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第190話
「おい月島っ!!」
強声を張り上げ呼び止めようとするが、月島は足を止めることはない。
「おい聞いてんのかゴラァ!
どこ行くんだよ!?
お前は新藤さんが心配じゃねーのかよ?
こんな時に遊んでる場合か!」
必死に止まろうと足で地を踏ん張ったその時、何故か月島がわざとらしいデカイため息を吐いてきた。
「はぁーー……君、分かってないねぇ~……」
「は? 何がだよ?」
「どう見てもあれは新藤さんの演技に決まってるでしょ」
「演技? 何言ってんだお前」
今もなお引っ張られながら、なんとか転けずに後を歩くしか出来ない俺は、その意味不明な言葉に首を傾げた。
そんな俺に今度は、いつもの人を小バカにするような笑いをする月島。
腹立つ……
「大王様と二人っきりになるために、酔ったふりをしてたってことだよ」
「……え? んだそれ……」
「具合悪い演技して大王様に、心配してほしかったんだろーねぇ。
それにまんまと騙されたと……
大王様って頭良さそうに見えて、実は鈍かったってゆーか、君と同じだったってことだね」
「…………」
なんなんだよそれ……
と言うことは、新藤さんが具合悪いってのは嘘で、及川さんと二人っきりになるための作戦……
そして新藤さんの作戦通り、二人は今本当に二人っきり……
「つ、月島離せ!
早く、早く及川さんのところに行かねーと!!」
俺は必死にそう訴えかけ逆戻りしようとしたが、そうはさせないと言わんばかりに月島が俺の身体を強引に引き寄せた。
そして、ガッと顎を掴まれ、顔を近付けられる。
鼻先が触れそうな距離にさっきのことが蘇ってきてしまい、思わず肩を跳ねらし視線を逸らした。
「な、なんだよ……ち、ちけーよ!」
「王様さ……そんなに大王様が信用出来ないの?」
「は?」
その言葉に自然と眉間にシワが寄る。
そんな表情にも一々楽しそうに口角を上げる月島に、苛立ちが募るばかりだ。
「ニヤニヤ笑ってんじゃねーよ腹立つ……
信用出来ねーってどー言う意味だ?」
「だって信用してないから、新藤さんと大王様が二人っきりになって焦ってんでしょ?
大王様と王様は付き合ってるんだからさ、他の女と二人っきりになったからって疚しいことは絶対しないはずだよ?
それなのに王様は焦ってる。どおして?
それは大王様を信用してないから焦ってんでしょ?
二人をそのままにしてたら浮気されるって、疑ってるから早く戻りたいんでしょ?
違うかな王様?」
「あ……そ…んぬん……」
月島のごもっともすぎる言葉に返すことが思い付かず、口ごもってしまう。
及川さんはあの時誓ってくれたじゃないか。
何があっても心変わりしないで、ずっと傍にいてくれるって誓ってくれた。
それなのに何焦ってんだ俺……
「大王様のこと信用してるなら、そんなに焦って戻らなくても大丈夫でしょ!
信用してるんでしょ?」
「あ、当たり前だ。
及川さんは浮気なんてぜってぇしねー!」
「だよね……だったらこのまま遊んでても大丈夫でしょ♪
ね、王様、お化け屋敷行こうよ」
「は? なんでお化け屋敷?」
「お化け屋敷楽しいよ。行こうよ王様!」
「え? でも俺は及川さんと行きてぇ……」
「信用してないの? あっ、それとももしかして……王様お化け屋敷怖いの?」
「は、はぁ!? 怖くねーよ!」
「本当は怖いんじゃないのぉ?」
「怖くねーって言ってんだろーがボゲェ!」
「なら入れるよね、お化け屋敷。怖くないんでしょ?
行こーよお化け屋敷」
「怖くねーよ! そこまで言うなら行ってやるよ!」
「フフン、決まりだね。じゃあ行こうか……」
「おぅ!」
及川さんなら大丈夫だ!
俺は及川さんを信用している。
俺の返事にニンマリと笑う月島……
お化けなんか怖いわけねーだろ
ぜってー負けねー!
逆に月島の泣きっ面を拝んでやる!!
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