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第210話
月島が、俺を、す……き?
そんなこと信じられるわけなかった。
だってあんな意地悪してきたくせに、今更好きだったなんて……
「嘘、だろ?」
「僕も嘘だったら良かったって思うよ……
でも、この気持ちを否定すればするほど、反対に君の顔が頭から離れなくなって……
ずっと毎日影山のことを考えるようになってた」
俺を見下ろす月島は小さくため息を吐き出して、それでもどことなしか嬉しそうに笑った。
その笑顔に胸が苦しくなった。
「だって……お前、いっつも苛つくことばっかしてきただろ?
俺を怒らせて楽しんでたんじゃねーの?
それなのに、好きって……
信じられるわけねーだろ」
「そーだね。
君を弄って怒ったとこ見るのも、楽しくて好きだったから」
「楽しくて好きって……」
「それに、普通嫌がらせで嫌いな奴の耳とか触ったり、キスしたりする?」
俺はその問いに力なく首を振って見せた。
そんな俺にやっぱり月島の笑顔は優しくて。それが何故だか怖いのに、目を逸らしてはいけないような気がしてきた。
「好きだからだよ。
触れたい、キスしたい……好きだから止められなかった。
耳に触れた時の君が可愛すぎて、もっと、もっと見たいって思った。
自分の気持ちに気付かれるのを恐れながらも、望んでる自分もいて。
影山は全然僕の気持ちに気付かなかったから安心してたけど、それでも安心しながら苛ついてたんだ。
早く、気付いてほしい
僕を見てほしかった……」
笑ってた顔がだんだん悲しみに染まって、また月島の唇が近付いてきた。
それをダメだと心が叫んでいるのに、頭が働いてくれなくて。
月島の優しく笑った顔も
悲しみに染まった顔も
今まで見たことない。
だから、動くことも逃げることも、忘れてしまった。
早く気付けなかった、月島のことちゃんと見れなかった俺が悪いのか?
だからなのか?
こんなに苦しくて、月島から目が逸らせない……
「影山……好きだよ」
唇に触れる瞬間、そう囁いて切なく微笑んだ月島……
そんな顔して笑うなよボケが
ますます苦しくなる
「つ、きしま……ん……」
熱い唇が触れる
その唇は震えてて……
あの月島が緊張してる?
これも信じられなかった。
月島は俺の頬を優しく撫でてきた。
その触り方もらしくないと思った。
優しく動いていた手が顎を掴んで、クイッと下へと引いた。
開いてしまった唇の隙間から、ゆっくりと熱い舌が忍び込んでくる。
「ん、ふぅ……あ……」
反射的に押し出そうとした舌が月島の舌先と擦れて、その感触に思わず震えた。
それを絡め取られ、吸い上げられる。
最初は柔らかく、そしてだんだん強く吸われていく。
「んぅ、ン……ふ、んふぁ……」
声を漏らす度、力も増して。
ちゅっ、ぢゅっ
と鳴る音に、頭がおかしくなりそうだった。
月島の舌、本当に熱い……
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