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【ほのぼの】シーグルお兄ちゃんの幸せな苦悩(1)

 俺の母は特殊なスキルを持っている。その名も「安産」。子供ができず絶滅の危機にある種族のいるこの世界にあって、これほど魅力的なスキルは多分無い。  心優しい母はこのスキルを最初「呪いだ!」と思っていたらしい。異世界人だった母にとっては、あまりに未知な分野だというのにそこが特化していたのは恐怖だったらしい。  それでも今は「これで良かった」と言っている。愛情が一部過剰に溢れる父と出会い、大切に慈しんでいるからだろう。そんな両親は俺にとって未来の目標だ。  でもそんな母は俺が産まれて違う悩みを持ったらしい。このスキルが父だけに使われる事に申し訳なさを感じているらしい。  父は母に他の伴侶が出来る事を拒んでいるし、母も他の相手との間に子を設ける事を望んでいないからだ。だが竜人族に子が少ないのは今も同じ。心優しい母はそれを憂えている。  そんな母の願いなのか、それともこの世界の神の思し召しか、本来ならあり得ない事が俺達兄弟には起こっている。スキル「安産」の継承だ。  母ほどのレベルではないものの、俺にもこのスキルは継承された。そして他の弟妹にもレベルの差はあっても継承されている。  母はこの事実を知ったときに「なんかごめん!」と半泣きになって謝っていたけれど、俺は謝られる覚えがないから疑問だった。  だって、素敵な事だ。俺は将来の伴侶と幸せに生きられる。そしてその人との間に子を結ぶことができるのだから。  それでも、今のこの状況はなんだろう… 「シーグル兄ちゃ~ん、抱っこぉ!」 「だめぇ! 兄ちゃんはアタシの!」 「兄ちゃん、一緒に木登りしよう」 「違う! 兄ちゃんは俺と一緒にかくれんぼするんだ!」 「違うもん! 兄様は私とおままごと!」 「うわぁぁぁん」 「ぴいぃぃぃぃ」  なんたるカオスだ…。  妹や弟が7人、何一つ要求が被らない。  俺は頭が痛い気持ちだった。母と父が励んだ事と、母の特殊な高レベルスキルがこの状況を作っている。兄弟が一気に7人。そのお世話が俺の楽しみであり、苦悩だ。 「えっと…かくれんぼはお昼ご飯食べてからにしような。まずは…おままごとにしようか」  とにかく要求が多いから、弟3を抱っこし、妹2をおんぶ。妹1とおままごとをしつつ、弟1&2が木登りをしているのを見守っている。  俺は子育て真っ最中な父役をしているから、その間にまだ赤ん坊の妹3と弟4のおむつを取り替えて寝かせるようにトントンしている。  母はこんな男性の事をなんて言ってたっけ……イクメン? 「あなた、子供にばかり構っていないで私の事も構ってくださいな」 「え? あぁ、ごめん」 「もう、困った人だわ」  …どこでそんなセリフを覚えたんだ妹1号。メイド達の間にいたから、そのどっかだな。 「兄ちゃん!」 「どうした…って、うわぁ!」 「おちたぁ!」  弟1号と2号が泥だらけの擦り傷だらけでベソかいてる。俺が慌てて立ち上がると首に抱きついていた妹2号が泣くし、つられるように弟3号と赤ん坊達が泣き始める。  もう、どうしろって言うんだこの状況!

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