないって思ってるんだろーけど、だったら新藤を傷付けないために影山と別れるってのか?」
「いや、嫌だよ! 飛雄と離れるなんて無理だよ!
絶対別れたくない。飛雄を失ったら俺、俺……」
必死に首を振って俯いた俺に、岩ちゃんはまたため息を吐いた。
呆れられた?
そう思ってますます俯くと、岩ちゃんが俺の髪の毛を乱暴に掻き回してきた。
「うわゎ!! また岩ちゃんグチャグチャにして!
止めてよ、これ直すの大変なんだよ!」
「うっせぇボゲェ! お前の頭見てっとグチャグチャにしたくなるんだよ!
…………誰も傷付けたくないなんて思っても、生きてたら絶対誰かを傷付けてしまうもんなんだよ。
お前だけじゃない、新藤だって誰かを傷付けているかもしれねーし、俺だってそーだと思う。
もし他の人を傷付けないために影山と別れたら、今度は影山を傷付けることになるだろ?
それに今、お前は影山と喧嘩して傷付いてる。
そーだろ?」
「あ……うん……」
「どーしたって誰かを傷付けてしまうけど、一々気にしてたら埒が明かねーだろ!
人の心配してねーで、自分の心配しろ!
自分が傷付かないために、影山を傷付けないためにお前はこれからどーする?」
「……と、飛雄のところに行く!
飛雄バカだから危機感ないし、またメガネくんに狙われるかもしれない!
俺が守らないと!」
本当に岩ちゃんはすぐに俺の悩みを解決してくれる。
岩ちゃんなら俺が一番欲しいと思える答えを、絶対教えてくれると思ってたよ。
頼りになって、カッコいい自慢の親友
「ありがとう岩ちゃん!
俺またグルグル悩んで考えちゃうと思うけど、そしたらまた話聞いてね!」
「はぁ!? 勘弁しろよ本当に!
めんどくせー……」
「そんなこと言いながら聞いてくれるんでしょ?」
笑って岩ちゃんの肩を叩くと、今日何度目か分からないため息をまた吐き出させてしまった。
「次から一回話聞くごとに昼飯奢りな……」
「えぇーー有料!?」
「当たり前だろ! お前の話聞くの疲れんだよ」
「ちぇっ……まぁでも、よろしくね……?」
「ハァーー……めんどくせー」
「へへ……ありがとう岩ちゃん♡」
そう言いながらも岩ちゃんは、絶対また聞いてくれるって分かってる。
本当に頼りになって男前な俺の親友……
また、よろしくね岩ちゃん!!
さぁ~て、喧嘩しちゃったけど、大切な恋人を守るために行きますか
烏野!!
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