288 / 345

第287話

あの後、午後練に出たけど、全然いつも通りのプレーが出来ず…… 皆にスゲー心配された 日向にもスゲー根掘り葉掘り、まだそんなにイライラしてるのかとか、あの後黛先輩に変なことされなかったか、などなどしつこく聞かれまくって…… 月島が黛先輩の名前が出た途端、眉間にシワを寄せながらこっちに来て、また話がややこしいことになった。 なんであいつらあんなに黛先輩を目の敵にしてんだ? まあ、なんか怪しいなって思うこともあるけど、たぶん悪い人ではないと思うんだけど…… てか、今はそんなことどうでも良い…… 今一番大事な問題は、この下半身をどうするかと言うことだ!! 家に帰ってベットの上でゴロゴロ転がりながら悶々と悩んでいても、何も解決法方なんて浮かんでこない。 オナニーも上手く出来ないし、自分の一番好きなこと、バレーすらも満足に出来なくなってしまうなんて 情けねー…… 「どーすればいーんだよ…… 及川さん……」 及川さん……助けてください あんたが旅立って、まだ一ヶ月ぐらいしか過ぎてないって言うのに、 もう恋しい…… こんなんで後2年間、耐えられるのか? 中学から高校に入るまでの2年間は、悲しくて寂しくて辛くて、それでも及川さんの温もりを知らなかったから、こんな喪失感に苛まれることもなかった。 彼はあの時 “お互いを想い続けても良い、好きでいても良い2年間なんだ” こう言った…… 俺はあんたを、想いすぎて、好きすぎて…… もう、自分で自分を制御出来ない これから2年間、俺は上手く身動き出来ないまま、あんたを想いながら どんどん前へ進んで行く及川さんを見失ってしまうのか 俺だけ?  こんなに悩んで苦しんで、求めすぎているのは ダメな、弱くてごめんなさい…… 今の、こんなダメな俺を知ったら、彼を悩ませて、困らせてしまうかもしれない それでも我慢出来ない、耐えられない せめて声が、聞きたい ……及川さん エナメルバッグを忙しない手付きで手繰り寄せ、中から携帯を掴み出す。 早く、及川さんに電話をかけないと! そう思い、携帯を開こうとした次の瞬間…… 突然着信音が鳴り出した 「っ!!」 ビックリして、携帯を落としてしまう。 「あっ……及川さんっっ!」 まだ、誰からかかってきたのか確認もしていない、分からないのに、 及川さんだって、そう思った もう、確認する余裕もない しなくてもいい 急いで携帯を拾い上げ、素早く開き、画面を見ないまま通話ボタンを押した 「及川さんっっ!!」 『うわっ、ビックリした! すごいでかい声っ!』 「……っ!」 携帯越しに響いてきた声に、涙が勝手に溢れ落ちた。

ともだちにシェアしよう!