282 / 345
第281話
「ところで……なんで二人で顔赤くしてたの?」
またも月島は訝しげな目をして、そう訊ねてきた。
その言葉に日向が体全体をピンっと伸ばして、大袈裟に反応した。
動きが一々ウゼェ……
「なんだなんだ!? 顔赤くしてたって?
黛さんとなんかあったのか影山!?」
「ウッセーなぁ、なんもねーよ……
なんか知らねーけど自己紹介されて、名前呼んだら黛先輩の顔が赤くなったんだよ。
で、釣られてこっちまでなんか恥ずかしくなったんだよ……」
そう説明すると、日向と月島がもうメチャクチャ顔をしかめて、スゲー嫌な顔をしてきた。
「名前を呼んだだけで顔を赤くしただぁ!?」
「何それ気持ち悪っ!」
「気持ち悪いってヒデーな……」
失礼なことを言った後二人は、しばらく難しそうな表情で顔を見合わせてから、突然日向が俺の肩を掴んできた。
「うぉっ! な、なんだよ?」
「その人怪しすぎる! 影山、気を付けろよ!」
「気を付けるって、何をだよ?」
「なるべく近寄らない、話さないようにする。
お前には大王様がいるんだからな。
黛さんに何言われても、その事は絶対に忘れんなよ!」
「俺が及川さんのこと忘れるわけねーだろーがボゲェ!!」
「それはもちろん分かってるんだけど、お前スゲーバカだからなぁー、心配なんだよお兄ちゃんは……」
「誰がお兄ちゃんだ!! お前にだけはバカとか言われたかねーよボゲェ!!」
怪しいとか気持ち悪いとか、近付くなとか、こいつら失礼すぎんだろ……
まあ別に、俺は黛先輩と話すことなんかねーし、近寄ろうとか思わねーけど。
つーかそう言えば、最初の目的の写真がまだちゃんと撮れてなかったな……
「んなことより俺、及川さんに桜の写真送りてーのに、上手く撮れねーんだよな……」
「君、バレー以外何にも出来ないんだね」
「ウッセーボゲェ!!」
俺だってバレー以外にも出来ること沢山あるっつーの!
舌打ちしながらポケットから携帯を取り出すと、それを日向に素早く奪われた。
「桜だけの写真より、お前が一緒に写ってる方が大王様喜ぶぞ! 俺が撮ってやるよ!」
「はぁ!? 俺も一緒に!?」
及川さんが喜ぶんならそうしたいが、一人で写るのはなんか抵抗がある。
「お、おい! お前らも一緒に写れ!」
「は? 恥ずかしがってんのか~?
大王様は影山だけの方が喜ぶと思うけど……
ま、別にいっか」
「僕はパス」
「ダメだ! お前も一緒に写ってやろーぜ! その方が楽しいじゃん!」
ボソリと呟いてそっぽを向いた月島の腕を、日向が引っ張る。
月島は嫌そうな顔をしていたのに、日向に誘われた途端、ため息を吐きながらもそれに従った。
やっぱり月島、変わったな……前までは嫌と思ったらこっちが何を言おうと、絶対に従うような奴じゃなかったのに。
「ほらほら笑って~。はい、チーズ!!」
3人で並んで、日向が携帯を3人がちゃんと入るように構えて、シャッターを押した。
ブレずに綺麗に撮っていて、ムカつくけど日向は写真撮るの上手かった。
これを及川さんに送るんだと思ったら、なんだか緊張して変な顔になってしまった。少し頬が赤くなってて、恥ずかしい……
ともだちにシェアしよう!