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第217話

及川さん 日向、そして月島…… 皆俺の幸せを願ってくれて、大切な人達で それが途轍も無く嬉しくて だから俺も 皆の幸せを願いたいと心の底から思ったんだ…… 「皆……自分が幸せになりたいと願いながらも、 それと同じぐらい大切な人の幸せを願ってるんだ……」 「なんなの皆……カッコつけちゃって…… なんだか僕、すごい惨めなんだけど。 一番、カッコ悪くてムカつく……」 「それ、俺も同じだよ」 そう呟いて眉を下げて唇を噛んだ月島に、及川さんが笑いかけた。 「俺もずっと踠いて、沢山の人を傷付けて、飛雄のこともいっぱい傷付けてきた。 自分はなんでこんなに情けなくてカッコ悪いことばっかしてんだろって、ずっと後悔してて。 でもそれは、本気で譲れない想いがあったから。 飛雄を好きすぎて、離したくなかったからなんだ。 メガネくんもそうだったんだよね?」 「……はい」 月島は潤ませた瞳を揺らしながらも素直に頷き、及川さんを見つめる。 そんな月島に、及川さんが優しく目を細めた。 いつも睨み合っていた二人の間に、こんな穏やかな空気が流れるなんて。 それに驚きながら、同時に笑みが溢れた。 「好きな人にカッコ悪くても必死に手を伸ばして踠いて、それが届かなくてもさ。 それでも一番に飛雄に幸せになってほしいと思ってる。 自分が幸せにしてやりたい。 他の誰かじゃなく自分が…… どうすれば、自分は何をすれば大切な人を幸せに出来る? 自分にしか出来ない方法で、飛雄を笑わせたい。 幸せにしたいと思ったんだ……」 「自分にしか出来ない方法。 影山を泣かせるんじゃなく、笑わせる。 僕にしか出来ない方法で……」 「絶対あるよ。 俺にしか出来ない方法も。 メガネくんにしか出来ない方法も 絶対ある!」 満面の笑みを浮かべて、自信満々にそう言い切った及川さんに、月島は揺らしていた瞳から涙を流して、 今度は大きく頷いた。 そして月島は、真剣な瞳で及川さんを真っ直ぐ見つめた後、また一つ頷いてから俺の方へ視線を滑らせてくる。 「影山…… 僕はまだ君が好きだよ。 簡単にはこの気持ちを消せないし、忘れられない。 でもそれでも、君と笑い合いたいと思ってる。 笑わせたい、僕にしか出来ない方法を見つけて」 「俺も、月島と笑い合いたいと思ってる。 だから、さっき断られたけど、もう一回言わせてくれ。 月島俺と友達になってくれないか?」 「友、達…… 影山は、そんなに僕と友達になりたいの? 僕は沢山君を怒らせて、泣かせたのに、本当に友達になってもいいの?」 俺はその質問には答えずに一歩前に踏み出して、月島へと手を差し伸べた。 それに月島は顔を赤くさせて、ゆっくりと手をこちらへと伸ばしてきた。 「それで影山を笑わせることが出来るなら、僕も君と友達になっても良いのかもしれない…… いや、友達に、なりたい」 「……月島」 月島の言葉にどうしようもない喜びが胸を熱くさせて 俺は唇をムズムズさせながら、伸ばされた月島の手を握ろうとした。 その時…… 「俺も! 俺も居るぞ!! 俺も月島と友達だ! 影山と月島と俺、ずっとずっと、友達だ!」 日向にぴったりの太陽のような飛びっきりの笑顔を浮かべて、俺と月島の手を痛いぐらいに強く握ってきた。 俺達三人手を握りあって…… それがなんだかものすごく恥ずかしいと思ったけど、それをも上回る喜びを感じた。 感じないはずがなかった。 「俺と月島と日向…… 今日から俺達三人友達、だ」 「だな!!」 日向の笑顔に俺も嬉しすぎて、つられて自然と笑みを浮かべ、月島を二人で見つめる。 そんな俺達に月島は、もっと耳まで真っ赤にさせる。 「ありがとう…… まさかこんなこと言ってもらえるとは思わなかった。 絶対許してもらえないかもしれないと思ってたから、すごいビックリした…… ありがとう、影山……ありがとう」 真っ赤になって本当に安心しきった顔をして、笑いながら涙を流す月島の手を握る。 「俺の方こそありがとう…… 友達になってくれて」 「本当ゴメン。ありがとう……」 そう言って、優しく笑ってから俯く月島。 「あーー、恥ずかしい。 まさか僕がこんなに泣くなんてね…… 恥ずかし過ぎるでしょ」 泣きながら力無く呟く月島に、俺ももっと視界が滲みそうになったその瞬間…… 「別に泣くことは恥ずかしいことじゃない! 泣きたい時は、思いっきり泣いてもいーんだ!!」 日向の声が教室内に響いて そして…… 日向は月島を抱き締めた。 「思いっきり泣け月島! 俺の胸貸しててやるから! だから泣いてもいーよ」 「なんなの本当に…… 日向のくせに、カッコ良すぎでしょ!! 有り得ない……本当有り得ないでしょ…… 日向…… ありがとう……」 月島が日向の背中に手を回す。 日向はそれに微笑みながら、抱き締めた腕に力を込めた。 そんな二人を見て俺は、更に涙が溢れだしたのを感じながら、それでも嬉しくて 口角を上げて、俺も二人を抱き締めた。

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