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【R18】シーグルのお願い(2)
その日の夜、俺はいつも通りユーリスを待っていた。お風呂も終わってゆったりしていると、ユーリスも部屋に戻ってくる。出迎えて、ハグをして、互いの頬にキスをする。俺の素敵な旦那様は未だに素敵なままだ。
「おかえり、ユーリス」
「あぁ、ただいま、マコト」
うっとりと微笑んだユーリスは手早く着替えてソファーに座る。勿論、俺はその隣だ。
「ユーリス、最近忙しい?」
まずはお伺い。イベントとか、忙しい事があるなら少し考えないと。ユーリスがやきもきしてたらお仕事にならないし。
「いや、そうでもない。国の行事なんかも落ち着いたから、わりと余裕がある。どこかに行くか?」
ふわりと笑い、頭を撫でる大きな手が心地よい。この手、未だに剣たこがあるんだよね。鍛錬を欠かしたことはないんだ。
そして余裕があるなら。俺は上目遣いにユーリスを見て、笑った。
「実はさ、今日シーグルからお願いされたんだ」
「何か欲しい物があるのか?」
「弟」
「え?」
面白いくらいに黒い瞳が俺を見つめて固まる。手がぎこちない形で止まってる。
俺の旦那様、こういう所でちょっと可愛い気がする。やることやって、シーグルだっているのに今更何を赤くなるんだろうね。
「俺はね、そろそろいいんじゃないかなって思うんだ」
「2人目ってことか?」
「うん。シーグルあまり手がかからないし、お妃仕事も国の事も勉強できたし、屋敷のみんなも協力してくれるし。全然俺には余裕があるから、そろそろ考えてみない?」
そう言って、俺は薬の瓶を置いた。ユーリスはそれをジッと見ている。躊躇いあるみたいな顔で。ちょっと、悲しいかも。
「嫌…かな?」
「あぁ、そうじゃ! いや…正直少し躊躇いはある。出産、辛いだろ?」
「あー」
やっぱり、そこを考えるのか。俺は5年前を思いだしていた。確かに大変だったとは思う。苦しかったし、痛かったのも本当。でも…。
「でもさ、もらった幸せの方が沢山で、おつり来るよ」
「マコト…」
「ユーリスは、幸せじゃない?」
頬に手を伸ばして、触れてみる。ユーリスは俺の手に手を重ねて、瞳を閉じて首を横に振った。
「この上ない幸せだよ」
「子供が増えていくと、その幸せも沢山になるよ」
困ってる? 考えてる? やっぱり嫌?
伺うように見てしまう。その目の前で、ユーリスは小さく笑った。
「そうだな。今の倍以上に、きっと楽しくて幸せだ」
「でしょ!」
「あぁ。マコト、平気か?」
「んっ、平気。それに出産関係のスキル上がってるって。任せてよ」
「悪いな」
「なんの!」
お互い見つめて、至近距離で笑い合ってキスをする。とてもフワフワとした、優しいキスだった。
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