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第341話

及川さんが東京でどんな生活を送っていたのか、三野村さん達が知る全てのことを話してくれた。 何故メールを返してくれなかったのか、そのわけも分かった。 及川さん…… 俺は、何も知らなかった…… 離れていたからとか、そんなの言い訳に過ぎない。 ずっと及川さんは悩んで、苦しんでいたんだ 電話とかいっぱいしていたのに、声音とかで気付くことが出来たはずなのに どうして俺は、彼の苦しみに気付いてやれなかったんだ! 自分に腹が立つ 俺には何にも出来ないかもしれないけど、それでも及川さんの心に寄り添っていたかった…… 楽しさとか、嬉しいことだけじゃなく、彼の苦しみや悩みも 一緒に背負って 全て分かち合いたかった 及川さんの1番傍にいたかった…… 気付けなかった自分に腹が立っているけど、それでも及川さんにはその事を俺にちゃんと打ち明けてほしかった。 俺に話した所で、事故を食い止めることは出来なかったかもしれないけど、 及川さんがこんなに苦しんでることを知れたら、今みたいに東京にすぐに飛んで行って、女達と俺が話せば何かが変わったかもしれないのに!! とにかく、一刻も早く及川さんの傍に行きたい。 また突っぱねられると思うけど、 俺は及川さんの恋人なんだ! あの人が俺を必要としてなくても、もしかしたら別れたがってるのかもしれないけど、 俺がもし、彼と同じ事故にあってしまったとしたら、同じ態度を取るかもしれない…… でも俺達はまだ、別れてない! 俺は及川さんの恋人なんだから、傍にいて何が悪い!? 逆の立場だったら きっと、及川さんもそうするに決まってる!! だから俺は、及川さんに会いに行く!! 「三野村さん、木園さん、 ずっと及川さんの傍にいてくれて、あざっした!」 その言葉に、さっきからずっと泣きっぱなしだった木園さんが、更に涙の量を増やした。 三野村さんは照れ臭そうに笑っている。 「だって俺達は及川の友達だから、当たり前のことをしただけだよ」 「あの、とびおちゃんに及川くんのことで、こうやってお礼を言われる日が来るなんて、夢にも思わなかったよ! 感激だよ!!」 声を出して泣く木園さんに、三野村さんも涙目になっている。 こんな優しい人達と友達になれるなんて、さすが及川さんだな…… 本当に2人には、感謝してる 「俺、今から及川さんに会いに行きます!」 俺達の心と心はどんなに離れてても繋がってる 今は離れてしまったように見えるけど ちゃんと繋がってるって、俺には分かるから! だから、 「もう大丈夫、心配いりません! 2人とも安心して下さい」 自信満々にそう言うと、2人の顔が赤くなっていく。 「と、とびおちゃん、カッケーー! マジ惚れた!!」 「及川くんがとびおちゃんに夢中になる気持ちがまた分かっちゃった!! カッコよすぎっ! 感激すぎる!!」 ギャーギャー騒ぎながら泣く2人に、こっちまで顔が熱くなる。 「2人とも騒いでないで、早く及川さんがよく行きそうな場所とか教えて下さい……」 「あーーそうだよね! ゴメンゴメン!」 2人に及川さんの行きそうな場所を聞いて、俺は三野村さんの家を飛び出した。 2人が激しく両手を振って見送る姿に、笑みが溢れる。 及川さん……良い友達に巡り会えて、本当に良かったですね 自分のことのように嬉しくなった 渡された地図を頼りに、迷いながらも必死に彼を探す。 色々な場所を探し回って、そしてやっと…… 車椅子に乗った、及川さんの後ろ姿を発見した。 あの髪型は間違いない! 及川さんだ!! 彼の姿を一目見ただけで、笑みと涙が一緒に溢れる。 駆け寄ろうとしたその時、 及川さんの車椅子が傾いていることに気が付いた。 「っ、及川さんっ!?」 このままじゃあ車椅子が倒れて、及川さんが怪我をしてしまう。 俺が、絶対助けないと!! 駆け出し、及川さんへと手を伸ばした

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