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【ほのぼの】マコトの帰省(3)

 そうしていると店のドアベルが鳴って、城に顔を出していたユーリスが顔を出してくれる。俺を見つけて微笑み、モリスンさんにも丁寧に頭を下げた。 「ご無沙汰しています、モリスン殿」 「ユーリスくん、そう堅苦しい事は抜きだ。さぁ、おいで」  笑顔で迎えるモリスンさんに、ユーリスも穏やかに微笑んで俺の隣に座り、フランシェの頬を撫でた。  ユーリスとモリスンさんは仲が良い。ここに来れば二人でお酒を酌み交わしている。ユーリスはモリスンさんの事を「モリスン殿」って言うけれど、モリスンさんはユーリスの事を「ユーリスくん」と呼ぶ。最初の頃、「殿下」と呼んで悲しまれたから。  ユーリスも二人を俺の両親と思ってくれている。だから水をあけられるのは寂しいのだと言った。本当に、王子様っぽくなくて好きだ。 「他の子供達はどうしたんだ?」 「マーサさんの買い物についてっちゃって。シーグルもいるから大丈夫だって言ってたけれど」 「まぁ、王都は治安がいいし、ロアールも心得ている。心配はないさ」  どっしりと構えたユーリスはそんな風に言ってあまり心配しない。自分も冒険者をしていたから、子供達の冒険心を理解しているのかもしれない。特にロアールの方は冒険者としての素質があると言っていた。  将来そうなりたいと言ったら、反対しないんだろうな。 「あっ、ユーリスあのね、明日からお店を手伝う事にしたんだ」 「店をか?」  慌ててユーリスに伝えると、少し驚いた顔をしていた。そして済まなそうにモリスンさんを見る。けれどそれを受けるモリスンさんは落ち着いていて、しっかりと頷いてくれた。 「息子達が手間をかけるかもしれないが」 「いや、構わないさ。宿は閉めておくが、食事処だけを開けようと思っている。二階の部屋は君たちがいる間貸し切りだから、好きに使って構わない」 「いいんですか?」 「あぁ。本当は食事処も開けるつもりはなかったんだから、いいんだよ」  俺達がここにくると、二人はいつも宿の二階を空けて待っていてくれる。少し申し訳ないけれど、遠慮をすると悲しい顔をされるからお言葉に甘えている。 「それに、仕事をしてみるのも、知らない者と話すのもいい刺激になるかもしれない。ユーリスくん、いいだろうか?」 「お二人が良いと仰ってくれるなら、俺は願ったりだ。どのようにして生活を立てていくのか、彼らも体験しておくいい機会になる。すまない、モリスン殿」 「いいや」 「そういう事なら、フランシェは俺が城に連れていく。母上と父上はすっかりフランシェの虜だからな。マコトが頑張っている間、きっと喜んでお世話をしてくれるさ」 「いいのかな?」 「勿論。どっちが世話をするかで喧嘩しなければいいがな」  冗談っぽく言ったユーリスに、俺もモリスンさんも顔を見合わせて、大いに笑った。  程なくして買い物から帰ってきたみんなは、案の定手にお菓子を持ってご機嫌だ。俺は仕方なく笑って腕をまくる。少しは俺も体を動かさないと。 「今日は俺も手伝います。何品か作らせてください」 「それは助かるわ! マコトの料理は美味しいもの」  マーサさんと並んでキッチンに立った俺はこうして、一緒に夕食を作り始めたのだった。

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