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第320話
あの後黛先輩と別れて、俺達は3人で帰路についていた。
「……喧嘩してたのに、どおして俺のこと探しに来てくれたんだ?」
ずっと、気になってた。
あんなに怒っていたのに、二人は先に帰った筈なのに、どおして俺を探しに来てくれたんだろうって。
質問に月島は俺から目を逸らし、合わせようとしない。
「月島?」
「別に、どうでも良いでしょそんなこと」
そう言ってそっぽを向く月島に、もしかしてまた怒らせてしまったかと頬をかく。
完全にこの件は俺が悪いのに、それを自分でほじくり返すようなことして、月島の機嫌をまた損ねて、本当にバカだと思った。
それでも、気になるんだ
だってスゲー嬉しかったから……
月島の顔色を窺っていると、日向がニヤニヤ顔で月島を肘で小突いた。
「このこの~~何照れてんだよ~月島ぁ~~」
「うるさいよ日向……別に照れてないし、余計なこと言うなよ」
「あぁーーーー言いたくて、言いたくて、ウズウズするーー!!」
日向の様子からすると、もしかしたら月島から探しに行こうって言い出したのかもしれない。
てっきり日向から言い出してくれたのかと思った。
「月島……サンキューな」
礼を言って頭を下げたけど、月島は相変わらずそっぽを向いたまま。
「別に日向が、影山が心配だ心配だってソワソワしてるみたいだったから、そんな心配なら探しに行く? ってなっただけのことだし」
「嘘ゆーなよ月島ぁ!! お前がいっつも影山の心配してソワソワしてんだろ!?
コイツ喧嘩したあの日から、意地張って影山より先に学校出るくせに、影山がちゃんと学校から出て来たか確認しないと帰らないんだよ!」
「ちょっ、ちょっと日向! 何言ってんの!?」
「なんでそんなことしてたんだ?」
「お前が黛さんに捕まってないか、いっつも心配してさ。
学校の前の道ウロウロ行ったり来たりするもんだから、最初は何してんだコイツって思ってたけど、影山が出て来たら何事も無かったかのように帰り出したから、影山を心配してたんだって分かったんだよ」
「つ、月島……お前……」
最初は日向を止めようとしていた月島だったけど、日向が止まってくれなくて最後には赤面で身体を戦かせながら俯いた。
「そっ、それは、影山が心配だったって言うより、影山に何かあったら及川さんとの約束を破ることになるでしょ?
だから仕方なくと言うか、何と言うか……」
俯いたまま、モジモジしながら言い訳をする月島が途轍もなく可愛く見えて、俺は月島の頭へと手を伸ばそうとした。
だけどそれよりも素早く日向が、月島の頭をぐちゃぐちゃに掻き回した。
「月島カワイーなコノヤローー!」
「ウワワッ!! ちょっ、やめろよチビ!!」
「チビゆーな!! 最近素直で良い奴になったなぁーっと思ったけど、やっぱりまだまだ素直じゃないとこもあるんだな!
そーゆーとこも可愛いけど!」
「かっ、可愛くないしっ! だからやめろってば!」
月島が日向の手を掴んでやめさせようとしたけど、逆に今度はギューーッと抱き締められている。
「苦しいから離れてよ日向!」
「やだっ! 月島が可愛いのが悪い!!」
やめろって言うわりに月島の頬は赤くて、なんだかとても嬉しそうだ。
そんな二人を見ていると、日向がこちらを見て、何故だかニヤリと勝ち誇ったような笑みを向けてきた。
俺が月島の頭を撫でくりまわそうとしたら、何故かそれを阻止するように日向が俺と月島の間に入ってきて……
そしてあの勝ち誇った顔だ
‘‘月島は俺のだから、影山には触らさねーぞ!’’
って言ってるみたいな顔をしている
てゆーかもうまんま言ってる
「っっ!?」
も、もしかして
これが皆が言っていた、顔に書いてあるってやつか!?
こいつらなんで分かるんだ? エスパーか?
特殊能力を持っていて、心を読まれているのかと思っていたけど、日向の顔を見ていたら分かった。
そうか……そう言うことか……
エスパーとかじゃなかった。まさか俺にも分かる日が来るとは思わなかった。
二人は付き合っているから、日向がそう思う気持ちが分かった。
だって、もしも日向が及川さんに触れようとしたら、俺も同じ行動をとったと思うから。
だから気付けたんだ……
けど、それは日向と月島が付き合っていない時の話だ。
お互い恋人がいるんだから、そういう心配はいらねーだろ……
「……日向……俺には及川さんがいるから、月島なんていらねーぞ?」
「なんてってなんだよ!?」
俺の言葉にいきり立った月島の横で、日向がブハッと吹き出した。
「まさか鈍感な影山に気持ち読まれるとはな!
ちょっとは成長したんだな?」
「ウルセーボゲェッ! お前よりも俺の方が上だボゲェ!」
ギャハハっとバカ笑いした日向の顔を鷲掴みにしていると、前方から岩泉さんが大声を出しながらこちらへ向かって走ってきた。
「おーーーーいっ、影山ー!」
その後ろに誰か着いて来てると思ったら、岩泉さんを追い抜かして、物凄いスピードで新藤梓さんがこちらに突進するかのように迫ってきて、両腕を勢い良く鷲掴みにされた。
「しっ、新藤さんっ!? ひ、久しぶりっす……」
「影山くん久しぶりっ!
てかあんた、この一大事って時に何呑気にしてんの!?」
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