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第202話
及川side
恋をして必死になって、幸せで笑っててほしいと願って
それでも欲張りな俺は
恋人だけじゃなく、周りの人にも笑っててほしいと願ってしまう。
恋って難しいんだね……
でも、全てを掴み取りたいと思っても良いのではないだろうか。
「好きだから幸せになってほしい。
飛雄を幸せにしたいって願って何度も泣いちゃったけどさ
俺……梓ちゃんにも幸せになってほしいよ。
だって、梓ちゃんのこと好きだからさ」
腕に力を込めて、滲む視界に一雫溢れ落ちたものをそのままにして笑う。
梓ちゃんも弱々しくしがみついた背中にギュッとシワを作りながらも、そっとうずめた顔を上げて笑った。
その拍子に溢れ落ちた涙は、もう違う意味の涙だと分かったから。
「徹と幸せになりたいって願ったけどさ、それはもうダメなんだってちゃんと理解出来たから。
だから今度は好きだからこそ、徹に一番の幸せを掴んでほしいって思ってる」
そう微笑みあって、俺達はどちらからともなくそっと身体を離した。
綺麗に光った眦……それはもうすぐ乾くだろうか?
そんなすぐに強くなれるわけないって分かってるけど、それでも無理でもなんでも必死に泣きながら笑う君を好きだと思った。
「まだまだ徹のこと好きだよ。
簡単に諦められるような恋じゃない。
でも、ちゃんと、徹と同じ好きになるように頑張るから!」
「自然でいーよ」
「うん! ありがとう」
「いつかまた、自然に笑い合えるように。
梓ちゃんとはずっと笑いあっていたいから!」
「私も!」
俺達は同じだ……
本気で忘れられない
忘れたくない恋をしたから。
飛雄をずっと忘れられなくて、必死に踠いて、泣いて走った。
梓ちゃんも同じだった。
俺を忘れられなくて必死だったんだよね。
同じだったからこそ
幸せになってほしいと強く願うよ。
「徹……徹、ありがとう!
徹ありがとね!!」
「俺もありがとう」
震える手を握って
無理でも笑って
お互い幸せになることを祈り
そしてまた俺達は、自然に笑い合う日が来ることを待ち望んでる……
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