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第214話

及川side 真っ赤な瞳、溢れる涙 俺が望んでいたものではない。 こんなの、望むわけないじゃないか。 幸せにするって、やっぱり ずっと笑顔で、笑わせて 優しくなれて温かくて そして…… 自分自身もそうであるように。 二人が、お互いが、本当の意味で…… それが幸せにするってことなんじゃないだろうか…… でも今の飛雄は、 笑ってるだろうか? 優しい気持ちになれる? 温かい? いや、飛雄はこんなにも泣いて悲しんで、震えてる…… 俺の心も今、怒りに染まって、全然優しくも温かくもない。 こんなんで、飛雄を幸せにするなんて 胸を張って、言えるのだろうか? 「影山が本気で好きならさ、睨み合ってないで、 もっと好きな人を……影山を見ろよ。 こんなに泣かす奴らが、影山を幸せに出来るわけねーだろ! もっと、もっと! 影山を見ろよ!! 本気で影山を幸せにしたいなら!」 チビちゃんの言葉が心に響いたよ…… 本当にチビちゃんの言う通りだ。 俺はメガネくんばっか見て、大事な人が涙を流す行為を続けようとしていた。 最低だ…… だけどね、 俺は、本気なんだよ チビちゃん 飛雄…… 「飛雄……ゴメン、ゴメンね 飛雄をまたこんなに悲しませちゃったけど、それでも 飛雄が一番だって、大好きだって、この気持ちは嘘じゃないから! だから今こうして、飛雄に会いに来たんだよ」 俺はメガネくんから手を離して、飛雄の手をそっと握った。 そんな俺にメガネくんの息を呑む音が聞こえたけど、それでも真っ直ぐ飛雄を見つめる。 飛雄が本当に一番大好きで、愛して、大切なんだって 分かってほしいんだ…… そんな気持ちを込めて、震えた手を強く握る。 そんな俺に飛雄は、潤んだ瞳でこちらを睨んできて、 そして、その手を思いっきり払い除けてきた。 「じゃあ! どおして、新藤さんと抱き合っていたんすか!? どおして約束破ったんすか? 俺達の間に隠し事は無しって言ったのあんただったよな。 なのになんで、あの時何があったのか素直に話してくれなかったんすか!? 新藤さんを選んだから、だから俺との約束なんてどうでもいいって思ったんすよね? 約束破って、俺を捨てて、 あんたは新藤さんを選んだんだ!」 「違う! 違うよ飛雄!」 「何が違うんだよ! 今更なんでこんなとこに来たんだよ!? 行くとこが違うだろ? あんたが行くとこは、新藤さんの所だろーが!!」 「違うって言ってんだろ! 俺が好きなのは梓ちゃんじゃない。 お前だ、お前なんだよ!!」 「嘘言うなよ、抱き合ってたくせに! 俺じゃない人に、触れてたんだろ? それを知って、俺がどんな気持ちになったのか、あんた分かってんのかよ?!」 「飛雄……」 俺が梓ちゃんに触れたことで、飛雄をこんなにも傷付けてしまったのか 梓ちゃんの俺への気持ちも大切にして、口外しないであげなくちゃって思ってたけど、 それがこんなにも…… それでも、それでも俺は! 「確かに梓ちゃんを抱き締めた。 泣いた梓ちゃんを抱き締めたよ! でも、でもね、友達なんだ。梓ちゃんは俺の大切な友達なんだよ。 嘘じゃない! 友達が俺を想って泣いてしまったんだ。 それを抱き締めただけなんだ…… 梓ちゃんを、大切な友達だって思ったんだよ俺。 飛雄以外に触れて、ゴメンね…… それでも本当に心の底から抱き締めたい、触れたいって思うのは飛雄だけだから! 好きだから、飛雄だけが好きだから! この気持ち、想いは信じてほしい。 俺、本気で飛雄だけを愛してるから!!」 「おい、かわさ……」 「飛雄はもう……俺のこと本当に嫌いなの? 愛してくれないの……?」 「俺……俺は!」 俯いていた飛雄が勢い良く顔を上げて、涙でぐちゃぐちゃになった顔を手の甲で力任せに擦った。 「飛雄! 顔、痛くなるよ!」 「うるせぇボゲェ!!」 それを止めようと伸ばした手を飛雄が力強く掴んで、声を張り上げた。 そして、次の瞬間 思いっきり胸の中に飛び込んできた。 「嫌いなわけねーだろ! 俺は! こんなにもあんたが、 好きで好きで仕方ねーのに!!」 「飛雄」 「好きだ! 好きなんだよボゲが!!」 良かった、飛雄が俺を好きだって想ってくれて 良かった……

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