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第211話
でも、これっておかしい……
いくら考えてもおかしい。
ボーッとしていく頭で必死に考えても、やっぱりダメだと思った。
この感触を味わってはいけない。
これは、俺が求めるものではない。
「ふ、ん、うぅ、……ふ、ぁ……ら、め、ちゅき、ひま……」
「ん、ン……っ……影山……」
首を振って抵抗しようとした俺の顔を両手で押さえて、口付けを深くしてくる月島。
上に乗る胸を強く押したけど、歯列をなぞられたら、身体が反応していまいうまく抵抗出来なくなる。
熱い、やだ、月島!
「ふ、あぁ……ん、ふ……ぅ、ら、らめ……」
首を振りたくても振れず、舌を押し出そうとしても、上手くいかず。
頭の中がクラクラして、もうわけが分からなくなる。
抵抗出来ずに月島との口付けを続けていた俺の身体に、別の感触が与えられ、それに目を見開いた。
月島の手が俺の腰を撫でて、服の裾からゆっくりと手を中へ差し入れてきた。
直接肌に触れてきた手に、身体が跳ねる。
そんな反応に、月島の目が笑った気がした。
「や、やらぁ! ひゅき、ひ……ふぁ、んんっ……!」
必死に手と舌を動かして抵抗する俺の唇を、やっと解放してくれる。
長い長い口付けに、息絶え絶えになって呼吸を繰り返す。
そんな俺に構うことなく月島は、あっという間に服を捲り上げてしまった。
露になった胸の先へ唇を寄せようとしてくる月島の顔を、両手で押し返した。
「や、やめろよ月島ボゲェ!」
「どうして? 気持ち良さそうにしてたでしょ?
なんで抵抗するの」
「な、なんでって、俺は及川さんが好きだから、及川さん以外の奴に触られたくない!」
「……浮気されたのに、まだ好きだって言うんだ?
大王様は、新藤さんを選んだんだよ?
男の君より、女の方が良いって言われたも同然なんだよ。
それでも、まだ大王様を好きだって言えるの?」
男の俺より、女の方が良い……
ずっとずっと、その言葉に悩まされてきた。
及川さんは女じゃなくて、俺だけを愛してると言ってくれた。
それでも人間は、心変わりする生き物だろ?
俺はいつか及川さんに捨てられてしまうのかもしれない。
それでいつもビクビクして、及川さんに抱き締められる度安心して。
でも新藤さんや、他の女子達に囲まれる彼を目の当たりにするだけで、心も何もかもが潰されそうになった。
そして、俺の不安事が現実のものとなってしまった。
俺は、本当に及川さんに捨てられてしまった
まだ、こんなにも好きなのに……
俺は及川さんの傍にいることを許されない……
「おい、か、わさ……」
目から温かいものが零れ落ちるのを、止めることが出来なかった。
傍にいたい、好きなんだ
こんなにも好きなのに、俺は……
「う、うぅ……お、いかわさ、ん……っ…」
止まらない、鼻が痛くなって
滲んでいくものをどうすることも出来なくて……
そんな俺の目尻に月島が、優しくキスをした。
その感触に、顔が熱くなっていく。
「つ、月島」
「泣かないでよ。
僕は、今まで沢山影山を怒らせて、泣かせてしまった。
それでも、もう泣かせないから!
影山が好きだから!
大王様なんかに負けないぐらい。
好きなんだ
大切にする……だから
僕を選んでよ、影山」
なんでそんな優しい顔するんだよ。
似合わない、似合わなすぎて余計に涙が溢れる。
「なんなんだよ……ボゲが……」
「好きなんだよ、影山……」
優しくて、それでも真剣な眼差しで。
ゆっくりと唇が近付いてくる。
触れたその感触は、やっぱり似合わないほど優しかった。
でも……滲んだ先に、傍にいてほしいと願う人は月島じゃなくて。
月島とキスしているのに、それなのに……
頭の中に浮かんでくる人は
どうしても、あなたじゃないとダメなんだ……
「及川さん……」
名前を呼んだだけなのに、愛しさが込み上げてきてとまらない。
泣いている時もそうだった。
悲しい、そう思いながらも愛しい気持ちが溢れてきて。
俺はやっぱりあなたしか、愛することが出来ないんだ。
「どおして? どおして浮気されたのに、裏切られたのに、なんで君はあいつの名前を呼ぶんだ」
「ごめん月島、俺は及川さんが……」
「謝るな! あいつの名前呼ぶなよ!」
さっきまで笑っていた顔が歪んで、瞳から零れ落ちた涙が俺の頬を濡らした。
あの月島が泣いてる……?
「月島、ごめん……」
「だから謝るなって言ってるだろ!!」
教室内に響き渡った強声。
こんなに声を張り上げる月島を見たのも初めてで、胸が締め付けられる。
でも……
「ごめ……俺はやっぱり及川さんしか好きになれない……
ごめんな月島……
裏切られても、捨てられても俺は……っっ、なっ!!」
そこで突然、胸の先に痛みが走った。
慌てて顔を上げると、月島が俺の胸に顔を伏せ、尖りを攻め立ててきた。
「あっ! ちょっ、や、やだ! 月島ぁ!!」
痛くなるほど吸われ、もう片方の先端も、千切れそうなほど強く抓られてしまう。
「いっ! は…あぅ、あぁ……や、んンっ!」
必死に抵抗しようと、月島の髪を震える手で引っ張る。
その時見てしまった月島の表情は、やはりいつもとは違っていた。
悲しそうに揺れた瞳
今にも壊れそうなその表情に、俺はどうやって抵抗すれば良いのか分からなくなってしまった。
強く拒んでしまったら、月島はもう居なくなってしまうかもしれない。
確かに月島の事はムカつくし、いけすかない奴だと思ってる。
それでも、そんな奴でも俺は、
居なくなってほしいとか、消えろとかそんなこと
思ったことなんて1度もない。
月島は大切なチームメイトで、
優しい瞳を見た時思った……
こいつは本当は優しい人で、もしかしたら友達になれる人かもしれないと……
俺は、その可能性を失いたくないんだ!
だから!
「月島! 止めてくれ!!
俺はお前を嫌いになりたくない!
嫌いになりたくないんだ!!!!!」
「か、げやま……」
「お願いだから、止めてくれよ……頼む」
俺の友達になる人……
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