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第183話

約束の日曜日…… 俺は及川さんがくれたチケットで、ベニ○ランドへ足を踏み入れた。 子供の頃両親に連れられよく遊びに来ていたけど、こんな緊張した気持ちで来たのは初めてだ。 ゲートを潜ったところで、すぐ及川さんを見つけられた。 だって……及川さんの姿を俺が見間違えたりするわけない。 恋しくて、ずっと見つめて逸らせなかったあの姿。 焼き付いてもう離れたりしない…… 「……及川さん」 名前を呼ぶだけで、あなたと目が合うだけで胸が高鳴ってゆく。 「飛雄……良かった、来てくれた……」 目を細めて安心しきった笑みを浮かべて、こちらに近付いてきた及川さんに胸が締め付けられた。 あなたは、俺がもし夜になっても来なかったら、どうするつもりだったんだろうか。 それでも不安な気持ちを押し込めて、ずっと待っててくれたんだろう。 そう考えただけで胸が苦しくて、同時に涙が滲みそうになった。 「あの……スゲェ待ちましたか?」 「ずっと待ってるって言ったでしょ。 飛雄のためなら一日でも、一週間でも一年でも待てるよ……」 「……っ!」 あの時と、あの初デートの時と同じ言葉…… 本当にこの人は…… 俺も言いたい。 あの時、俺が言った言葉…… スゲェドキドキして、及川さんとのデートが楽しみで嬉しくて、そんな時にあんなこと言われたら、俺がどう答えるかなんて決まってる。 その言葉しか思い付かなかった。 あの時のあの言葉……言いたい……俺も言いたいのに、今の俺にその資格はない。 「そんな悲しそうな顔しないで? 俺……飛雄が来てくれただけで、メチャクチャ嬉しいんだからさ。 飛雄……俺はお前に早く会いたかった……」 今度はあの時の俺の言葉…… 及川さん、俺も、俺も 「お前も同じ気持ちだったから、来てくれたんでしょ?」 「及川さん、俺……」 「喧嘩してても、擦れ違ってても、気持ちは一緒。 そーでしょ?」 「及川さん」 「だって俺達、付き合ってんだから。 恋人同士なんだから、気持ちが一緒で当たり前! そーでしょ? ね、飛雄」 ずっと一緒……付き合い初めた時と、初デートの時と同じ……気持ちは変わらない 「飛雄、手!」 「あ……」 及川さんが満面の笑みを浮かべて、手を差し伸べてきた。 「繋ぎたい……飛雄と手、繋ぎたい!」 あの時……繋げなかった。 繋ぎたくて繋ぎたくて、触れたくて仕方なかった、この手…… 今日は、今日こそは……このデートで…… 「飛雄、楽しもーよ! せっかくのデートなんだからさ!」 「お、おい、及川さん!」 緊張しながらそれでも、震える手を伸ばした。 指先が触れて、及川さんの笑顔が深まる。 デート……俺も及川さんと楽しみたい。 少し触れただけじゃ物足りない。 及川さん、強く、握って、握り返して……

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