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第201話

及川side 初恋で、ずっと忘れられなかった、 そしてこれからも愛する人…… 「俺もさ、中学の頃飛雄と初めて出会った日からずっと、飛雄のことが好きだった。 でも飛雄は男だからこの恋は終わりにしないといけないって、ずっと忘れようと必死になって色んな女の子と付き合ってたんだ。 その中の一人に梓ちゃんも入ってたんだ。 俺は……沢山の女の子達を傷付けてきた。 本当に最低な男だった……ごめん」 一体何人の人達を悲しませてきたんだろう? これは絶対許されないことだと分かってる。 申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、俺は梓ちゃんの背中に回していた手を強く握り、掌に爪痕を残す。 そんな俺の胸に顔をうずめたままの彼女は、一度鼻を啜ってから俺の背中を優しく擦ってきた。 「私も最低な女だから…… 徹のことが好きすぎて自分の気持ちばかり優先して、とびおを沢山傷付けた。 とびおは女じゃないから何を言っても泣かないと思って、早く徹から離れてほしくて沢山酷いことした。 でも、女でも男でも傷付く心は同じ。 本当に酷いことして、最低だった! 徹のことも傷付けてきたよね……ごめんね……」 「俺には謝らなくて良いよ。 俺の方が何十倍も酷いことして、梓ちゃんのことあの時も、そして今もすごい悲しませて泣かせてる…… そして飛雄のことも泣かせて傷付けてしまった。 何やってんだろ俺……」 それでも……飛雄から離れたくないと身勝手に願ってしまう自分がいる。 飛雄……こんな俺をお前は許してくれますか? 離れず傍にいてくれますか? 「飛雄ごめん……ほんとごめんね梓ちゃん……」 「本気だった……徹のこと。 本気で好きで、絶対手に入れたいと思った。 でも、徹は徹でとびおに本気で…… なんでこんなに上手くいかないんだろうって、辛くて 徹を想って何回も泣いた」 「俺も……飛雄を想って何回も泣いて、今も泣いてる……」 目と鼻が痛くなって、俺は無意識に鼻を啜った。 それと同時に梓ちゃんも啜った。 本気で恋してるから、俺達はこんなにも悩んで悲しんで そして、相手を想って本気で涙する 皆同じだ…… 好きな人を忘れられず必死になって、踠いて、走って、 手を伸ばして。 好きな人にこの手を握ってほしくて。 沢山の人を傷付けてしまったのも、本気で恋してるから回りが見えなくなって…… 恋をしたら、皆誰かを傷つけてしまって、それでもこの想いを貫き通そうと必死になってしまう。 俺も梓ちゃんも他の誰もが……皆必死で恋してるんだね。 人を傷付けてしまった。 だからこそ、その分まで好きな人を幸せにして、 自分も幸せにならなくちゃ いけないんだよ……

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