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第306話
あれから結局日向との約束には間に合わず、昼休憩が終わってしまった。
日向は怒ってるかと思ったが、
「本当はスゲー怒ってるけど、お前が遅いから月島呼んだら直ぐ来てくれたから、別にもういーよ!」
って言われて、ちょっと安心した。
でも、日向に呼ばれて直ぐに行くとは……本当に月島変わったよな……
それから午後練が終わり
三人で帰路につくため、日向が自転車を取りに行っている間に月島と二人で校門にて待っていると、
「で? なんで約束破ったの?」
月島が嫌ーな目で睨み付けてきて、ギクッと肩を跳ねらす。
黛先輩と話してたって言ったら、絶対に怒るよな……
「その顔は黛先輩と会ってたって言う顔だね」
「……なんで分かるんだよ? また俺の顔に書いてあるってやつか?」
「まぁ、そー言うことだね。
しかも、ただ話してただけじゃないでしょ?
何があったの?」
月島が鋭すぎて、顔に書いてあると言うか、もしかして特殊能力で心の中が読めるんじゃねーのコイツ。
怖すぎる
「隠しても無駄だぞ影山! 洗いざらい全部吐けよ!」
「んだ日向ゴラァ! お前話し聞いてなかっただろーがボゲェッ!!」
いつの間にか自転車と共に側に来ていた日向が、話の内容は分からないはずなのに上から目線な物言いをしてきて、ものすごく腹が立った。
「それぐらい分かるっつーの!
影山は本当に分かりやすいからな~」
そんなに俺って分かりやすいのか……?
まぁ、日向には良く、及川さんと喧嘩した後とかに、大王様と何かあったのか?
って見抜かれたことが度々あったからな……
俺には隠し事は向いていないようだ。
隠せないと言うことは、もう正直に話すしか道はないみたいだ。
「……黛先輩に……その……告白、された……」
ヤバい。何故かスゲー気まずい。
二人もビックリするだろうなと思っていたら、意外にも二人は一瞬だけ驚いたような表情をしたように見えたけど、直ぐ様いつも通りの二人に戻った。
「もう告白して来たんだ」
「早かったな。ついこの間話すようになったばっかだろ?」
「それだけ手が早くて、危険人物ってことだよ」
「危険人物って……随分とヒデー言い様だな。
つーかお前ら、黛先輩が俺のこと好きって……知ってたんだな?
それも顔に書いてあったのか?」
全部お見通しってことか。スゲーなコイツら! って感心していたら
何故かため息を吐かれた後に、鼻で笑われた。
「君が鈍感すぎなんだよ」
「そーそー! 俺と月島がお前を好きだった頃も、大王様は気付いてたけど、お前はコクるまで気付かなかったもんなぁ~
それがお前の良い所でもあるんだけどなぁ~」
「こんなバカをなんで好きだったのか、今では不思議で仕方ないよ」
「んだとゴラァ! バカって言う方がバカだろボゲェッ!」
「小学生かっ!」
「まあ、僕は日向のこともバカだと思ってるし、小学生みたいだなって思ってるよ」
「んだと月島ゴラァ!」
「なんでこんなバカ達を僕は……」
いきり立つ日向と俺を交互に見た後月島は、ボソリと呟いてため息を吐きながら項垂れた。
「……とにかく、黛先輩は危険人物だってことがこれで分かったでしょ?
もうあの人とは話さない方が良いよ」
「でも先輩に、俺は及川さんと付き合ってるって伝えたから、もう諦めてくれると思う。
及川さんには敵わないとか言ってたし、断ったら悲しそうな顔して立ち去って行ったから、もう話し掛けて来ないと思う」
「そうだと良いけど……
俺はこのまま上手く行くとはどうしても思えないんだよなぁー
また黛さんはお前の所に来る!」
「なんでそこまで先輩を悪者にするんだよ……」
日向が何故かキッパリとそう断言するもんだから、俺は呆れながらため息を吐いた。
「分かるんだよ。そう簡単に諦められるわけねーだろ!」
やっぱり、日向も同じだったから、分かるのだろうか?
それを聞いて、俺は何とも言えない気まずい気持ちになった。
だけど、日向はいつもと同じケロッとした表情をしていて、気にしているのはどうやら俺だけのようだった。
「それに何より大王様が東京にいるってことが問題なんだよな……」
「どう言う意味だよ?」
「お前と大王様が喧嘩とかでもしてみろ、お前顔に出るから直ぐバレるぞ!
そーゆーぬかるみに付け込まれて、優しく絆されて、なし崩しに?既成事実?ってゆーの?
そーゆーの作られて、逃げられなくなっちゃうかもなぁー!
大王様が傍にいたら、そーゆーことはやりにくいけど、いない今がチャンスみたいな!」
ビシっと至近距離で指を差されて、意味不明な言葉を沢山使われ、頭の中がごっちゃになった。
しかも日向の態度がムカつく。
『俺は難しい言葉いっぱい知ってんだぞ!』
って威張って、ふんぞり返ってるみたいな。
「なっ、なんだよ日向のくせして難しい言葉いっぱい使いやがって!
調子に乗んなボゲェッ!!」
「俺、影山より頭良いですからぁ~!」
「バカが意味も分かってないくせに、それっぽく語ってるだけでしょ?
まあ、言ってることは大体合ってるけど……」
「ホレ見ろ~! やっぱり俺が言ってることが正しいんだ!
分かりまちたか? バ影山くーん!」
「んだと日向ボゲェッ!!」
「お前それしか言えねーのかぁ?」
「あ"ぁ!?」
「あーもーバカ猿どもがキーキーうるさいよ! 見苦しい!
取り敢えず影山は黛先輩に付け入る隙を与えないように、気を付けることだね……」
「ま、俺達がフォローするから心配はご無用ですよ影山くん!」
「……そんな、ヤバい人じゃねーと思うんだけどな……」
何故こんなに二人があの人を警戒するのか、俺には全然分からなかった。
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