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第316話
これが及川さんだったら、安心して身を任せることが出来るのに……
ここでは、本当に嫌なことばかりだ。
一回目の時は、一人でオナニー出来なくて、イライラムズムズして。
それなのに及川さんの傍に行けない、触れられない触れてもらえない。
そして今は、黛先輩に触られて酷いことされている。
嫌な思い出ばかりだ。
それでも一回目のあの時は、頭の中全部及川さんで埋め尽くされてて、あれはあれで幸せだった。
及川さんには触ってもらえないのに、黛先輩には触られている……
求めたのはあんたじゃないっ!
温もりが欲しいと願ったけど、これじゃないんだ!!
及川さんじゃないとダメなんだ。
どうして目の前にいるのが、触れてくるのは、及川さんじゃないんだ?
なんで黛先輩なんだよ……
「影山、そんなに気持ち良かった?
すごい体ピクピクしてんな。
力も全然入ってない……可愛い……」
嬉しそうに囁かれて、頭を撫でられる。
あぁ……及川さんに頭撫でられたい……
でもそれは無理で、それなのにこんな感情で俺の心は埋め尽くそうとする。
崩れ、壊れそうな精神を、守っているのかもしれない。
黛先輩は優しく頭を撫でながら、膝をまた動かし中心に刺激を加え出す。
「うっ、あ"っ!」
手付きは優しいのに、下半身への攻撃は乱暴で、頭の中をグチャグチャにさせられそうになる。
これが黛先輩の本性なのだろう。
優しく見せ掛けておいて、本当はこんなに酷いことをする人。
何度も何度も、グリグリと膝で押し潰すような刺激を与えられて、身体が大袈裟なほど連続で跳ねる。
「ひっ! うっ、カハッ!! あぁっ、うぅっ!」
ヤバいっ! 声も抑えられない。
「影山どうだ? 気持ち良い?」
「うっ、あっ! やっ、やだっ!
やめ、やめ、ろ……っ」
「ちゃんと質問に答えろよ。気持ち良いだろ?」
「気持ち、良く、ないっ! やめて……頼む、からっ!」
「影山は素直で可愛い奴だと思ってたのに、嘘つきだったんだな……」
「嘘じゃ、ない……」
「こんなに感じてんのに、気持ち良くないわけないだろっ!」
先輩の強声が響いたのと同時に、一際強い衝撃が中心に走る。
「う"ッッ!! あ"あ"あぁぁっ!」
全身に電流が駆け巡ったかのような感覚に耐えられなくて、それを逃がすため思わず先輩にしがみつき力を込めて、なんとか耐え抜く。
そんな俺に先輩は嬉しそうに口角を上げて、きつく抱きついてくる。
「嬉しいよ……影山が俺に甘えてくれるなんて……」
なんでそうなるんだよ……
今のはどう考えても、甘えてるわけないだろ?
そう言い返したいのに震えて上手く口が動かなくて、歯を食い縛り強い衝撃に耐えていることしか出来なかった。
「影山の体が、喜んでくれてるみたいで良かったよ。
なぁ、及川があっちに行ったから、随分とご無沙汰なんじゃないのか?」
「ご、ぶさ……?」
「それでこの前も、イライラしてたんじゃねーの?」
どういう意味だ? 何が言いたい?
あの時イライラしてた理由、バレてる?
