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第185話

「やっぱ最初はジェットコースターでしょ♪」 弾んだ声で楽しそうに、俺を引っ張りまくる新藤さん。 もうほとんど引きずられてるようなもんだ。 「もちろんとびおは私の隣ね!」 行列の最後尾に並びながら、そんなことを言ってくる。 本当は及川さんの隣に乗りたいんだろーけど……なんで俺の隣って言うんだ? これももしかして新藤さんの作戦? 「冗談止めてよ! 飛雄の隣に乗るのは俺だって決まってるんですけど!?」 俺達の後を追い掛けてきた及川さんが、思いっきり眉間にシワを寄せて新藤さんの腕を掴んだ。 新藤さんに触るなよ、及川さん…… あんたが少しでも他の人に触れてるところなんて、見たくねーんだよ…… 「えーー? 決まってるって、そんなの私知らないも~ん! とびおは私の隣だも~ん♪」 「梓ちゃんが知らなくてもそう決まってんの! いーから飛雄から離れてよ!」 「やーー!」 腕に触られて、新藤さんは嬉しそうに及川さんと会話している。 やっぱり、これはこの人の作戦。 こうやって俺のことを好きなふりしてたら、及川さんが怒って新藤さんを止めに入ってくる。 それがこの人の狙いなんだ。 俺はまたまんまと利用されているんだ。 もう利用されてたまるか! 「あ、あの!」 「はい、次の方々どうぞ~」 係員のにこやかな声が俺達を呼ぶ。 俺だって絶対及川さんの隣がいい! そう思って及川さんへと手を伸ばそうとしたその時、新藤さんが俺の手を離して、素早く及川さんの手を握った。 「は~い♡ 行こ徹!」 「こちらにどうぞ~」 「え? あ、ちょっとなんで?! 俺は飛雄と一緒に!!」 及川さんは慌てて俺の方へ手を伸ばしてくれたが、係員の人に誘導されるままジェットコースターに乗せられた。 もちろんその横には新藤さんの姿があった…… なんで……俺が及川さんの隣に乗るはずだったのに 「では、次の方々もどうぞ」 「それじゃあ僕達も乗るよ」 「あ……」 そうか、及川さんが新藤さんと乗ったということは、俺の隣は月島! 「ホラっ! 乗るよ」 ニコリと似合わない笑顔を浮かべて、俺の手を引く月島。 コイツの隣は嫌だったのに。 「へ、変なことすんなよ……」 「変なことって何? 何期待してんの王様~」 「ボゲェ! 期待も何も、反対だボゲェ!!」 「せっかくの楽しい遊園地なんだからさ、そんなにカリカリしないで楽しもうよ~ ね、王様。僕と一緒に楽しも」 こんなの全然楽しめるわけねーだろボゲェっっ!! 「それでは、いってらっしゃ~い!」 係員の元気な声とともに、ジェットコースターが動き始めてしまった。 及川さんの隣は新藤さん 俺の隣は月島で……

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