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第278話
及川さんが東京へ旅立ってしまったその日の夕方。
彼からメールが届く……
《東京に無事つきました~(((o(*゚∀゚*)o)))
ただ新幹線に乗ってただけなのに、なんかずっと緊張してて疲れたよww
でもこれから、荷解き頑張らないとな(^_^;)
何もかも初めてですんごく緊張するけどさ、それと同じぐらいワクワクしてる!
絶対に負けない!
ビッグな男になって見せるからさ、飛雄、応援しててね(p`・ω・´q)
俺も飛雄のこと応援してるからね!》
良かった及川さん……ちゃんと無事に東京ついたんだな……
って及川さんなら大丈夫か
及川さんらしい可愛い絵文字だらけのメールに笑みを溢す。
早速メールをくれた及川さんに、俺も早く返信しないと。
《引っ越しお疲れ様です。俺は元気にやってます
俺だって負けません!ずっと応援してますね及川さん》
メールを打ってる最中、胸が痛みだした。
元気さを装いながら、明るいメールを必死に考えて、送信する。
《元気にやってますって何それwwww
久しぶりに書いた手紙みたい!》
素早い彼の返信にまたも笑みを溢しながら、あれは可笑しかったかと首をひねる。
彼のメールさえも愛しくて、恋しい……
「及川さん……」
「メールやっぱり大王様からか!
早速くれるなんて、本当に愛されてんな影山!」
無意識に彼の名前を呟いた俺に、日向がそう言ってニヤニヤと携帯画面を覗き込もうとしてくる。
携帯を素早くポケットにしまって日向を睨む。
「うっせえボゲェ、見んな……」
「へへへ……見ないって!」
そう文句を言いながらでも、日向の言葉に嬉しさが込み上がってきた。
そう……俺は及川さんに愛されてる。
だから、沢山メールくれるし、俺もそうするつもりだ。
俺ももちろん彼を愛しているから
そう思うだけで心が満たされていく。
「じゃなきゃあんな熱烈的なキスしないですもんねぇ~
……今思い出しても、すごかったですねぇ。
ごちそうさまでした~」
そこで日向の隣にいた月島が、ニヤニヤと意地悪く笑いながら、こっちが顔を熱くさせるようなことを言ってくる。
彼が乗った新幹線が走り去った後、俺達三人はそのまま烏野に向かい、部活をしてから、今は帰宅中だ。
くっそ……本当のことだから、何も言い返せねぇ……
あんな沢山の人々がいる目の前で、あんな大胆なキスをした俺達も悪い。
皆スゲービックリして、真っ赤になってたな……
及川さんはあのまま東京に行ったから良いだろーけど、俺は皆にジロジロと見られてスゲー恥ずかしくて、顔から火が出るかと思った。
まあ、俺からもキスしたし、文句は言わないでおいてやろう……
「あーー! あれほんっとすごかったなぁーー! 大王様にキスされて、あの後影山が走り出すからさ、あのまま一緒に新幹線乗って、東京に行っちゃうんじゃないかって、もうスゲービックリしたもんな!」
日向が興奮ぎみに手をブンブンと振る。
「い、行くわけねーだろ……」
「いや、分かってんだけどさ、スゲービックリしたから!
そんで、その後の影山のキッス!
すごかったなぁーー! なんか少女漫画のワンシーンみたいだったな!」
「まるで餓えた獣のようなキスだったね」
「かぶりつくような激しいキス!」
「あーーもぉーー! やめろお前ら!!」
もう、恥ずかしすぎて死ぬ!!
昭和の漫画だったら、もう顔から火が出てるぞ!
「何恥ずかしがってんの? 自分がしたくせに」
「う、うっせぇボゲェ!」
「まーまー影山! 肉まんでも食べて落ち着こうぜ!
坂ノ下商店に行こう! なっ?」
「…………おぅ……」
隣で今もクスクスと笑う月島を睨みながらそう返事をする。
俺はもちろんカレーマンを、日向は肉まん、月島はあんまんを買っていた。
恥ずかしさを紛らわすように、無心でカレーマンを食べる。
「お前って、毎回あんまんだよなぁー? 甘いもんばっか
そんなんあんパンと一緒じゃん」
「あんパンも美味しいけどさ、あんまんをバカにしないでくれる?
全然違うから」
こっちはお前らのせいで、スゲー恥ずかしい思いしてんのに、何普通にどうでも良い話してんだよ!
まあ、話が逸れてくれて良かったけどな……
「へぇーー、じゃあ、肉まん半分とそっちの半分交換してくれよ!」
「え? 肉まん食べたい気分じゃないけど、まぁ、良いよ……」
「やったぁーー!」
珍しいな月島……いつもだったら、自分が食べたくないものは、絶対に食べない。気分が乗らないと交換なんてしない奴なのに……
気分じゃないって自分で言ってるくせに、交換するなんて……
「へぇ~……あんまんってあんパンと似たようなもんだと思ってたのに、なんか違うんだな。なかなか旨いじゃん!」
「でしょ? あんまんに謝ってよ」
「ハハハっ! ごめんごめん!」
「まぁ……肉まんもまあまあ美味しいね……」
「だろ!? 肉まんも旨いだろ!
でも、両方食べれるって良いな!」
「まあ、そうだね……
また交換してやっても良いけど……」
「やったぁーーーー!!
サンキュー月島っ!」
月島は顔を赤くさせて、らしくないことを言っている……
それにスゲー驚いた
「つ、月島どーしたんだ!?
自分から交換してやるとか……」
「別に良いでしょ……」
「俺あんまり甘いの食べないからさ、でもたまには食べたくなるんだよなぁ~
この前も月島のショートケーキわけてもらった!」
「あれはキミが欲しそうにこっち見てくるから仕方なく……」
欲しそうに見てもくれるような奴じゃなかったのに……
ニコニコと笑う日向と、少し顔を赤くしそっぽを向いている月島を交互に見る。
「…………お前ら……いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」
「まぁ……君達をたまには見習おうと思ってね……」
「は?」
月島の意味不明な言葉に、俺はただただ首を傾げていた。
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