ドキッと身体が跳ねる。
「やっぱりそうか。そりゃそうだろうな……
ちょっとここ刺激しただけで、すごい敏感に反応してるし。
ずっとこういうことしたかったんだろ?」
「な、に、言って……?」
「物凄い物欲しそうだもんな。でも安心しろよ。
これからは、俺が全部満たしてやるから。
及川じゃなくて、俺がな……」
怪しい声でそう囁いてから、さっきまで膝を押し付けていたところに今度は手を伸ばしてきた。
そして糸も容易く、触れられ、掴まれてしまう。
「んぐッ! あ"ぁっ!」
グッグッ、と、そこを強く握られて、身体が大袈裟に跳ねた。
かと思えば、そこをやわやわと撫でられて、さっきとは違う優しい感触に身体が今度は揺れてしまう。
「う"っ! あぅっ、や、やめっ、さわ、るなっ……うっ!」
「影山のここ、触りたかった……」
「な、に、う、あぁっ、言ってん、だよっ、ひうっ!」
「触ってあげたかった……」
「さわ、るなっ! ひっ、うぁぁっ」
うっとりとした声音でそう囁かれて、気持ち悪さに身震いがした。
そんな俺に気付いているのか、気付いていないのか、攻めの手を止めることはしない。
優しく撫でたり、強く握ったり
2本の指で弄ぶかのように柔らかく抓んできたり、かと思えば思いっきり抓られたり。
「や、らっ! やめ、ひあぁぁっ!
うっ、やめ、ろ……んんぅ、うぁ……っ」
強弱のつけられた刺激を何度も代わる代わる与えられ、ビクビクと身体を跳ねらせることしか出来ない。
弱い刺激に力が抜けて震えては、強い刺激に高い声が上がり背筋が反る。
そんなこと交互にされたら、頭がおかしくなって、どうしようもなくなる。
「影山の、すごい気持ち良さそうにビクビクしてるな。
あれ? なんかズボン湿ってきた?
やっぱり感じてるんじゃん」
楽しそうなその言葉に、頭にカッと血が上る。
「そんな、わけないっ、感じて、なん、か、ないっ!」
痛くなるほど首を振って、先輩の身体を引き剥がそうとしたけれど、やはり力が上手く入らない。
「また嘘つくのか影山? 本当は先走りで下着グチャグチャになってんじゃねーの?」
「なってない!」
「じゃあ、見せてみろよ」
「やっ! 嫌だっ! やめろボゲェッッ!!」
先輩が素早くジャージのズボンに手をかけて、無理矢理脱がそうとしてくる。
「あっ! やめっ、本当に、やめっやめろ……っ」
必死に抵抗したのに、また先輩に両手を一纏めにされてしまう。
グッと力強く握り締められ、痛みに顔を歪めた瞬間、一気に下着ごと脱がされてしまった。
「アァッ!!」
ブルンッと陰茎が飛び出してきて、先輩の眼前に晒された。
「あっ、やだっ! 見るなっ!!」
隠そうとしても出来なくて、ジーっと舐めるように見つめられてしまう。
「影山のチンコ、スゲー可愛いな……」
「嫌だっ! 見るなボゲェ! このボゲェッ!」
「それは俺が嫌だ。だってずっと見たかったんだもん」
「何、言ってんだよ……見るなよ……」
晒されてしまった陰茎は、自分の気持ちとは裏腹に、完全に勃ち上がってしまっていた。
鈴口から滲み出た先走りを目の当たりにして、恥ずかしさと絶望で頭の中が真っ白に染まる。
「やっぱり感じてたんじゃん。
あーーほんと可愛い……
あんなにエロい声いっぱい出して、感じまくって、俺に抱き付いたりしてきてさ。
これってもう完全に及川への裏切り行為だよな?」
「うら、ぎり……?」
裏切りと言う残酷な言葉に、今度は頭中が真っ黒に染まった。
俺は、及川さんを裏切ってしまったのか?
先輩に触られて、感じてしまって
俺は、俺は……及川さんを、裏切った……
嫌だ! 嫌だっ!! そんなの何かの間違いだ!!
涙が次から次へと溢れ落ちて止められなくて……
頭の中は真っ暗なまま
「まあ、及川も今頃お前を裏切って、あっちで楽しくやってるだろうし、お互い様でOKじゃね?」
「嫌だ……違う……及川、さん……」
何も考えられず、ただ呆然とトイレの壁に身体を預ける。
そんな俺を抱き締めて、頭を撫でる先輩。
「大丈夫だよ。影山には俺がいるじゃん
俺と付き合ってくれたら、絶対に幸せにするし────」
「ふざけるなっ!!」
真っ暗に染まった頭の中で、突然強声が響き渡った。
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