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第213話
及川side
派手な音をたてて床に倒れ込んだメガネくんの胸ぐらを掴み上げ、目が逸らせなくなるぐらいまで顔を近付けた。
「飛雄に何をしたって聞いてんだけど」
「…………」
「答えろよ!!」
何も言わず瞳を揺らしてこちらを睨む彼に、容赦なく声を張り上げた。
それでもメガネくんは口を開かない。
どうしてそんな泣きそうな目をしているんだ?
殴られたから?
それとも飛雄を襲った罪悪感?
どちらにしろ、彼がしたことを許すことなんて出来るわけない。
「及川さん、止めてください!」
怒りが治まらずもう一度振り上げた腕を、まだ声が震えたままの飛雄が止める。
涙を次から次へと溢しながら、必死に首を振ってしがみつく飛雄に胸が痛んだ。
メガネくんを放して、飛雄の頭へ手を伸ばそうとしたその時
頬に強い衝撃が与えられ、今度は俺が床に倒れ込んだ。
「イッッ!!」
「月島ぁ!!」
チビちゃんの強声が、衝撃に震えた脳内に響いた。
俺を殴ったことで痛めたのか、顔を歪め拳を押さえるメガネくん。
酷く痛む頬を押さえながら身を起こすと、メガネくんが飛雄を抱き締める姿が視界に映った。
「大王様、大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄ってきたチビちゃんの手をかわし、痛みを無視して立ち上がって、飛雄を抱き締める腕を鷲掴む。
「飛雄を放せ。触るなよ!!」
「あんたこそ影山に触るな!!」
「何ぃ!?」
「浮気したお前が、影山に触れる資格なんてない!」
メガネくんから発せられた言葉に、俺は大きく目を見開いて、そして飛雄へ目線を向ける。
飛雄は更に大粒の涙を流しながら、俯いた。
そんな飛雄の頭を撫でるメガネくん。
「くっ……う……」
「影山大丈夫だよ。僕がついてる……
あんたは新藤さんを選んだんだ。もう影山に触る資格なんてない。
僕は影山が好きだ!
僕だったら浮気なんて絶対しないし、影山の傍にずっといる。
影山を幸せに出来るのは僕しかいない!」
その言葉で頭に一気に血が上った。
「飛雄を幸せに出来るのは、この俺だ!!」
頭が熱くなるほどの声を張り上げ、メガネくんに掴みかかった。
メガネくんも俺の両肩を鷲掴み、
取っ組み合いになった。
「及川さん!! 月島!!
やめ、止めろよ!!!!」
飛雄の必死な、悲しみに揺れた声が響く。
立ち上がった飛雄が、俺とメガネくんの肩を掴んで止めに入ってきた。
それでも俺は、負けるわけにはいかない。
飛雄は誰にも渡さない。
絶対に!
だがそこで、
「お前ら、いい加減にしろよ!!」
チビちゃんが似合わない怒りと苛立ちを含んだ声で、荒々しく叫んだ。
「お前ら、影山を良く見ろよ!
影山をこんな悲しませて、
そんな奴らが、影山を幸せに出来るわけねーだろ!!」
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