279 / 345

第278話

及川さんが東京へ旅立ってしまったその日の夕方。 彼からメールが届く…… 《東京に無事つきました~(((o(*゚∀゚*)o))) ただ新幹線に乗ってただけなのに、なんかずっと緊張してて疲れたよww でもこれから、荷解き頑張らないとな(^_^;) 何もかも初めてですんごく緊張するけどさ、それと同じぐらいワクワクしてる! 絶対に負けない! ビッグな男になって見せるからさ、飛雄、応援しててね(p`・ω・´q) 俺も飛雄のこと応援してるからね!》 良かった及川さん……ちゃんと無事に東京ついたんだな…… って及川さんなら大丈夫か 及川さんらしい可愛い絵文字だらけのメールに笑みを溢す。 早速メールをくれた及川さんに、俺も早く返信しないと。 《引っ越しお疲れ様です。俺は元気にやってます 俺だって負けません!ずっと応援してますね及川さん》 メールを打ってる最中、胸が痛みだした。 元気さを装いながら、明るいメールを必死に考えて、送信する。 《元気にやってますって何それwwww 久しぶりに書いた手紙みたい!》 素早い彼の返信にまたも笑みを溢しながら、あれは可笑しかったかと首をひねる。 彼のメールさえも愛しくて、恋しい…… 「及川さん……」 「メールやっぱり大王様からか! 早速くれるなんて、本当に愛されてんな影山!」 無意識に彼の名前を呟いた俺に、日向がそう言ってニヤニヤと携帯画面を覗き込もうとしてくる。 携帯を素早くポケットにしまって日向を睨む。 「うっせえボゲェ、見んな……」 「へへへ……見ないって!」 そう文句を言いながらでも、日向の言葉に嬉しさが込み上がってきた。 そう……俺は及川さんに愛されてる。 だから、沢山メールくれるし、俺もそうするつもりだ。 俺ももちろん彼を愛しているから そう思うだけで心が満たされていく。 「じゃなきゃあんな熱烈的なキスしないですもんねぇ~ ……今思い出しても、すごかったですねぇ。 ごちそうさまでした~」 そこで日向の隣にいた月島が、ニヤニヤと意地悪く笑いながら、こっちが顔を熱くさせるようなことを言ってくる。 彼が乗った新幹線が走り去った後、俺達三人はそのまま烏野に向かい、部活をしてから、今は帰宅中だ。 くっそ……本当のことだから、何も言い返せねぇ…… あんな沢山の人々がいる目の前で、あんな大胆なキスをした俺達も悪い。 皆スゲービックリして、真っ赤になってたな…… 及川さんはあのまま東京に行ったから良いだろーけど、俺は皆にジロジロと見られてスゲー恥ずかしくて、顔から火が出るかと思った。 まあ、俺からもキスしたし、文句は言わないでおいてやろう…… 「あーー! あれほんっとすごかったなぁーー! 大王様にキスされて、あの後影山が走り出すからさ、あのまま一緒に新幹線乗って、東京に行っちゃうんじゃないかって、もうスゲービックリしたもんな!」 日向が興奮ぎみに手をブンブンと振る。 「い、行くわけねーだろ……」 「いや、分かってんだけどさ、スゲービックリしたから! そんで、その後の影山のキッス! すごかったなぁーー! なんか少女漫画のワンシーンみたいだったな!」 「まるで餓えた獣のようなキスだったね」 「かぶりつくような激しいキス!」 「あーーもぉーー! やめろお前ら!!」 もう、恥ずかしすぎて死ぬ!! 昭和の漫画だったら、もう顔から火が出てるぞ! 「何恥ずかしがってんの? 自分がしたくせに」 「う、うっせぇボゲェ!」 「まーまー影山! 肉まんでも食べて落ち着こうぜ! 坂ノ下商店に行こう! なっ?」 「…………おぅ……」 隣で今もクスクスと笑う月島を睨みながらそう返事をする。 俺はもちろんカレーマンを、日向は肉まん、月島はあんまんを買っていた。 恥ずかしさを紛らわすように、無心でカレーマンを食べる。 「お前って、毎回あんまんだよなぁー? 甘いもんばっか そんなんあんパンと一緒じゃん」 「あんパンも美味しいけどさ、あんまんをバカにしないでくれる? 全然違うから」 こっちはお前らのせいで、スゲー恥ずかしい思いしてんのに、何普通にどうでも良い話してんだよ! まあ、話が逸れてくれて良かったけどな…… 「へぇーー、じゃあ、肉まん半分とそっちの半分交換してくれよ!」 「え? 肉まん食べたい気分じゃないけど、まぁ、良いよ……」 「やったぁーー!」 珍しいな月島……いつもだったら、自分が食べたくないものは、絶対に食べない。気分が乗らないと交換なんてしない奴なのに…… 気分じゃないって自分で言ってるくせに、交換するなんて……  「へぇ~……あんまんってあんパンと似たようなもんだと思ってたのに、なんか違うんだな。なかなか旨いじゃん!」 「でしょ? あんまんに謝ってよ」 「ハハハっ! ごめんごめん!」 「まぁ……肉まんもまあまあ美味しいね……」 「だろ!? 肉まんも旨いだろ! でも、両方食べれるって良いな!」 「まあ、そうだね…… また交換してやっても良いけど……」 「やったぁーーーー!! サンキュー月島っ!」 月島は顔を赤くさせて、らしくないことを言っている…… それにスゲー驚いた 「つ、月島どーしたんだ!? 自分から交換してやるとか……」 「別に良いでしょ……」 「俺あんまり甘いの食べないからさ、でもたまには食べたくなるんだよなぁ~ この前も月島のショートケーキわけてもらった!」 「あれはキミが欲しそうにこっち見てくるから仕方なく……」 欲しそうに見てもくれるような奴じゃなかったのに…… ニコニコと笑う日向と、少し顔を赤くしそっぽを向いている月島を交互に見る。 「…………お前ら……いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」 「まぁ……君達をたまには見習おうと思ってね……」 「は?」 月島の意味不明な言葉に、俺はただただ首を傾げていた。

ともだちにシェアしよう!