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【ほのぼの】マコトの帰省(5)
そんな事が2日、明日の朝には屋敷に帰るという午後。買い物に出ていたマーサさんが手に沢山の花や木の苗を持って戻ってきた。
「どうしたんですか、それ!」
「今ね、庭を綺麗にしている最中なの。よかったらみんなもお花植えていって」
ユーリスもこの日は休みで店を手伝ってくれ…ようとしたんだけれど、ちょっと不器用だった。結局はフランシェの面倒をみてくれていた。ちょっとだけ、元気がなかったな。
「うわぁ! おはな!」
「植えたい?」
「うん!」
マーサさんのそばで蕾を付けた花を見ながら、エヴァは嬉しそうに走り回る。そうして俺達は庭に向かった。
裏の庭は前にはなかった花壇ができていた。シャベルで穴を掘って、そこに花の苗を植えていく。夏から秋にかけて花が咲くらしい。その後はいくつか掘ってあった穴に、木を植樹した。
「この木、どんな花が咲くの?」
まだ細い若木は、それでも俺の胸くらいまではある。俺の隣に並んだユーリスは、ふわっと柔らかな笑みを浮かべた。
「夢見草という木だ。既に季節は終わっているが、春に薄紅の花を咲かせるんだ」
「薄紅の花?」
「あぁ。大きくなれば小さな薄紅の花が鈴なりに咲いて、まるで雲のようなんだ」
「それって…」
まるで、桜みたいじゃないか。
植えたばかりの若木に触れる。緑の葉を茂らせるそれが、春に花を咲かせる姿を想像する。そして、俺は一つ大事な事を決意してユーリスを見た。
「来年の春さ、みんなでまたこようね」
「ん?」
「俺の世界でね、春の花を愛でながら食事を楽しむ風習があるんだ。花見っていうんだけどね。その時に見る花と、この木の花は似ている気がするんだ」
俺が言うと、ユーリスも感慨深げに植えたばかりの木を見る。そしてそっと、俺の肩を抱いて頷いた。
「勿論、そうしよう。草地に腰を下ろして、食事を楽しむのもいい」
「うん」
「楽しみだな」
そう言った人を見上げて、俺は満面の笑みで頷く。そして、来春この庭で開かれる賑やかな花見の風景を思って、幸せに微笑んだ。
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