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【お妃視点】婆やからの手紙(1)
息子ユーリスからの突然のお触れが気にはなっていたものの、数日が過ぎていました。そこに、ユーリスに付けた婆やからの手紙が届いたのです。
内容は、ユーリスが結婚を前提とした恋人を連れてきた事。そしてその恋人が身ごもった事を知らせる手紙でした。
「あなた! まぁ、なんて素敵な事でしょう!」
旦那様に興奮して伝えると、彼は安堵したように微笑んで「あぁ、そうだな」と言ってくれました。
竜人族の出生率はとても悪いのです。私も旦那様とはお見合いで知り合い、恋や愛の前に子作りをしました。そして運良く、ユーリスを身ごもったのです。
安心しました。その頃には私は旦那様の深い愛情に喜びを感じ、愛を感じていたのですもの。これで子ができなければ、それは何よりの悲劇なのです。
手紙にはお相手の方の人となりなども書いてありました。名前はマコトさん。人族で、特殊スキルである「安産」の高レベル保持者だと書いてありました。
噂には聞いたスキルでしたが、実際にあるとは思わなかったので驚きました。同時にそのレベルの高さによって、子が生まれてくるのが7日後と短い事にも。
異世界人で、男性が出産することのない世界から来た人だとも書いてありました。ならばきっと、不安と恐怖を感じているでしょう。女の私ですら、体に起こる変化に戸惑う事があったのですから。
「アナタ、マコトさんにお会いできないかしら?」
無理を承知で問いかけてみれば、旦那様は確かに頷いてくれました。
私は嬉しかったのです。とても怖かったでしょうに、それでもユーリスを愛して、子を産む決意をしてくれた強い人がいてくれたこと。それほどに慈しむ二人の間に、愛情の結晶である子が生まれる事に。
お会いしたマコトさんは、とても線の細い人でした。とてもそんな強い決意ができるほど、強靱であるようには見えなかったのです。
私たちを見て、とても不安そうに震えているそのお腹は、ふっくらとして見えました。今にも倒れてしまいそうな顔色で、泣いてしまいそうな瞳でこちらを見て、申し訳なさそうにしているのです。
私は駆け出して、彼の震える手を握りました。
だって、何を不安に思う事があるのです。何に不満があるのです。愛する人の手を取った、そして素晴らしい贈り物をしてくださる相手に、どうして負の感情など抱くのです。
後で聞いた話、マコトさんはとても真面目な方なのだそうで、私たちに挨拶もしないまま子供が出来てしまったことを申し訳なく思っているのだと。
本当に律儀で、そして可愛いお嫁さんです。
話をして分かりました。少しおっとりとしていて、でも真面目で強いのです。不安なはずなのに、子を産む事に関してはもう覚悟ができているようなのです。
「アナタ、素敵なお嫁さんね」
「あぁ、まったくだ」
「ふふっ、ユーリスったら、あんなに大事に抱え込んで。あの子にもまだ、あんな可愛い部分があったのね」
すっかり大人になって、立派になった息子の意外な一面を見た私は、そんな風に笑っていました。
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