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・第293話・
しっとりと濡れた手。
それは緊張からくる手汗なのか、それとも興奮して溢れ出した先走りによって濡らされたのか……
そんなこと、答えは両方正解なんだと分かり切っている……
そっと下から上へと屹立を撫で上げただけで、身体がビクビクと反応しておかしくなりそうだ。
「うっ、あぁ……んぅ」
『ねぇトビオちゃん、ただチンコ撫でてるだけじゃ物足りないでしょ?
また先っぽグリグリってしてごらん』
「先っぽを…グリグリ……」
『そっ。さっきはズボンの上からだったけど、今度は直接だからさっきよりもっと気持ち良くなるよ。
ずっとお預けくらわせてごめんね。
ほらっ、グリグリってしてみな』
優しい声音なのに、なんだか有無を言わせない口調。
こういう時の彼はいつもこうだ。
この雰囲気に呑み込まれて、俺はいつも彼の言いなりになってしまう。
それが電話だったとしても……
「う、あ……はい……」
俺は早くなる高鳴りに目を泳がせながら、ゆっくりと頷いた。
「……ん…」
陰茎を掴んでいた手を上へと滑らし、その手で亀頭を包み込んだ。
『飛雄、そのままそこ、グリグリってしなよ』
そのままってなんだよ……
俺が手を動かしたのを傍で見ていたような口振りだ。
ほんと目の前にいて、俺のこと全部見てるみたいだ……
「うぅ……は、ぁ……及川、さん……」
目の前に彼がいて、俺の全てをあのエロい顔で、目で、
見てる……
見られてるって想像しただけで、勝手に自然と嬌声が溢れ出て、厭らしい気持ちに囚われてしまう。
「ん、ぁ……お、いかわ、さっ……んっ」
何度も彼の名前を呼びながら俺は、彼の言い付け通り亀頭を包み込んでいた手を鈴口にグッと押し付けながら、擦り付けるように動かした。
「ンン"ゥッ!!」
ビリッとした刺激に背筋が勝手に仰け反り、思わず悲鳴をあげてしまう。
「んうぅっ! うっ、あぁ……っ!」
『お前ズボンの上からでも相当気持ち良さそうだったから、直に触るとほんとヤバいでしょ?』
図星すぎて何も言えない。
そりゃ焦らされてズボンの上から触ってた時より、直接触った方が期待も快感も大きく違う。
彼はそれが狙いで、俺が起こす反応全てを見抜き、両方味わうために焦らした。
今も意地悪な顔で、口角を上げているに違いない。
彼の掌で転がされて、身体は素直に喜んでしまう。
『次は爪で引っ掻くように刺激してみな』
「んぅ、……は、はい……」
すごい敏感になっているのにそんなことをしたら、もっとヤバくなる。
そう分かってはいるけど、彼の言う通りにしたら、より強い快感を得られる……
ゴクリと無意識に喉を鳴らし、恐る恐る鈴口を擽るように指を滑らせた。
「んうっ」
それだけでゾワッと身体が大袈裟に揺れた。
これだけなのに、ヤバい……
なのに及川さんは少し拗ねた様な声を出して、俺を責めてきた。
『飛雄……お前、俺の言う通りにしてないだろ?』
「えっ!? しっ、してますよ!」
『お前まだ理解してないようだな?
