213 / 345
第212話
及川side
飛雄!
メガネくんに酷いことされてないか、心配で心配で仕方ない。
俺達は飛雄の教室へ向かって、ただひたすら走り続けていた。
「飛雄、飛雄!」
放課後の廊下
生徒の影は全然なくて、スムーズに走ることが出来た。
そう思っていた矢先、
「あっ! ちょっと君ィ!
君は他校の生徒だろ? 止まりなさい!!」
戸締まり担当だろうか?
教師らしき人が眉をつり上げて、こちらに近づいてきた。
俺はそれでも前だけ向いて走り抜けようとするが、素早く肩を掴まれてしまった。
「っ!」
「これ! 待てと言っとるだろ!
他校生は立ち入り禁止だぞ!」
早く、早く飛雄の所に行かないといけないのに、こんなところで捕まってしまうなんて……
このままじゃあ飛雄を助けに行く前に追い出されてしまう。
目を泳がせてどう切り抜ければ良いか考えていると、後ろから走ってきた主将くんが先生の肩を叩いた。
「先生、すみません! ちょっといいですか!?
質問なんですけど」
「な、なっ! なんだね澤村くん。すまないがそれは後にしてくれないか!」
「いえ、今じゃないと困るんです」
「及川、ここはまかせて早く行けよ!」
主将くんと教師が話すのを見つめていると、爽やかくんが俺の背中を押してきた。
「爽やかくん! でも、主将くん大丈夫かな?」
「大地なら俺がついてるから大丈夫だべ!
それに今お前が心配しなくちゃいけない人は、大地じゃなくて影山だろ?
お前しかいないんだよ、影山を本当の意味で支えられるのは。
俺も影山が大切だから助けたいけど、影山が心の底から求めてるのは及川だから。
影山を今度こそ、ちゃんと支えてやってくれ」
「爽やかくん……
うん。飛雄を幸せに出来るのは俺だけだからね。
まかせてよ!」
「あぁ……まかせたべ!」
俺は不敵に笑って頷いた。
それを見て、爽やかくんも笑って頷いてくれた。
皆俺と飛雄のこと応援してくれて、本当に心強いよ……
「それから日向!」
「は、ハイ!」
次に爽やかくんは、俺の後ろにいたチビちゃんへ目線を向ける。
「今日の月島はなんか様子おかしかった。
その事に、お前も気付いてるだろ?」
「……はい」
「確かに影山のことも心配だけど、俺は月島のことも心配だ。
日向、お前にならまかせても大丈夫だよな?」
「ハイ! 初めからそのつもりです。
大丈夫ですよ菅さん!」
二人は真剣な瞳で頷きあった。
そしてチビちゃんは、俺の腕を引っ張ってくる。
「早く行きましょう大王様!」
「うん!!」
俺達はまた、飛雄の教室へと向かって足を進める。
後ろの方で、
「あっ! 菅原くん! 何やっとるんだ!
早く君もあやつを捕まえないか!!」
「せ、先生! まだ質問に答えてもらってません!」
「ええい! 今はそんなことどうでもいいだろ!」
ありがとう……爽やかくん、主将くん……
そっちはまかせたよ!
「大王様! あそこの角を曲がったところが、影山の教室です!」
チビちゃんの声で走る速度を加速させる。
飛雄、飛雄 無事でいて!
「飛雄ー!!」
俺は勢い良く教室内へと踏み入った。
そこには……
涙を流しながら床に押し倒された飛雄と、その上に覆い被さるメガネくんの姿があった。
「おい、か、わさん……」
「お前、飛雄に何やってんだ!!!!」
その目の前に広がる光景と、震えた飛雄の声が耳に届いた瞬間
俺の頭の中で、何かが切れた音がした
止められなかった
俺はメガネくんに一目散に近付き、勢い良く殴り飛ばした──
ともだちにシェアしよう!