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【イカレ竜】夫婦の時間(3)

◇◆◇  耳の根元は案外硬いのですね。でも丁寧に解すと徐々に柔らかくなっていくので、凝っているのだと分かりました。  アンテロがこっそりと私の耳に囁いたのは「母様、耳の所が疲れるんだって」という一言でした。  獣人の耳は敏感だとは聞いていたので、触れていいものか分からなかったのですが…どうやら気持ちいいようで安心しました。  尻尾は嫌がるんですよね。強く触れれば痛いとか、くすぐったいとか。ある意味敏感です。  それにしても柔らかい。手にしっとりと毛が馴染む感じもいいですね。ふかふかとしているのも素敵です。  何よりこの艶ですよ。耳の先端の黒い部分は長いのですが、他は短い毛も混じっているのですね。根元は柔らかいふわふわの産毛のような感じもあります。いつまででも撫でていたい感じがしています。  そうして夢中で触れていると、不意に静かな寝息が聞こえてきて、私は顔を覗き込んだ。  グラースさんはとても穏やかな笑みを浮かべて眠っていました。口元が緩く笑みの形を作り、瞳は穏やかに下がっています。枕を抱きしめて幸せそうに眠る姿を見ると、私の気持ちも緩やかになっていきます。 「疲れていたのですね」  普段はさせてくれない頭なでなでをして、私は明かりを落とし、隣に寝転んだ。  思えば最近王太子としての仕事も忙しく、来客も多くて、グラースさんに軍の仕事をお願いしてばかりでした。 「すみません、グラースさん」  子育てと、軍の訓練と、ほかにも。沢山支えてくれるのに、文句一つ言わずにやってくれる。  こんな良妻を手にできた事は、私にとって何よりの幸せ。しかもこの方は自分も大変なのに私の尻まで蹴り上げてくれるのですからね。頭が上がりません。 「愛していますよ」  囁いて、もう少し頑張ってこの人と息子達との時間を作ろう。そう思い、私もゆっくり眠りについた。

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