220 / 345
第219話
待ちわびた……ずっと触れたくて
帰るまで繋がれた手を、及川さんも離したくないんだって分かった。
だって、鍵を探そうとやりずらいのに片手でエナメルバックの中を探る彼に、胸が熱くなるのを感じたから。
逸る気持ちを抑えてそれでも俺は、手の中の愛しい温もりを強く握る。
離してやるつもりなんてない。
鍵を開けながら横目で笑った及川さんも、それに応えて握り返してくれる。
早く沢山触って、メチャクチャにしてほしい。
そう思った……
ドアが開かれて中へ入り込んだと同時に、どちらからともなく抱き合う。
「飛雄……」
「及川さん」
抱き合って、彼の体温と匂いを全身で感じられるように……1㎜だって隙間を許さない。
愛しさいっぱいに名前を呼び合える喜び。
何度呼んだって飽きない、この人の名前だけは。
「キス、ください……」
前まで恥ずかしくて自分からは言えなかった言葉も、今は簡単に言える。
それだけほしいんだ
肩口に擦り寄るようにうずめた顔を両手で包み込まれ、視線を絡める。
「俺もしたいから。
我慢しないって言ったでしょ」
熱い眼差しで見つめて笑った彼が、唇を近付けてくるのをやっぱり待ってられず、
自分からも寄せる
「…ん……」
触れ合った二つの唇が熱くて心地良い。
その感触を味わっていた俺の唇を、柔らかくて濡れた物が撫でてくる。
俺は口を薄く開いてそれを深く受け入れられるように、彼の首に腕を回して強く抱き付く。
それに及川さんは嬉しそうに口角を上げて、期待した通りの物をくれた。
彼の舌先が俺のを優しく撫でてから、感触を確かめるようにゆるゆると擦り合わせてくる。
舌が動く度
クチュ、クチュリ
と水音が鳴って、それに気持ち良さを感じながらも物足りなくて。
もっと激しくしてという気持ちを伝えようと、回した腕に更に力を込めて口付けを深くする。
それに気付いてくれたのか、ただ擦り合わせていた舌を素早く動かして搦め捕り、きつく吸い上げた。
「ん、ふぅ……」
やっと与えられた強い刺激にもっともっとと欲張り、自分も彼の舌を搦め捕る。
キス……気持ちい……もっと、もっと……
強く搦ませ合い、きつく吸い上げて、長くて深いキスを楽しむ。
「ん……ふ、んっ、んん……ぁ……」
お互い息が上がって、上手く呼吸が出来なくなってきた頃、やっと唇を離す。
でも身体は離すことなく、ぴったりとくっつき抱き合ったまま。
「ハァ、ハァ……
飛雄がすごい求めてくれるから、及川さん嬉しい。
こんなにお前から求めてくれるの初めてじゃない?」
「だって、ずっと喧嘩してて、あの観覧車の時やっとキス出来たのに、また喧嘩したから……
及川さんが足りなかったんです。
だから、もっと欲しいです及川さん……」
「飛雄……そんなに俺が欲しかったんだ?」
「……はい」
彼の言葉に素直に頷く。
だって本当に欲しかったから。
これだけじゃ足りないから……
「飛雄俺と喧嘩して、離れて、寂しかった?」
「そんなの当たり前です」
「俺も、俺もすごい寂しかったよ……
飛雄が欲しくて、欲しくて、仕方無かった」
「じゃあ、もっともっとキスください。
全然たんねぇ……」
彼が欲しすぎて自然と熱くなっていく吐息。
こんなんじゃあ、一回だけじゃあ
全然足りないです……
ともだちにシェアしよう!