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第275話

及川side 俺は今日、東京へ旅立つ…… 新幹線のホームには、岩ちゃんや、青城のチームメイト達 それになんと、チビちゃんやメガネくんもお見送りに来てくれた。 飛雄は昨夜俺の家に泊まって、朝から引っ越しの手伝いをしてくれてから、一緒にここまで来た。 「及川~頑張ってこいよ~」 「帰ってくる時はお土産よろしくぅー!」 「ちょっとマッキー! 旅行に行くわけじゃないんだからね!」 「及川ざん! がんばっでぎてぐだざい!!」 「金田一、何泣いてんだよ……」 「うるぜーなぁ! 国見のアホっ!!」 「アハハ、金田一あんがとね!」 金田一の頭をよしよししてあげてると、視界の端に悪い笑みを浮かべたメガネくんの姿がうつった。 「大王様ぁ~頑張ってきて下さいねぇ~ 影山のことは僕に任せてくれて大丈夫ですよぉ~ 影山が寂しくならないように、僕がずっと傍にいますから~」 「アハハぁ~メガネくんありがとう~よろしくねぇ~」 ニヤニヤと嫌みたらしい口調で言われて、俺も嫌みたらしく笑ってやった。 良い子になったと思ったのに、ほんとメガネくんって性格悪いなぁ~ なんて思っていたら、隣にいたチビちゃんがメガネくんの背中をバシンと叩いた。 「イッタッ! ちょっと日向!」 「お前はまたそんな言い方して~…… 大王様、こいつこんな風に言ってるけど、自分から大王様の見送りに行きたいって言い出したんですよ。俺から誘おうと思ってたのにさぁ~」 「ちょっと日向、余計なこと言わないでよ!」 顔を赤くさせて眉をつり上げたメガネくんが、チビちゃんの髪を引っ張る。 チビちゃんは痛いって~なんて言いながらも楽しそうだった。 「そっか……やっぱりメガネくん良い子になったね。 嬉しいよ。あんがとぉメガネくん!」 「良い子って! 子供扱いしないでくれます?」 「してないしてない! さっきのもさ、飛雄に悪い虫がつかないように、俺の代わりにメガネくんが守ってくれるって意味だったんだね!」 「そうです!」 メガネくんじゃなくて何故かチビちゃんが、自信満々といった感じで返事をした。 それにメガネくんが眉間にシワを寄せながら、大きなため息を吐いた。 「日向、またそんな勝手なこと言って……」 「俺も月島と同じ気持ちです! 俺達がいるから、影山に悪い虫なんて絶対につきません。だから安心して下さい大王様!」 「ちょっとなんなのその同じ気持ちって……」 真剣な瞳でそう言い切った後、チビちゃんがニカッと歯を見せて笑った。 そんなチビちゃんを見て、さっきまで文句ばっか言ってたメガネくんがまた一つため息を吐いてから、小さく笑ったのが見えた。 前まではライバルで睨み合っていたのに、本当に二人は良い子になったな。そしてものすごく頼もしい。信頼出来るって心から思った。 「……なんだよお前ら……俺なら大丈夫だっつーの! どんな虫か知らねーけど、ちゃんと夏とかは虫除けスプレーとかするし!」 さっきまで黙って俺達の話を聞いていた飛雄が、フンッと鼻を鳴らしながらそう言った。でも、その唇は嬉しそうにムズムズと動いてしまっているようだった。 友達に傍にいるって言ってもらえて、良かったね飛雄! 「ブッハ! 虫除けスプレーってお前……クククっ……」 「影山……悪い虫はそこらへんにいる蚊とかとは違うんですけど……」 「は? じゃあ、どんな虫なんだよ?」 首を傾げる飛雄。そんな飛雄が愛しい。 お前は、ずっとそのままでいてね…… すんごく心配だったけど、二人が傍にいてくれるなら安心だ…… 「ありがとうチビちゃんメガネくん……飛雄をよろしくね!」 自然と生まれてくれた笑顔を向けると、二人がなんだかちょっと照れ臭そうに笑ってから、しっかりと頷いてくれた。それを見て飛雄が嬉しそうに微笑む。 そんな可愛い三人を見つめていると、後ろから大きな声で名前を呼ばれた。 「お、及川くんっ!」 慌てて振り返ると、梓ちゃんがこちらへ向かって走ってきていた。 及川くんって……出会った頃の呼び方。 「ハァハァハァ……よ、良かった、間に合って…… あっ……その顔は、呼び方が戻ってるからビックリしたって顔だね」 息を切らせながら走ってきた梓ちゃんが俺のことを見て、眉を下げながら笑った。 「……別に徹ってそのまま呼んでも良かったんだけど、一がヤキモチやいちゃうから」 「へ? はじめ……?」 俺の知ってるはじめって人は、一人しか居ないけど……なんて考えながら岩ちゃんの方を見ると、その岩ちゃんは顔を真っ赤にさせて、ものすんごい渋い顔をしていた。 「……梓、外でその呼び方はやめろって言ったべ?」 「へ? え? 梓……?」 「アハハ、ごめん! この呼び方は二人っきりの時じゃないと駄目なんだったね!」 「…………え? も、もしかして、もしかすると、岩ちゃんと梓ちゃんって……付き合ってるの?」 「……うるせぇ、クソ川……」 「うん……」 「うん、って……え? ええぇぇぇぇえぇっっ!!」 まさか、二人が付き合うなんて…… そー言えば岩ちゃんいつだったか、好きな子いるって言ってたけど、それがまさか梓ちゃんだったとは…… 隣に居る飛雄もビックリしたのか、目をめちゃくちゃ見開いている。 「ちょっと、岩ちゃん水くさいじゃん! 付き合い出したなら俺に教えてくれてもいいじゃん! なんで黙ってたの?」 「わりー……梓が自分で言いたいって言ったからさ。黙っとくのも大変だったんだぞ。言いたくてウズウズしてたんだからな!」 「及川くん! それからえーと……影山くん! 今まで本当にごめんなさいっ!!」 岩ちゃんと喋っていたら、突然勢い良く梓ちゃんが頭を下げてきた。

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