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第328話

及川side 『この人が俺の恋人だよ。すんごい可愛いでしょ』 丁度飛雄に桜と一緒に写った写真を貰ってたから、それを見せてみた。 チビちゃんとメガネくんも一緒に写ってるから、飛雄だけをズームする。 この飛雄……頬っぺが赤くなってて、ものすんごく可愛いんだよね。 これを他人にはあんまり見せたくないんだけど…… 俺が持ってる飛雄の写真は、テレて頬を赤らめてる可愛い顔か、不意打ちで撮った白目になった写真か、無理矢理作り笑いを浮かべた引きつってる怖い表情をした写真しかないんだよね…… 白目と引きつってる顔を見せるのは俺が嫌だから、もうテレた顔を見せるしかないじゃん! 『……え? うわ……すごいイケメンだねぇ!』 写真を見せると女の子は、目を見開きながら口元を綻ばせた。 そう。飛雄ってイケメンなんだよねぇ…… でも俺のだから、惚れんじゃないよ! 『このほっぺを赤くさせてるのも、なんか色気を感じて良いね~♡ 及川くんとは違うタイプのイケメンだぁ~♡ でも……』 女の子はキャッキャッと騒ぎながら、食い入るように写真を見つめていたけど、途中で訝しげに首を傾げだした。 『イケメン見れて嬉しいんだけど、私は恋人の写真が見たかったんだけど』 『うん。だからこの人が俺の恋人だよ』 『……は? いや、何言ってんの? 及川くん、恋人の写真見せてくれるって言ったじゃん? 冗談言ってからかってないで、早く見せてよ!』 『だから、この人が俺の恋人なんだよ』 俺は真っ直ぐ女の子を見据えて、そうハッキリと言い切って見せた。 彼女はポカンと口を開け惚けた表情をしていたが、次第に眉間にシワを寄せる。 『何言ってるの? その人男じゃん!』 『そうだよ。あ、でも、男を好きになったって言うより、この人のことを好きになったんだ。 初恋の人なんだよ。 他の女の子も男も好きになったことない、この人で最初で最後だと思ってる』 とびっきりの笑顔を浮かべて、そう伝える。 だけど女の子の表情は険しいままだった。 次に言われる言葉はもう分かってる。 あの、中学の時に女の子達に言われた、あのセリフそのままだろう。 『何それ? それってホモってこと? 気持ち悪いんだけど…… 男が男を好きとか、おかしいでしょ? マジで有り得ない』 おかしい 気持ち悪い そうそう! 中学のあの時も言われたんだよね~ そう言われた時は、ものすんごいショックを受けたけど、でも今の俺は違う。 自信を持って飛雄を好きだって言える。 俺達は、色々な困難を二人で乗り越えて、強い強い絆で結ばれたんだ。 周りの誰かに何を言われたって、飛雄が俺を愛してくれたら、 もう、何も怖くない 『じゃあ及川くんは、女の子を好きにはならないってこと?』 『女の子をって言うより、他の男も好きにはならない。 この人だけを永遠に愛するって決めたんだ』 『何なのそれ……そんなのやっぱりおかしいよ!! 気持ち悪いよっ! そんなのやめなよ及川くん!!』 『おかしいのは君の方だよ』 『はぁ?』 冷たい声を出そうと思った。 でも、思ったのより低くて、ものすごい冷たい声が出ちゃったな。 『俺が誰に恋をしようがどうしようが、君にも他の人にも関係ないだろ? それなのにおかしいとか、仕舞いには気持ち悪いとか、よくそんな酷いことが言えるね?』 『だっ、だってそうじゃない!! 他の誰が聞いたって、こんなの気持ちが悪いって言うに決まってるもん!』 『だから、他の奴がどうとか、そんなことカンケーねーんだよっ! 俺には心に決めた人がいるって、他の奴にもそう言っとけ!!』 ありったけの声を出して、怒鳴りつけた。 こんな乱暴な言葉遣い、今までしたことあったっけ? 女の子は、涙をポロポロと零して、泣きながら立ち去って行った。 バイバ~イ! あーあ、また悪口たっくさん言われて、悪~い噂で持ちっ切りになっちゃうんだろ~なぁ~ でも ま、いっか☆

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