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第304話
あの人に告白されたら……そんなことは無いと思うけど
もしあったら、やっぱり俺は
「断ります」
そうハッキリと答えた。
だって、俺には及川さんがいるから。
「さっき俺にはあんなこと言ったくせに?」
黛先輩の口調が、少し強くなったような気がした。表情も険しい
もしかして、怒った?
「怒らせてしまったのならすんません」
「別に、怒ってはないけど……」
「でも、俺がそうだったから……」
「そうだった? 影山が後悔したことがあるってことか……?」
「はい……だから気持ちは、ちゃんと伝えた方が良いって思ったんです」
「フラれるかもしれないのに?」
確かに上手く行くとは限らないし、フラれてしまうかもしれない。
「それでも、本気だったら頭ん中にずっといて、いっぱいになって
フラれたとしても、自分の気持ちを知ってもらいたい……」
「どうせフラれるのに知られてどうするんだ?」
俺達は最終的に両想いになったくせに、何言ってんだって自分でも思うけど、例えそうじゃなかったとしても
及川さんが俺のこと嫌いで、告白なんかしてくれてなかったとしても……
俺からちゃんと告白したい!
中学の時、勇気がなくて、彼に想いを伝えられなかった……
絶対フラれるって思ってたから、気持ちを伝えることも、この想いがバレてしまうことも怖かった。
それでも胸の中にやっぱりずっと及川さんがいて、離れてくれなくて
ぐるぐるぐちゃぐちゃになって
会いたいって、そればっか考えてた
結果的に彼が告白してくれたから良かったけど、でも思ったんだ
自分から告白してれば良かった
中学の時の自分に言いたい
「好きなら好きってハッキリ言えよ
どうせお前は好きすぎてあの人のことずっと忘れられねーんだろ?
ウジウジして、未練がましくずっとあの人のこと想い続けてんだろ?
カッコわりーダッセェ!
フラれても良いからちゃんと告白しろよ。
自分の気持ち知ってもらって、そんでちゃんと相手の瞳に映って、真っ直ぐハッキリと振ってもらえよ!
ウジウジ悩んでるより、その方が清々しいし、カッケェーだろ?
そしたら泣いて、スッキリして、前に進めるだろ?
前に進むには、それしかねーんだよ。
勇気出せよ! お前なら出来る!」
そう一気に吐き出したその瞬間、日向と月島の顔が頭の中に浮かんできた。
あの中学の時俺は逃げてしまったけど、日向と月島はちゃんと俺に気持ちを伝えてくれて、ぶつかってきてくれたな……
告白するの、きっとスゲー緊張して勇気がいることだと思う。
及川さんも俺に告白してくれて。
あの時は及川さんに無理矢理襲われて、俺は怒ってたから、尚更気持ちを伝えるの勇気がいったと思う。
皆スゲーな……
よく考えたら、逃げたのって俺だけじゃね?
なんか俺、スゲーかっこワリーな……
心中で苦笑しながら前に目線を向けると、黛先輩が目を見開いたまま固まっていた。
あ、ヤベ……
「あー、えーと……黛先輩、すんません……
好き勝手に喋りまくって。
なんか色々考えたら、止まらなくなっちまって……」
「いや、スゲェ、ビックリした……」
「ですよね、すんません……」
先輩相手にまずいことしたなぁー
なんて思っていたら、よく見たら黛先輩の瞳が潤んでいることに気付いた。
えっ!? もしかして、泣いてる?
そんなまさか!
「あっ、あのっ! 黛先輩っ!?」
なんか口調が激しかったと言うか、キツかったし、突然捲し立てる様に言ったから。
でもまさかそれで泣くなんて思わなかった。
冷や汗をかいて慌てていると、黛先輩も慌てた様に首を振った。
「いやっ違うんだ!
これは別に泣いてるとかじゃなくて……
スゲー胸に刺さったと言うか、響いたんだよ。
俺は勇気がなくて、逃げてたんだなって気付いたんだ」
「黛先輩もそうだったんスか?」
「うん……そうだったみたいだ」
「じゃあ、後悔しないようにちゃんと気持ちを伝えてきた方が良いっスよ」
「そうだな、そうした方が良い……」
静かな声でそう言った黛先輩は俺の肩を掴んで、真剣な瞳で真っ直ぐと見詰めてきた。
「? 黛先輩?」
「影山……俺、お前のことが、前からずっと、好きだったっ!」
「は? ………………えっっ!!?」
この人、何言ってんだ?
なんでここで、俺を好きだって言葉が出てくるんだ?
雰囲気? 話の流れで目の前の俺に告白したくなったとか?
好きな人がいるんじゃなかったのか?
それなのに、こんなの駄目だろ
訳が分からなくて混乱してしまう。
そんな俺を、それでもまだ真っ直ぐと見詰めて離さない。
もしかして、本気?
「嘘……だろ?」
「嘘じゃない、ずっと影山のこと見てたって言っただろ?
ずっと前からお前を見てて、好きだったんだ」
見てたって、意味が分からない
どうして俺を? ずっと前からってなんで?
それに、もしそれが本当だったら、俺はなんて無責任なことを言ってしまっていたんだ?
俺のことを好きな相手に、告白してこいとか、後悔しないようにとか
無責任にもほどがある
その気持ちに応えることが出来ないのに……
「影山がこんな時に突然告白するなんて、スゲーズルいことしてるって分かってはいるけど。
影山の話を聞いてたら、止められなくなった」
「俺がこんな時って、どう言う意味っスか?」
「だって影山、及川と別れたんだろ?」
「えっ!?」
黛先輩の言葉に、今度は俺が大きく目を見開いた。
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