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第327話
及川side
まさか、こんなことになるとは思ってなかった。
当たり前だよな……
誰だって自分がこんなになってしまうだなんて、普通は予測なんて出来ないよ。
上京してからの俺は、全て上手くいっているはずだった……
そりゃちょっとは、上手くいかなくてモヤモヤする日は、少しぐらいはあったけど
でも
恋もバレーも、友達だって出来て、全てが順調だった。
文句のつけようがないほど、毎日が充実していた。
なのに
何故こんなことになってしまったんだろう……
俺が上京して、まだ間もない頃 ……
バレー部では、部の皆や先輩達とも早々打ち解けることが出来て、
大学に入学してそんなに月日も経っていないのに、もう実力も認められ
レギュラーにも選ばれた。
代表入りも秒読みと騒がれていた。
勉強もそこそこ出来ていたと思う。
授業はちゃんと理解出来ていたし、ついていけないと感じたことはなかった。
同じスポーツ推薦の奴が、
『大学の授業マジでヤバ過ぎ!!
高校とは比じゃないって~~
もう俺にはバスケしかない!!
バスケだけ出来ればそれで良いっしょ!』
『……でも、それじゃあ卒業出来ないよ?』
『うっ! ……でもまだ1年だし?』
『そう言ってる奴が、卒業間近になって勉強出来てるとは思えないけど?』
『うぅっ! なっ、なんだよ及川ぁ~同じスポ薦のくせにっ!
じゃあ、俺が卒業出来るように、今から勉強教えてくれよ!!』
なんて嘆いている奴に、勉強だって教えることが出来た。
運動も勉強も出来て、そんなだったから、変に目立ってしまったらしい……
『及川くんってホントカッコいいよね~~♡』
『今度一緒にバレーの試合見に行こうよ!』
『い~ねぇ~行く行くぅ♡』
『及川くんって都内生まれじゃないんだ?
宮城? 田舎生まれ?
だから知らなかったんだー!
こんなハイスペイケメンが都内にいたら、普通気付くもんね~』
『私……及川くんのこと好きになっちゃったかも……告白しよっかな?』
『えーーっ!!
私が先に目ぇつけてたんだよぉーー!!
私が絶対に先に告白するんだからね!』
『あんたら田舎者のくせに何言ってんの?
都会育ちの私達が先でしょ?』
『はぁ!? 何意味分かんないこと言っちゃってんのぉーー!!
てゆーか、及川くんだって田舎者だからね!』
『そーそー!
私達と一緒だから話も合うしー!』
これ……
全て俺自身が耳に入れた声
本人が近くにいる時に、話している内容だからね……
もっと周りをちゃんと見てほしい
勝手に女の子達だけで盛り上がっちゃってるけど、OKするわけないからね。
『あの……及川くんっ!
好きです! 付き合って下さい!!』
『俺、恋人いるから無理』
前まで告白されたら言葉を濁して、ゴメンとか、気持ちは嬉しいんだけどさとか、言ってたけど……
今の俺はもう、ハッキリズバリと断ることが出来る。
女の子が泣いたら困るとか、面倒臭いとか
酷いって言われて陰口を叩かれるとか、皆から非難されるとか、
気持ちには応えられないと告げて、女の子達を傷付けてしまうのも、正直こっちも心痛むし。
皆に傷付いて欲しくない、幸せになってほしいって、ずっと願っているのも事実で。
色々と気にしてた頃もあったけど
今は、飛雄が傷付くことが1番嫌だ!
飛雄が誰よりも何よりも大切で、俺の中で大きく膨れ上がった存在だから。
他の女の子達が泣いたとしても、その子は別の人とかに幸せにしてもらえば良いんだよ。
皆を皆、傷付けず俺が幸せにするのは無理だと気付いたから。
俺は1人しかいないから、1人しか愛せない。
飛雄が笑って、俺を好きでいてくれたら、他には何もいらない……
そう思えるほど、1番で大切で愛しているんだ……
だから、ハッキリと伝える
『俺には恋人がいるからって他の人にも伝えてくれたら、助かるんだけど』
『嘘っ!』
『は? え? 嘘じゃないよ!
本当に恋人いるよ!』
『本当はいないけど、バレーに集中したいから、いるって嘘ついてんだよね?
そーゆー男の人他にもいたから、私知ってるよ!』
『いや、本当に恋人いるから!』
『だって、及川くんから女の影感じないもん!』
女じゃないからな
『そんなゆーなら、今すぐここに連れてきてよ!』
『宮城にいるから無理だよ』
『なんで一緒に来ないの?
及川くん愛されてないんじゃないの?
私だったら、たっくさん愛してあげるよ!』
『愛されてないわけねーだろ』
飛雄に愛されてないとか、そんな適当なことを言われて、物凄く腹が立った。
俺と飛雄は強い絆で結ばれてるんだ!
君に愛されても、何にも意味がない。
俺の冷たい声に、女の子は身体をビクッと震わせた。
もしかしたら、泣くかもしれないな……
でも、飛雄が泣いてしまうより、ずっと良い。
『年下だから、まだ高校生だから連れて来られないだけだよ……
本当なら一刻も早く東京に連れて来たいところだけど、後2年間は無理だから』
そう言って、女の子に背を向けた。
それからもう一瞬で、噂が広まった。
もちろん悪い噂だ。
『及川くんに告白したらね、すんごい怖い声で罵られたんだって!』
怖い声を出したのは認めるけど、罵ってはないぞ
『知ってたぁ? 及川くんって子供に手を出したんだって!
ロリコンなんだって!!』
『何それ、ヤッバァーーッッ!!』
確かに飛雄を好きになったのは、飛雄が中1の頃だから、小学校6年と同じようなもんだけど。
そりゃ俺が大学生で、中1の飛雄を好きになったならロリコンかもしれないけどさ、大学生と高2だったら普通じゃない?
『及川くん……ロリコンって本当?』
それをまた本人に聞きに来る奴もいたから、本当に呆れる。
もう、何言われてもいーや!
中学の頃、男が好きなの? って聞かれて、焦って嘘ついたことあったけどさ、
もう、嘘はつかない
本当のことを言おう
飛雄と幸せになれれば、他なんてどうでも良いじゃん!
理解してくれる人とだけ仲良く出来れば、それで良い。
それで、独りぼっちになってしまったとしても、後悔なんてしない。
『ロリコンじゃないよ。相手高2だし。
なんだったら、恋人の写真見せてあげよーか?』
もう、皆に飛雄の写真を見せて、幸せアピールしまくってやる!
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