俺はお前の全てをお見通しだって言っただろ。声で分かるんだよ声で!』
「ぬっ! うぬっ……」
『ほらっ! 爪でグリグリしろよ。
最高のエロ可愛い声聞かせてみろよ!』
いつもとは違う乱暴に響く言葉に、身体がゾワッと震えた。
乱暴な口調にいつもなら腹を立てているかもしれないが、こういうエロい雰囲気の時の強引な言葉攻めは下半身にくる。
最高のエロ可愛い声……
そんな声俺からは出てくれないと思うけど
なんか頭が変になったみたいだ。
恥ずかしいと思っているのに……そんな声を彼に聞いてほしいなんて思ってしまった。
鈴口に当てていた指の角度を下に変えて、一つ大きく息を呑む。
そして、そこに思いっきり爪を押し当てた。
「んあぁっ!! はっ、あぅっ!」
先ほどとは比べ物にならないぐらいの快感が背筋を駆け上がって、恥ずかしい嬌声をあげてしまう。
『うん……そう。それだよ、飛雄』
「は、あ……お、いかわ、さん……」
彼のうっとりした声が耳元で囁かれて、頭がボワッとなる。
さっきの強引な言葉攻めも下半身にきたけど、この甘い声もいい……
『お前……次また嘘ついたら、どうなるか分かってんだろうな?』
「……は、い…ごめ、なさ、い……」
また来た乱暴な口調に身体を甘く震わせながら、素直に謝る。
この交互に言われるのがたまらない。
恐らく、いや、絶対分かっててやってる。
『ふはっ、いいこだねトビオちゃん。
そのまま続けて先っぽ爪でカリカリってしてみて』
「う、あ……は、はい……」
彼に言われた通り俺は、鈴口に押し当てていた爪を興奮で震わせながら小刻みに動かした。
「んうぅっ!」
ビリリッときた痺れる感覚に身体が大きく跳ねて、頭がゾワゾワして、おかしくなりそうだ。
「か、はっ、う、あぁ……ぅ……」
『飛雄、手止めちゃあダメだよ。刺激続けて……』
「んっあ、は、はい! あっ、あぅ……うっ!」
彼は全てお見通しなんだから、言う通りにしないとまた怒られてしまう。
その怒った声もゾクゾクして良いんだけど……
「あっ、はうっ! んっ、んんっ……んうっ!」
及川さんの言い付けを守って、爪でカリカリと何度も鈴口を引っ掻く。
腰がビクビク震えて上手く出来ないけど、必死に陰茎を掴んで、指を動かし続けた。
「ん、はっ……うっ、あぅ……んあっ、う……」
トプトプと溢れ出した先走りで爪がヌルッと滑って、刺激しようと思ったところとは違う箇所に爪が掠めた。
「んんんっ!! あっ、あうぅっ!」
意識のしていない思わぬところへの刺激に驚きすぎて、ヤバいぐらい大きな喘ぎ声を出してしまった。
『今の声やっば! すんごいエロい……』
「ん、はあ……き、聞かないで…及川、さん……」
こんな声聞かれてすごい恥ずかしい……
普通に聞かれても恥ずかしいのに、電話だから彼の耳に直接届いてしまうから、余計に恥ずかしすぎる。
『嫌だよ。もっと聞きたい。
今は電話しか出来ないんだからさ、お前が今どういう状況なのか分かるためには声だけが頼りなんだから、もっともっと聞きたい。
聞かせて。ね、飛雄……』
「うぅぅ……」
そんなまたとびっきりの甘い声でお願いされたら、下半身にくるだろ!
「お、いかわさんの……ボゲェ……
そんな声、で、そんなこと、言うとか、ほんと、ズリィ……」
『飛雄、及川さんのこの声好きでしょ?』
「…………ボゲェ……」
『ふはっ…ほら、図星だ。
ね、もっと聞きたい。もっと激しくちんこ弄って、可愛い声出してよ』
また甘い声でおねだりなんかしてくる……
そんな声聞いてたら、自然と手が動き出して、彼のお願い通りに激しくなってしまう。
「んっ! んっ! あぅっ……んはっ!」
『裏筋の、方も……強く擦って、みて……』
あれ? 及川さんの声、少し震えてるような気が……?
快楽で頭が痺れてるから、そんな風に聞こえるのかもしれない。
クラクラする頭でそんなことを考えながらも、直ぐに快感に呑み込まれてしまう。
先走りで指を滑らし、裏筋に擦り付けながら動かす。
「んはっ! あっ、あ、うっ……」
根元から雁首へ、ゆっくりと……
何度も指を擦り付け往復させる。
ゾワゾワって腰が揺れて、足も一緒に跳ねる。
「ん、あぁっ、ふっ、あうぅ……あっ、んんぅっ……!」
『はぁ……飛雄…可愛い……はぁ……うっ……
飛雄、たまんない……』
「あっ、あっ、おい、かわさっ……」
やっぱり及川さんの声震えてる。
俺の名前が色っぽく響いて、なんか熱を含んでいる……
「…………お、い、かわさ……」
『とびっ、お……はぁ、はぁ……』
吐息混じりの揺れた声に、俺は喉を鳴らした。
もしかすると……
「おいかわさっ……もしかして……及川、さんも、チンコ……触ってるんすか?」
自分の声も揺れていると明らかなほど、鼓動が早くなっていく。
及川さんは小さく笑って、艶かしさを含んだ声で、俺の予想通りの言葉を囁いた。
『うん。
だって……我慢出来なかったんだもん』
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