201 / 345

第200話

及川side 梓ちゃんが、俺のこと……好き ずっと飛雄のことが好きなんだと思ってた。 「あの日からずっと……徹と初めて出会った日からずっと、私…… 徹のこと好きだった。諦められなかった」 梓ちゃんは真っ直ぐ俺の顔を見据えたまま、潤んだ瞳を逸らさない。 だから俺も逸らしちゃいけない気がして、動かず彼女を見つめる。 「俺達が別れてから今までずっと?」 「そうだよ…… 忘れた日なんて1日もなかった。 ごめんね、徹はとびおが好きなのに、それでも諦められなかった……」 まさか、まだそんなに好きだと思われていただなんて…… 俺達はお互い飛雄のことが好きで、ライバル同士になったんだと思ってた。 だから、すごい驚いた…… 「本当はずっと諦めようって思ってた。 徹はとびおのこと本気なんだから、邪魔しちゃいけないって、諦めないとって。 思っててもそれでも、徹のこと毎日考えちゃって…… 私ね、とびおのこと女の子だと思ってた。 とびおって男みたいな名前だけど、 もしかしたらとびおって言う珍しい苗字なのかもしれないって考えてて……」 その言葉に心臓がドクリと大きな音を立てて震えた。 飛雄を好きだと気付いて、その次の日屋上に呼び出された…… 男の飛雄に恋するのは変だと、気持ち悪いと言われたことを思い出す。 そうだよね……男の俺がとびおって人が好きだと言ったら、普通はその人は女の子だって思うよね。 それでも俺は本気で男の飛雄に恋をした。 諦められなかった自分に後悔はしていない。 「でも……フラれてから久しぶりに再会した徹が、とびおって愛しそうに呼んだ人は……男だった。 すごいびっくりしたけど、同時にこれはチャンスだと思った。 女の子には勝てないと思ってたけど、男にならもしかしたら勝てるかもって…… 男が好きだなんて、これは徹の一時の気の迷いだって。 すぐに目を覚まさせて、女の子が好きだって思い直してくれるって、期待してた。 でも……」 梓ちゃんの瞳からまた涙が溢れ始めた。 俺の服をギュッと掴んで、辛そうに悲しそうに顔を歪める。 「やっぱり、やっぱり徹はとびおのこと本気で……気の迷いじゃないって、目を覚ますとか覚まさないとかそういう問題の話じゃなかった。 ベ○ーランドで気分悪くなったって言ったの、あれ嘘だったの」 「…………」 「とびおが月島くんとどこかに行っちゃったとしても、それでも私の、女の傍に居てくれるって思ってた! もちろん徹は優しいから傍にいてくれた。 それでも……心は傍にいなくて。 ずっととびおを求めてて…… それを理解した時すごいショックで、やっぱりダメだったんだなって分かって…… ベニーラ○ドの時だけじゃない、その前から、 どんな時でも徹はとびおだけ求めてて。 私なんかが入り込める余地なんてないって……本当はずっと前から分かっていたのに、理解出来ないふりしてた。 悔しくて悲しくてどうしようもなくなって…… なんで男なの!? なんで女じゃダメなの! 私じゃダメなの!? なんでなんでって……思えば思うほど苦しくて…… ごめん……本当に私って嫌な奴だ…… こんな女好きになってくれるわけないよね! ごめんね……徹、ごめん…… ずっとしつこく好きで、諦められなくてごめんね!!」 何度も謝りながら、大粒の涙を流す梓ちゃん。 俺の服を掴んで、胸に顔をうずめて泣く彼女から伝わる想い。 離れたくないって、俺のこと好きなんだって想いが強く伝わってきた。 弱々しくて、今にも崩れ落ちそうな彼女を抱き締めた。 止められない、想いを消し去ることが出来ない本気の恋。 気持ち分かるから、俺も痛いほど分かるから…… だから、知ってほしい…… 俺の本気の気持ち 「男とか女とか、そんなの俺には関係ないんだよ。 だって俺は他の男にも、それどころか女の子にも恋したことない…… 本気で好きだって、恋したんだって気付けた人は…… 生まれてから今までただ一人 飛雄しかいない 俺は飛雄にだけ恋してる」

ともだちにシェアしよう!