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第215話
嫌い? 愛してくれない?
そんなの、絶対あるわけないだろ。
だって俺は、どんなことがあろうと、
及川さんが一番好きで、愛してるから……
俺のこの気持ちは、一生変わることなんてないんだ。
一生変わらないって、約束してもいい。
「好きです! あんたが、好きなんです。
浮気してないと言うなら、俺を愛してると言うなら
もう、他の人を抱き締めないでください。
触れないで……俺だけを見て
約束してください。
もう破らないでください!!」
お願い……こんなにも好きなんだ。
「約束する。もう絶対約束破らない!
お前だけが好きなんだ!!
だから、だから……もう泣かないで飛雄」
「泣いてねぇ! 泣いてねぇよボゲェ……」
そう言いながらやっぱり及川さんの言う通り俺は泣いていて。
それを隠すように、及川さんの厚くて逞しい胸に顔をうずめる。
でも、隠すだけじゃない。
離れてしまっていたあなたの体温をもっと感じていたいから、背中に回した腕に力を込めずにはいられないんだ。
「ゴメンね飛雄……好き、好きだよ飛雄。
泣かないで」
「だから泣いてねーって。
俺も、愛しています……」
「飛雄……好きだって、
愛してるって言ってくれてありがとう……」
「及川、さん……」
ギュッと強く、痛いほどに……
離れないように抱き締め合う。
本当に信じても良いんですよね?
及川さん……
だがそこで、月島が大きなため息を吐いた。
「何なのそれ……?
なんで大王様ばっかりいい思いするの?
あり得ない……納得出来ないんだけど!!」
「つ、月島!?」
抱き締め合ってきた俺達に突然月島が声を張り上げて、及川さんの背中に回していた腕を乱暴に引っ張ってきた。
「イッ! 月島やめ、やめろっ!」
「なんでなの!?
浮気されてたくせに、なんでそんな簡単に許してるんだよ!!
あり得ないでしょ!」
強引に俺達を引き剥がそうとする月島。
俺は及川さんから離れないように、必死に力を入れ抱き付いた。
それで怒りが増したのか、眉間にシワを寄せて更に腕を強く掴んでくる。
「及川さっ!」
「そんな奴の名前を呼ぶな!」
「やめなメガネくん!! 飛雄に触るな!」
だがそこで、及川さんが俺の腕を引っ掴む手を、思いっきり叩き払い除けた。
その衝撃に月島は顔を歪めて、手を押さえながら瞳を鋭くさせた。
「なんなのあんた?
影山に好きって言われて、想われてて自信ついちゃったの?
浮気してたくせにいい気になるなよ!」
「浮気なんかしてない! 梓ちゃんは友達なんだ。
俺が一番好きで、愛してるのは飛雄なんだ!」
「そんなの、許されるわけないだろ!
影山は僕のものだ!!」
そう言って俺を後ろから抱き締めてきた。
強く、強く
「月島!」
「離せよ! 飛雄に触るなって言ってるだろ!!」
「及川さん待てよ!」
俺から離れて、月島の胸ぐらを掴み上げる及川さん。
月島も及川さんの胸ぐらを掴んで、至近距離で睨み合う二人。
どうしてまたこんなことになってるんだよ?
なんで及川さんは俺から離れる?
俺の気持ちは無視して……
ふざけるな、ざけんなよ!
「止めろよ二人とも!!
何でなんだよ。いい加減にしろよ!!」
「飛雄止めるなよ!
こいつは絶対許せないんだ!」
「僕だってあんただけは絶対許さない!!」
「止めろって言ってんだろ!!
俺のこと本気で好きなら止めろよ!!」
「と、飛雄……」
俺の強声に及川さんが大きく目を見開いて、手の力を緩めてくれた。
良かった……
ほっと息を吐いたのも束の間、
ドッッ!!
月島が勢い良く及川さんを殴り飛ばした。
「ッッ!!」
「お、及川さん!!」
床に倒れ込んだ及川さんに慌てて駆け寄った。
「大丈夫ですか及川さん!」
「イッ……タタ……大丈夫、だよ……
俺は飛雄を本気で愛してるからさ、もうやらないよ」
「及川さん……あざっす……」
頬を押さえながら片目を瞑って、それでも笑いかけてくれる及川さんに俺も笑って頷いてから、
月島を思いっきり睨み付けた。
「何やってんだよ月島!!」
「僕は絶対そいつを許さないって言ったよね?
殴らずにすむわけないでしょ?」
「何なんだよクソが……
だったら、俺も言ったよな?」
「何を?」
「嫌いになりたくないって……」
「え?」
「俺の大切な人を傷付けるなんて、俺、お前のこと嫌いになっちまうだろ!!
俺はお前を嫌いになりたくないって言っただろーが!!
頼むよ月島……嫌いになりたくないんだ」
「影、山……」
「嫌いになりたくない。
ちゃんと、友達に……お前と友達になりたいんだよ!!」
月島を真っ直ぐ見つめて、自分の気持ちを伝える。
本当は優しいお前と、ちゃんと友達になりたいんだよ……
だけど月島は、辛そうに俺から目を逸らした。
「友達じゃあ駄目なんだ……
僕は友達じゃ嫌なんだよ影山」
「月島……それでも俺はお前と友達に……」
「だから! それじゃ駄目だって言ってるだろ!!」
「月島……」
俺は及川さんが好きだから、月島の気持ちには応えられない。
応えられないけど、それでも
友達になりたいってこの気持ちは
我が儘なのか?
「影山……僕は君が好きなんだよ。
だから、友達じゃ駄目だ」
「じゃあ、俺達は一生友達になれないのか?」
「…………」
何も言わず俯いてしまった月島に、俺はどうすればいいのか分からなかった。
俺も俯きかけたその時……
「月島……お前の気持ちは俺が一番よく分かってるよ……
よく分かる……
でも、だからって俯くのは駄目だ。
前を見なくちゃ……月島」
そっと近付いてきた日向が、月島を抱き締めた……
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