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第333話

及川side 『お前らっ、何やってんだよっ!?』 『爽香ちゃんっっ!! 大丈夫!?』 急いできーちゃんの元へと、2人で駆け寄る。 辺りにはきーちゃんの私物だろうか?バッグや、ペンケースやノートなどが散らばっていて、なんと画面の割れたスマホまで落ちていた。 なんて酷いことをするのだろうか? 『2人とも、来たんだ…… えへへ、大丈夫大丈夫~こんぐらいへーきへーき!』 叩かれたのか頬が赤くなっているし、服が乱れ汚れているのに、それでも笑顔を見せてくれる。 そんなきーちゃんの態度が女の子達は気にくわなかったのだろう、顔を歪め険しい表情でこちらを思いっ切り睨み付けてきた。 『早速、彼氏が来るとかウッザッ!! 助けに来てもらえて良かったねぇ~ 愛されてて幸せだねぇ~』 『平気とか言ってるし、もっと遊んであげよっかぁ?』 ギャハハハと、バカでかい声で下品に笑う女の子達に、憎しみと呆れで頭がおかしくなりそうだった。 きーちゃんは俺が気にするから、気を遣って無理に笑って…… こんなに酷いことされて、平気なわけないじゃないか! グッと、拳を握る…… 『爽香ちゃんにこんな酷いことして、お前ら絶対に許さないっ!!』 素早く立ち上がったみのっちが、物凄いスピードで真ん中にいた女の子に近付き、胸ぐらを掴み上げた。 その子は苦しそうな息を漏らしながら、顔を歪めた。 周りにいた女の子達が、大袈裟に騒ぎ始める。 『キャーーーーッッ!!』 『キャーーッ、誰か助けてーー!! ここにヤバい奴がいるーーーーっ!!』 『三野村くんっやめて!! 私は大丈夫だからっ!!』 慌ててきーちゃんがフラフラなのにそれでも立ち上がり、みのっちの腕を必死に引っ張って止めに入る。 『……っ……みのっち……っ』 怒って女の子の胸ぐらを掴まなくちゃいけないのは、俺のはずなのに…… 何も出来ない自分に、腹が立って情けなくて 今まで沢山皆に訴えてきた でも、信じてもらえなくて…… 『三野村あんたさぁ、ホモなんでしょ? なのに残念だったねぇ~ 及川くんもホモだと思ってたのに、実は女の木園さんと付き合ってたとはねぇ~ あわよくば付き合えるかもとか夢見て、及川くんに近付いたのに、まんまと木園さんに盗られちゃったんだねぇ~ かっわいそ~キャハッ☆』 『…………俺のことはどうとでも好きなように言えば良い…… でもな、爽香ちゃんのことを悪く言う奴は絶対に許さないっ!!』 『へぇ~~男盗られたのに、そーやって庇ってあげちゃうんだ? やっさしぃ~~』 『……お前ら、性格ちょーー悪いなっ! そんなんだから、及川に相手にされないんだよ!』 『ハァッ!? あんただって相手にされなかったかわいそーな奴じゃない!』 俺と一緒にいるから、きーちゃんだけじゃなく、みのっちまで酷いこと言われて目をつけられて…… 2人は本当に優しくて、俺と友達でいてくれるけど でも、皆は俺が友達を作ったら、面白くないみたい。 独りぼっちでいろってことみたい。 2人のことは、大好きだけど…… でも、もう……一緒には、いられないよね…… 『もう、分かったよっ!!』 突然の俺の強声に、掴み、睨み合っていた女の子達とみのっちが肩を跳ねらせ、驚いたように目を見開いて俺を凝視した。 みのっちを止めようとしていたきーちゃんも驚いたような面持ちで、恐る恐る俺の名前を呼んできた。 『及川、くん……?』 『……もう、俺達、別れよう……』 『え?』 俺の言葉に女の子達は、きーちゃんと俺を指さして、また下品に大笑いし出した。 『違う違う言ってたくせに、やっぱり付き合ってたんじゃん!』 『これで晴れてやっと、及川くんはフリーになったわけだ?』 『やったぁ~~♡』 『あっ、あの及川くん? 別れようって……及川くんはとびおちゃ──』 『もういいよっ!! 俺達別れようって言ってるんだよ!!』 『……及川くん』 『……本当に……及川と、爽香ちゃんは付き合ってたの……?』 『い、いや、三野村くん、違うよ!! 