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【ほのぼの】マコトの帰省(1)
フランシェが産まれて3ヶ月。俺は王都の懐かしい家にいた。
「マーサさん! モリスンさん!」
駆け込むように子供達を連れて、俺は俺の家に帰ってきた。事前連絡してあったからお店を休みにしてくれた二人は、俺達を温かく迎えてくれる。
「マコト!」
マーサさんに抱きついて、俺は満面の笑みだ。やっぱりこの世界での俺の母親はマーサさんだ。
「ただいま」
「えぇ、おかえり」
優しく髪を撫でられて、俺はちょっとくすぐったい。でも、とても嬉しいんだ。
マーサさんの後ろからゆっくりと、モリスンさんも来てくれて同じように抱きつく。ポンポンと頭を撫でるモリスンさんが、穏やかに微笑んでいる。
「こんにちは、ばぁば、じぃじ」
「来たよ!」
「きたぁ!」
俺の後ろから来ていたシーグルが落ち着いて挨拶するのに対して、下の息子のロアールはまだやんちゃ。そして長女のエヴァも負けずに元気だ。
「あらあら、いらっしゃいみんな」
「さぁ、まずは掛けてお茶にしよう」
駆け寄る息子達を一人ずつ抱きしめながら、マーサさんもモリスンさんも嬉しそうにしてくれる。
今日はユーリスについて、久しぶりに王都にきた。少しだけ出席しなきゃいけない会議があるっていうから、フランシェを二人にも見せたくて。
「その子が、新しい子かい?」
シーグルが抱っこしている抱っこひもの中で眠っているフランシェを、モリスンさんがいち早く見つけて声をかけてくれる。シーグルの手から受け取り、俺は二人にも顔を見せてあげた。
目を細めて嬉しそうに見るマーサさんの目に、薄らと涙が浮かんでいる。モリスンさんもとても嬉しそうにはにかんだ。
「可愛いわ。マコトに似てるわね」
「そうですか?」
「あぁ、目元が愛らしくて似ている。きっと美しい姫に育つよ」
そんな風に言われると、ちょっとくすぐったい。っていうか、俺は未だに自分が可愛いなんて認めていない。
そりゃ、こっちの世界の、特に竜人の中にいたら俺は小さいかもしれないけれど、でも可愛いは無いと思っている。
でも、反論しても反論で返ってくるから、もう良いんだけれどね。
「あたちはぁ?」
「ん?」
「あたちも、かあさまみたいにびじん?」
5歳のエヴァが俺を見上げながらそんな事を言っている。
くっ、我が娘ながら可愛い。俺に似てるってみんな言うけれど、俺からすると似てない。5歳にして見た目天使、そして誘惑は小悪魔だ。
「エヴァはとっても美人だよ」
「ほんとぉ!」
「勿論だよ」
抱き上げてやれば俺の首にギュウゥと抱きついてくる。目に入れても痛くないって言うのは多分痛いけれど、入れてみようと思えるくらいには可愛い娘だ。
何にしても落ち着いて、今は食堂の椅子に座ってお茶を飲んでいる。フランシェは俺の腕の中でぐっすりだ。
「マコト、王都にはどのくらいいるの?」
「2~3日です」
「じゃあ、ゆっくりね」
「国王陛下と王妃殿下の所に帰るのかい?」
「いえ、お二人が迷惑じゃなければこちらに泊まりたいんですけれど」
これに関しては王様とお妃様にも了承を貰った。二人も快く送り出してくれて、俺は気兼ねなくここにこれている。
モリスンさんもマーサさんもとっても嬉しそうにしているけれど、モリスンさんは少し申し訳ないみたいだ。
「陛下と妃殿下も、孫の顔が見たいんじゃないのかい?」
「お二人は時々ですが屋敷にきて、子供達と遊んでくれてますから」
お妃様は頻繁にお茶をしに来てくれる。それに王様も月に1回程度だけれど来てくれる。忙しいのに申し訳無いと言えば、「来たくてきてるんだから、気にしないで」と言われてしまった。
「なんだか申し訳ないな」
「そんな事ありませんよ」
モリスンさんまで申し訳なさそうにしたら、俺もちょっと申し訳ない。
本当は俺がもっとここに帰ってくればいいんだけれど、徒歩の道のりの長さは分かってる。陸路だとどうしても数日かかってしまうし、馬車移動でも下のエヴァとフランシェは連れてこられない。精々ロアールくらいまでだ。
「あの、お店ってどうなるんですか?」
「マコトがいるのに開けていられないわ」
それも申し訳ない気がする。このお店を楽しみにしてる常連さんもいるわけだから。
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