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第331話

及川side 最近はずっとみのっちときーちゃんと、一緒に過ごしている。 講義も昼食なども連絡し合って、席取りとかも当たり前のようにしてくれる2人。 だから俺も2人が講義に遅れたりする時には、メモ取ってあげたりして、助け合っている。 部活以外は退屈で窮屈だった大学生活に、彩りが生まれた。 《ゴメン!! ちと寝坊しちった☆ かなり遅れると思う(´pωq`)》 『……及川くん、また三野村くん寝坊したって……』 先に席取りをして座っていると、大きなため息を吐きながらきーちゃんが近付いてきて隣に座った。 『また~? みのっち寝坊しすぎじゃない?』 呆れて俺もため息を吐いていると、突然きーちゃんが俺の手元を覗き込んできた。 きーちゃんが来るまでいつものように飛雄の写真を見ていたから、それが気になったのだろう。 『及川くん、またとびおちゃんの写真見てたの? 本当に大好きなんだね~♡』 ニヤニヤと笑って、からかうように俺の頬をつついてくる。 きーちゃんってみのっちの言う通り、意地悪だよね…… まぁでも本当のことだし、遠慮無く飛雄自慢でもしときますか! 『大好きだよ♡ トビオちゃんって本当に可愛いから、何時間でも見てられる~! きーちゃんには特別に、じっくりと近くで見せてあげるね♪』 そう言ってつついてきた手を掴んで、俺のスマホを渡そうとした。 だけどきーちゃんは眉を下げて、態とらしい大きなため息を吐いてから、スマホを突き返してくる。 『ハイハイ、もうとびおちゃんの写真は見飽きました。 及川くんののろけ話は、聞き飽きました!』 そんな見飽きるほど見せたっけ? てゆーか、飛雄の写真は何回見ても可愛くて、飽きることなんかないと思うんだけどなぁ~ うんざりした顔をするきーちゃんを笑いながら、まぁいっかと話を戻した。 『しかしさぁ~みのっち、こんなに寝坊ばっかして、絶対単位足らなくなって、卒業出来ないよ~助けてーって、泣きついてくるよ絶対!!』 『そうなったとしても、私は助けてやらないけどね……』 『わぁ~~お厳し~お言葉ぁ。なんて言いながら助けてあげるんだろ~けどね、きーちゃんは……ホントみのっちには甘いよね』 『それ、及川くんが勝手に思ってるだけだから! 他の人からは、三野村くんに冷たすぎるって言われてんだからね』 『その他の人ってのは、2人のこと全然分かってないんだね~ そんな適当なこと言っちゃって。 俺には分かるよ、2人がお互いを思い合ってるってことをね!!』 『及川くんこそ適当なこと言わないでくれる!? 気持ち悪っ!』 赤面になって眉間にシワを寄せたきーちゃんを仕返しとばかりにケラケラと笑っていると、何故か彼女は暗い表情になってため息を吐いた。 『でも三野村くんは男が好きだから……私と思い合ってるとかないよ』 『……トビオちゃんのこと好みとか言ってたけど、あれって本気だったのかな? 今までも男の人と付き合ったりしてたの?』 『それが小中高ずっと一緒だったけどさ、三野村くんが誰かと付き合ってるとこ見たことないんだよね。 噂とかで、男とキスしてたとか、男と手を繋いで歩いてるのを見たとか……聞いて だから男が好きなんだろうなぁって思ってるだけ』 『噂ってね、ほとんど嘘ばっかだよ。知ってるかもしれないけど、俺周りから悪口言われたり、悪~い噂いっぱい流されててね。 でも、真実はほんの一握りで、後は全部嘘! 皆嘘ばっか言って楽しんでる…… 真実が面白くなかったら、面白おかしい話作って盛り上がった方が何十倍も楽しいでしょ? だからねみのっちの噂も、本人に聞くまでは全部信じちゃダメだよ』 そう不敵に笑ってみせると、きーちゃんは小さく微笑んで頷いた。 『そーだよね……私噂ばっか信じて、勝手に思い込んでた。こんなの三野村くんに失礼だよね! 及川くん……ありがとうね』 そう言って穏やかな表情になった彼女を見ていたら、なんだかこっちも意地悪したくなってきた。 『でもさ~俺が言った思い合ってるってのはさ~2人が大親友だから、深い絆で繋がり合ってるって意味で、別に恋愛的な意味じゃなかったんだけどな~ きーちゃんはどう言う意味だと思ったの?』 『なっ、なっ!? お、及川くん性格悪ーい!!』 『もしかして恋愛的な意味だと思ったの~?』 今度は俺の方がからかいながら、彼女の頬をつつく。 『も、もぉ~~っ!! やめてよ! 別に恋愛的な意味だとは思ってないし~ もちろん友情だと思ってたし~!!』 『きーちゃんカワイ~♡』 頬をつつく俺の手を掴みながら、きーちゃんが赤面になって慌てている。 2人でギャーギャー騒いでいると、周りからまたコソコソと声が聞こえてきた。 『及川くんってホモだとか言ってたくせに、やっぱり女が良かったんだね~』 『やっぱホモとか嘘だったんだぁ~良かったぁ~』 『もしかしてあの2人付き合ってんの?』 『えーーやだぁーー!!』 『あの女誰?』 『あぁ……確か木園爽香って名前だったよ』 『……何あの女? たいして可愛くもないくせに、及川くんと付き合うとか生意気~』 こいつらまた陰口叩きやがって。今までの俺達の話聞いてたのか? きーちゃんはみのっちが好きって話をしてたのに、どうして俺達が付き合ってることになってんだよ? てゆーかヤバい! きーちゃんまでこいつらの標的になってしまう! 俺と一緒にいるせいでこんな陰口叩かれて、この子まで巻き込むわけにはいかない。 俺は慌てて、立ち上がった。 『いやいや違うよ! 俺はトビオちゃんと付き合ってるって言ってんじゃん! きーちゃんは友達だよ』 俺が首を振ると彼女達はお互い顔を見合わせて、眉間にシワを寄せて顰めっ面になった。 『及川くんがホモって噂、あれ嘘だったんでしょ? 及川くんすごいモテるから、女子達が騒がないようにああやって嘘ついたんでしょ?』 『本当は木園さんと付き合ってんでしょ?』 『いやだから違うって!!』 どう説明したら俺の言うことをちゃんと、間違いなく理解してくれるんだ? 途方もないことだと項垂れていると、きーちゃんが俺の腕を力強く引っ張ってきて、座らされる形になった。 『もういいよ及川くん……こういう人達に何言っても意味ないよ。そろそろ講義始まるから、そんな人達はおいといて座ってよーよ』 きーちゃんが小声でそう言ってくれて、俺は苦笑しながらも申し訳なくて頭を下げた。 『あ、うん……きーちゃん変なことに巻き込んじゃってごめんね……』 『大丈夫大丈夫~悪口とか噂話は、周りの人達が暇つぶしに面白がって作ってるだけなんでしょ? 私は及川くんの言葉だけ信じてるよ。他の人の適当な言葉なんて気にしない気にしない!』 きーちゃんは本当に良い子だな。 サッパリしてて居心地良くて、肩肘張らなくていいから自分らしくいられる…… 友達になって本当に良かった。 だけど、さっきの女の子達は、ずっと俺達を睨んだままだった……

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