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第346話

バレーが、俺の人生全てで 大切なものを教え、与えてくれた…… 及川さんも、俺と同じ気持ちで もし、俺がバレーを失ってしまったら 生きてきた証 全てを失ってしまったと同じ意味になって そんな自分なんて、生きている価値なんてないんじゃないかって 絶望して……目の前何も見えなくなって 俺の生きた全てが失われて終わっていってしまう  考えただけで、想像しただけで 叫びたくなって 胸が締め付けられ、苦しくて 頭がおかしくなりそうだ…… 及川さんは今…… そんな苦しくて、やるせない気持ちになって 何度も叫び続けているんだ 俺は……俺は…… そんな及川さんに 何をしてやれるんだろうか? 何も失ってない、全てが今も手の中にある そんな俺なんかが傍に行ったら、あなたを余計に苦しめてしまうのだろうか? 俺は及川さんの恋人なのに 愛しているのに 力になりたいのに 抱き締めて、包み込みたいのに ……何も出来ないのか…… そんな自分に、悔しくなって 涙が溢れて、目も鼻も痛くなっていく 携帯を握り締めて、俯く事しか出来ない。 日向達と電話中なのに、何も喋ることが出来ない、そんな俺に気付いたのか 今まで黙ったままだった月島が、唐突に口を開いた。 「……僕にとっても、バレーは本当に大切で、かけがえのないものだよ…… 大王様じゃなくて僕がバレーを失った立場だったらって、考えただけで震えがくるよ…… 何もかもがどうでも良くなって、何よりも大切なのに、そのはずなのに 愛した恋人からも逃げ出したくて、顔も見たくないし見られたくない。 大切だからこそ、こんな自分が許せなくて、遠ざけてしまう…… 日向の言う通り、何も失ってない僕に何が分かるんだって話だけどさ…… それでも……大王様は…… このまま終わってもいいだなんて 一ミリも思っちゃいないよ!」 月島らしくない、熱い言葉に 俺は思わず目を見開いた 「そして、大王様を救えるのは 影山! 君しかいないんだよ!!」 及川さんを救えるのは、俺しかいない…… 俺だって、及川さんの傍にいたいって 及川さんの心を救い出したいって本気で思ってるよ! でも、傍に居ることを拒否されて、俺の存在自体がもしかしたら彼を苦しめてしまうんじゃないかって、怖くて 何も終わってない、終わらせない! って思ってるけど…… 俺は……及川さんになんて声を掛けてあげたら、彼の心を救えるのか 全然、分からないんだ…… 「影山、下を向くな!!」  月島! なんで、電話なのに俺が下を向いてるって分かるんだよ? いや……そうだよな 友達だから、今の俺のことなんて、お見通しなんだよな 「意地っぱりな君は今まで、素直になれなくて、大王様に沢山助けて貰ったんじゃないの?」 確かに、及川さんには 今まで沢山助けてもらった…… 及川さんは何度も心を救ってくれて 温もりを与えてくれた…… 俺は子供で、意地っぱりで、直ぐイライラして怒って 素直になれなくて 喧嘩しても、謝ることすら出来ない 子供な俺を……  悩んで、落ち込んだら、自分でちゃんと立ち上がることが出来ない 自分では立ち上がられてるって思い込んでる 不器用で、バカな俺を 勇気づけてくれて、背中を押して 立ち上がらせ、走る力をくれたのは いつもどんな時も先に手を差し伸べてくれたのは 助けてくれたのは 及川さんだった!

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