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【日常】同郷の旅人(4)
そんなこんなで食事が終わって、俺は少しだけ志輝さんと二人で話す時間を貰った。懐かしい話があるのもそうだけれど、なんとなくもう少し会話がしたかったのだ。
タープからそんなに遠くない結界の中で、俺は志輝さんと隣り合ってお酒を飲んでいる。ユーリスはその間にシーグルに剣の稽古を付けてくると言った。
「本当に、素敵な旦那様と可愛い子ですね」
「あはは、有り難うございます」
「竜人族は出生率が下がっているのですよね? その中で子供が生まれるなんて、貴方はとても愛されていますね」
「え?」
志輝さんは色々と知っているようで、そんな事を言う。多分俺よりも、この世界のことを知っているんだ。
「あの、志輝さんはどうして国を出てきたんですか? 魔王さん…アルファードさんとは上手くやれなかったんですか?」
思わず聞いてしまう。
だって、知らない世界を一人で旅するなんてとても大変だ。どうして志輝さんはそんな決断をしたのか。アルファードさんはそれを許したのか。
時折、アルファードさんの話をするときの志輝さんは憂いがあって、そこに気持ちがないとは思えない。なのに、どうしてなんだろう。
たっぷりと考えた志輝さんは力なく笑った。
「あそこでは、私は異質だったから…でしょうかね」
「異質?」
なんだろう、それ。なんか、とても悲しい気持ちになる。
「私の性は、他者の命を狩る者なのでしょう。ですが魔人族は争いを嫌います。私の性質とは真逆です。それに、私のスキルを発動させる条件は、あの国では整いません」
「スキル、ですか?」
この人も何か、特殊なスキルを持っているのだろうか。そう思って見ていると、ふふっと誤魔化すように笑っていた。
「それとね、私は喧嘩の仲裁をしなければならないのですよ」
「喧嘩の仲裁!」
こんな旅をしなければならない喧嘩の仲裁って、なんだろう。国家間を跨いでって事なのかな? 今は国同士の戦争とかないって聞いているのに。
「誠さんは、ユーリスさんに愛されるためにこの世界に来たのですね」
「え?」
志輝さんを見ると、志輝さんは一生懸命に鍛錬をするシーグルとユーリスを見ている。どこか厳しい視線で。
「この世界に異世界人が招かれるのは、この世界の神が歪になった世界の秩序を保つ為なのだそうです。だからここに来た異世界人は、必ず必要とされるのです。貴方がユーリスさんの側に落ちたのなら、そのようにこの世界の神が巡りを用意したのでしょうね」
どこか、不安になる。志輝さんは何を知っているのだろう。とても沢山…この世界の住人ですらも知らない事を知っているんじゃないだろうか。
「志輝さんは、どうしてそんな事を知っているんですか?」
問いかける。それに、酷く困った顔で志輝さんは頷いた。
「この世界には、二人の神がいるそうです。地の神と、天の神。二人で世界を支えていたはずでした。その一柱が、魔王であるアルファードです」
「え!」
俺は驚いて、次には心臓がドキドキと鳴った。そして気づいた時には、俺は志輝さんの手を握っていた。
「志輝さん、その人に会わせてください!」
「誠さん?」
「竜人族は出生率が下がっています。俺が「安産」のスキルで子供を産んでも、絶対数は減っているんです。その神様にお願いして、子供が生まれるようにできないかお願いしたいんです!」
竜人の国にいて、やっぱりそこは気になってしまう。俺の周りには沢山子供がいるけれど、町の中を見ればそうでもない。子供が圧倒的に少ないのは否めないんだ。
志輝さんはとても辛そうに、首を横に振った。
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