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第176話
抱く腕にグッと力が込められた。
そんなに強く抱きしめて、今どんな顔してる?
またあの意地悪な、何かを企んでるような顔してるのか?
月島……お前が何考えてるのか全然理解出来ねーよ
「王様はどこ触られるのが好きなの?
ここ?」
「んあぁっ!」
ジャージの上から月島の細い指が胸の尖りを掠める。
その小さな刺激がむず痒く、我慢出来ずに身を捩らせた。
「あ~~、ここ好きなんだね……王様弱いとこ多すぎでしょ。
じゃあここは? やっぱりここも弱いの?」
「や……何する……?」
言葉を無視して服の上を滑った手は下へと進み、くすぐったい感触を生み出す。
それに思わず震えた身体は、次に与えられた刺激に大きく揺れた。
「んっ、やぁ……っ……んん、あぁっ!」
中心を強く擦られ嫌で嫌で仕方無いのに、身体がゾクゾクと反応してなんとも言えない感覚が俺を襲った。
「あっ、あんぁ……はあぁぁ…」
「良い声……やっぱりここも弱いよね~
大王様に触られてた時もすごい喘いでたもんね」
「ンッ、ンッ、んぁっ! や、やめ月島ぁ!」
ギュッギュッと連続で強く握りこまれたら、熱い吐息が唇から切れ切れに零れ出るのを止められなくて。
攻める細い手を掴んで必死に首を振ったが、抵抗した瞬間中心と耳へ同時に刺激を与えられ、快楽に負けて力が緩んでしまう。
「あぁん、は……ん、ふ……」
「王様すごい気持ち良さそうだね」
「ん、なこと、ね、え!」
「声押さえられないくせに、強がっても無駄だよ」
「やぁ、やめ月島……んふ、うぁ……んで、こんなこと、すんだ、よぉ!」
「王様があまりにも期待してたから、お望み通りにしてあげようと思ってね」
「月島……いらな、あぁっ、そんなのいらな、いから、んはっ、あ…止めて、くれ……頼むからぁ!」
喋ってる最中にも容赦なく攻撃され、否応なしに感じさせられて……
及川さんだけが良いのに、そう思ってるのに、簡単に感じてしまう自分が情けなくて視界が滲んで行く。
「やだぁ、及川さ、ん、以外に、こん、な、ことっ、され、たくない!」
「大王様より僕の方が上手いってことを、これから証明してあげるよ」
低い声でそう呟いた月島の手が、ゆっくりとでも確実にズボンの中へと入り込んでくる。
必死にその手を引っ張って、何度も何度も首を振った。
「やだ、やだぁ! 止めろ月島!
及川さん、及川さん助けてぇ!!」
瞼を痛くなるほど強く閉じて声を張り上げた次の瞬間、ズボンのポケットに入れていた携帯が震動した。
それに気付いた月島がピクリと小さく揺れ、入り込もうとしていた手の力が一瞬弱まった。
俺はそれを見逃さなかった。
素早く右肘で月島のわき腹を思いっきり突いてやった。
「クッ!!」
くぐもった小さな声を漏らして、その場に跪いた月島から身を引いて距離を取る。
痛みに顔を歪めてこちらを見上げてくるその瞳は、さっきまで最低なことをしていたと言うのに、悲しみに染まって揺れていた。
そんな顔で、見るなよ
酷いことをされたのは俺の方なのに……こんな気持ちになるなんて
「お、うさま……さっきの大王様?」
眉を下げ掠れた声で問われた言葉に、胸が一つ音をたてたのが分かった。
及川さん……
携帯を見るまで分からないけど、きっと、いや絶対及川さんだ……
助けてくれたんだ……
そう思ったら視界が滲んでいくのを止められなくて……
嬉しくて、嬉しくて
早く会いたいと、そう思わずにはいられなかった。
それを月島に知られたくなくて、今にも零れ落ちそうな感情を必死に抑え込んだ。
「お前には、関係無いだろ……
もう、こんなこと二度とすんなよ」
目を逸らしながら部室のドアを開け、そう吐き捨てた。
何も言わない
恐る恐るもう一度振り返ってみたけど、月島は俯いていてどんな顔をしているのか分からなかった。
それに構わず背を向け、部室を飛び出す。
声震えてなかったかな……
なんであんなことしたんだ、月島のボゲェ……
悪ふざけにも程がある
人をからかってたくせに、なんであんな悲しそうな顔すんだよ?
分からない、月島が何を考えているのか全然理解
出来ねーよ……
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