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第230話
あったかい……
なんか少し窮屈で、でも暖かくて心地好い感触がする。
包み込まれてる……
それがなんなのか分かっていたけど、瞳にどおしても映したくなって
そっと瞼を開いた。
視界いっぱいに広がる逞しい胸……
やっぱり及川さんに抱き締められてた。
俺達、抱き合いながら眠ってたんだ……
それが嬉しくて、口角が上がっていく。
そうしたら彼の顔も見たくなって、ゆっくり顔を上げた。
安らかに、可愛い顔をして眠る愛しい人……
それを瞳に映した瞬間、鼓動が脈打ち大きく音を立てた。
及川さんの寝顔は何回も見てるのに、それでもこんなにドキドキしてしまうなんて……
ああ、
好きだ……
もう止められないほど、好きだ
自分と及川さんの身体に挟まれて動かしづらい手をなんとか動かして、上へと伸ばす。
いっぱい触れたい。
及川さんが起きてる時は恥ずかしくてなかなか触れないけど、眠ってる今ならいっぱい触れる。
頬をスルリと撫でて、目尻に触れてから、自分のとは違うやわらかな髪をポンポンと撫でる。
すると及川さんが瞼をギュッと瞑ってから、くぐもった声を出した。
「んん………ん゙…」
あ、起こしたかな?
何て思いながらも、頭を撫でる手を止めたくなかった。
暫く撫で続けていると、及川さんの俺を抱き締める腕に力が込められた。
「ん、んん……トビオちゃん……好き……」
ま、またあの寝言だ!
ドキドキが止まらなくなる。
顔が熱くなって、どうしようもない。
そんな俺に、及川さんが更に追い討ちをかけてくる。
「トビオ、ちゃん……ちゅ……ちゅ、して」
ちゅしてって、それってキスしてってことか!?
なんなんだよこの人! 俺の心臓を壊す気か?
寝言だけど、しても、いいのか……?
「ほ、本当にキス、しますよ?」
「ん、して」
寝言とは思えないはっきりとした返事。
もしかして、本当は起きてるのか?
でも、起きていようが寝ていようが、俺は及川さんにキスしても良いんだ。
だって、俺は及川さんの恋人なんだから……
両手を伸ばして及川さんの顔を包み込み、自分の唇の方へと引き寄せる。
またくぐもった声を漏らす彼の唇を塞いで、キスをした。
触れるだけのキスだったけど、すごいドキドキして、気持ち良かった。
今まで沢山、エロいキスだってしてきたのに、まだこんなにも緊張する。
きっと、一生慣れることはないんだろうな。
ゆっくり唇を離して、瞳を開く。
そこには目を見開いて、あからさまに驚いたような表情の及川さんがいた。
「トビオちゃん……お前なかなか大胆になったね。
目が覚めたらキスされてたから、すんごいビックリしちゃったよ及川さん」
「なっ! な、な……あ、あんたがキスしろって言ったんだろーが!!」
「えっ? 俺そんなこと言った? 全然覚えてないんだけど」
「~~~~っ! も、もうあんたにキスしろって言われても、一生キスしねぇ!!」
「えっ! それは駄目だよ!
ちゃんとしないと駄目!
だって俺達、恋人同士なんだから。
だから、しても良いんだよ……ね、飛雄」
甘い声でそう囁いて、チュッと音を立ててキスされる。
それに顔が熱くなるのを止められなくて。
この人にはやっぱり勝てない……
「そー言えばさ、セックス中にいっぱいしたけどさ、まだキス1000回出来てないと思うんだよね」
「え、あっ……そーすかね?」
「そーだよ! まだ100回ぐらいしかしてないと思うよ。
いや、100回もしてないかも。50回ぐらい?
だからさ……今からまたいっぱいキスしよ」
「えっ!? い、今から?
今からいっぱいキスしてたら、学校遅刻しますよ!」
「大丈夫! 遅刻しないよう頑張るから!!」
「えぇっ、頑張るってちょ、ちょっと及川さん!
んんぅっ!!」
唇を塞がれて、何度も何度もキス、キス、キス……
これは遅刻決定だな。
でも、及川さんと一緒なら、それでもいっか。
及川さん……そんなに慌ててキスしなくても大丈夫ですよ。
だって……俺達は
これからもずっとずっと
一緒にいるんですから
そーですよね、及川さん
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