違うけど……及川くんが……』 『もう、俺達……別れようよ…… ねぇ、きーちゃん、みのっち……』 この俺達は、きーちゃんとみのっちと俺…… 3人ってこと…… こんな言葉、本当は言いたくないよ でも、もう、耐えられないんだ…… 『もう、俺達……会わないようにしよう……』 『及川……』 『及川くん!』 『さようなら……』 『ちょっ! ちょっと待ってよ及川!!』 みのっちが俺の腕を掴み、瞳をさ迷わせた。 その瞳は潤んでいて、俺が言っている別れようの意味を悟ったのだろう…… 『及川……俺も爽香ちゃんも、ずっと及川の友達でいたいって本気で思ってるよ! ついさっき話したばっかじゃん! なのに、もう会わないとか、さよならとか、そんなこと言うなよ!! 自分のせいでとか、思わなくてもいーって言ったじゃん俺!!』 『そーだよ及川くん!! いーじゃん周りの人達なんてほっとけば。 信じたい物だけ信じてれば良いんだよ! だから、及川くんっ!!』 なんでお前らは、こんなにも良い奴らなんだよ!! 酷い目にあったくせに、どーして? いっそのこと、俺といると面倒臭いって 巻き込まれて、迷惑だって そう言ってくれれば、どんなに楽だろうか? でも……絶対に言わないだろうね…… だから、こんなにも大好きになったんだ 『もう、俺が面倒臭いんだよ…… こんなのうんざりだ!! 終わりにしたいんだよ……本気で!!』 あーあ、こんな酷いこと言いたくなかった でも本当に面倒臭くなっちゃったな…… だから、逃げよう 俺が1番酷い奴で、ゴメンね 俺は2人の顔を見ないようにして、走り出す。 後ろの方で、2人が俺を呼ぶ声と 馬鹿笑いが聞こえてくる。 あぁ……これで俺達、もっと楽に大学生活送れるかな? あれからというもの、2人を見かけたら、態と隠れたり、 声をかけられそうになったら、全力で逃げたりして 2人と顔を合わせないようにしていた。 これで、良かったんだよ 独りぼっちになっちゃったけど、今が1番楽に生活出来ている気がする。 飛雄とは毎日電話やメールしているけど、このことは言ってない。 部活頑張ってるし、友達は沢山出来たとか話したりしてる。 心配させるのも嫌だし、こんなダメダメな及川さん 飛雄には知られたくない…… 俺達の間に、秘密事は一切なしって俺から約束したのに また、俺から、破っちゃったね…… だけど…… 数日後の部活終了後 『今度飲み会やろーぜ!』 更衣室で着替えていると、先輩が小躍りしながらそんなことを言ってきた。 『飲み会、いーっスね!! 久しぶりにやりましょーよ!』 他の部員達も、皆乗り気だった。 あんまり出たくないけど、まぁ付き合いだし 適当に食べてればいーか……俺未成年だから、酒飲まなくて良いし。 途中でそっとバレないようにとんずらここーとっ! なんて考えていると、先輩が爆弾発言してきた。 『テニスサークルの女子達が一緒にやりたいって誘ってきたんだよ~♪』 テニスサークルって……確か、きーちゃんが入ってたサークルだったような……? 嫌な予感がする 『テニスサークルの女子って、可愛い子ばっかですよね~♡うわ~~楽しみ~』 『上手くいけば、飛びっ切り可愛い子を……お持ち帰りとか……?』 『うおーーヤッベェェエエエェエエェェェッッ!!』 『あの俺っ! その飲み会、不参加とか……ダメですか?』 盛り上がる部員達 だけど、こんなの楽しめるわけない! テニスサークルの女子達が誘ってきたって、きーちゃんもいるサークルなのに…… 絶対になんか裏があるに決まってる! どうにか不参加に出来ないだろうか? 『ダメだ!』 そんな甘いことを考えていたけど、部長にキッパリと却下されてしまった。 『どーして、ですか?』 『女子達に、及川には絶対に来て欲しいって言われたんだ! 及川が来ないなら、飲み会は絶対にしないって言われてるんだ』 『なっにぃぃいいいいぃぃっっ!!』 『なんだよ女子達ぃ!! やっぱり結局はイケメンが良いんかぁーーーーい!!』 『クッソーーーー! 及川っ! 絶対に来いよ!! かわいこちゃん達と飲みたいんだよ俺達は!! 及川が来ないならやらないってんなら、及川は強制参加だっ!! 分かったな!!!!』 『…………ハイ……』 嫌な予感が的中した…… これはつまり……そう言うことだと思う……

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