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第276話
及川side
それにもすんごいビックリして、飛雄と一緒にまた目を見開いた。
「黙ってたのもごめんなさい……どう言ったら良いのか分からなくて……
とにかく今日こそちゃんと言わなきゃって思って……間に合って良かった。
今まで二人を沢山振り回して、傷付けて、本当にごめんなさい……
自分でも分かってる、本当に最低な奴だったって!
それなのに、及川くんの親友の一と付き合うとか、ヤバい最悪な女だよね……」
俯いてしまった梓ちゃんに、俺は慌てて首を振った。
「そんなことないよ! 岩ちゃんは俺の一番の大親友で、だから幸せになってほしいと心から思ってる!
梓ちゃんもね、俺の大切な友達なんだよ! だから友達が幸せになってくれて、すんごい嬉しい!
色々とビックリしたけどさ、大切な二人が付き合って、一緒に幸せになってくれたら、俺も胸がポカポカするってか……泣きたくなるぐらい嬉しい!」
「及川く……っ……」
梓ちゃんの瞳から涙が溢れ落ちて、両手で顔を覆いながらその場に座り込んでしまった。そんな梓ちゃんに岩ちゃんが傍に近寄り腰を落として、優しく肩を抱いた。
岩ちゃん……ちゃんと彼氏やってんじゃん……カッコいいよ
「及川くん……ありがとう! そんな優しいこと言ってもらえるような人間じゃないのに……本当にありがとう……!
影山くんもごめんなさい……沢山酷いこと言って、傷付けてごめんなさい!」
そんな梓ちゃんの言葉に飛雄は少し悲しそうな表情をしたけど、次の時にはフッと穏やかに笑って、そっと梓ちゃんに歩み寄った。
「大丈夫ですよ、新藤さん……俺、怒ってません。
色々あったけど、新藤さんも一生懸命で、俺もスゲー及川さんのこと好きで、一生懸命でぐちゃぐちゃで……回り全然見れてなかったし……
色々悩んだけど、それも良い思い出っつーか……そのお陰で及川さんの心にもっと近付けられたと思うし。
今思うと俺達、良いライバル同士だったな、と思います!
上手く言えねーけど……岩泉さんと幸せになって下さい!
俺も及川さんと幸せになります!」
そんな飛雄の嬉しい言葉に、顔が一気に熱くなって、ボッと火がつきそうになった。
チビちゃん達や、青城の皆が一斉に吹き出した。
も、もう! なんなの飛雄! 本当にお前は可愛いんだから!!
そんな俺と、誇らしげに笑う飛雄を見て、岩ちゃんが満足そうに歯を見せて笑った。
「ハハッ! 影山っ、よく言った!」
「アザっす! 岩泉さんも今まで沢山迷惑かけてすんませんっした!」
「なんだよ、お前まで東京に行くみたいな言い方して。お前に迷惑なんて全然かけられてねーよ!
……梓のこと許してくれてありがとな」
「いえ、まだ許してません!」
そう言い切った飛雄に、皆が目を飛び出させた。梓ちゃんはもっと深く俯いてしまって……
なのに、飛雄は穏やかに笑っていた。
「及川さんだけじゃなくて、俺とも友達になってくれたら、100%許します!」
飛雄の言葉に梓ちゃんが顔を勢い良く上げて、もっと涙をポロポロと流し始めた。
「え!? い、良いの?」
「お願いします!」
「あ、ありがとうっ、喜んでっ!!」
真っ赤な顔をして、声を出して泣く梓ちゃんと、涙目になって嬉しそうに笑う飛雄……
俺もすんごい嬉しい……恋人と友達がこうして友達になれて、本当に嬉しい。
俺も泣きそうになっていると、近付いてきた岩ちゃんが俺の肩をドスっと力強く殴ってきた。
「イッダァッッ!! ぢょっど岩ちゃん! いったいじゃん!!」
「影山本当に良い奴だな! お前にはもったいねぇな!」
「飛雄はウルトラスーパー可愛くて、良い子だよ! 確かに俺にはもったいないけど、東京に行って頑張ってもっともっと成長して、絶対に飛雄に相応しい男になってみせるよ!」
「そうならねーと、お前をマジで本気でぶん殴るから、覚悟しとけよ!」
「へへっ大丈夫! 心配いらないよ岩ちゃんっ!」
拳をぶつけ合って、二人で思いっきり笑いあう。
飛雄を支えられるようなビッグな男になってみせるよ!
岩ちゃん、そんな俺を見てビックリしないでよ!
「梓ちゃんとお幸せに! 俺も飛雄と幸せになるから!」
「おうっ! 当たり前だ!」
「へへっ! あんがとぉ岩ちゃん!
頑張ってくるね!!」
「頑張ってこい及川!!」
「頑張ってきて下さい大王様!」
「応援してます!!」
「及川くんっ! ありがとう! 頑張ってね!!」
「及川! 頑張れ!」
皆が俺の背中を押してくれる。
正直言って、ものすんごく不安だし、寂しいけど……
俺……絶対に負けない!
「頑張るよ! 皆っ! あんがとぉ!!」
素敵な、良い仲間、友達に、
心から感謝してる!
皆……頑張るからね
そして……俺の大切な大好きな恋人……
飛雄……
「及川、さん……っ!」
飛雄が、涙混じりに俺の名前を呼んだその時……
『19番線に電車が到着します』
新幹線のアナウンスがホームに、俺の耳に鳴り響いた
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