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【初恋】シエルベートの決意(1)
なんだか騒々しくて、僕は玉座の間を覗いた。
そこにはロアールの弟のエッツェルがいて、なんだか思い悩んだ顔をしていた。
エッツェルが父様の事が好きっていうのは、知っていました。小さな時に助けてもらって、それからずっと父様の事が好きです。
ロアールはそんなエッツェルの事を「仕方ない奴」って言って呆れていました。
父様には、母様がいます。とてもとても愛しています。
でも母様は、時々苦しそうな顔をするんです。爺様が母様を虐めるから。母様にそれとなく、酷い事を言うんです。
「他の国には沢山の子がいる」とか、「二人目の予定はないのか?」とか。
僕は知っています。母様がどんなに大変な思いをして僕を産んでくれたか。僕を産むために、母様は死んでしまうところだった。父様はとても悲しんで、それでも生きていてくれた母様は強いんだって教えてくれました。
僕もそう思います。母様はとても元気で明るくて、そして優しい母様です。
エッツェルがいるなら、母様はきっと悲しんでいる。爺様が最近「もう一人くらい嫁を用意してもいい。正妃の位はお前にやるから許容しろ」なんて酷い事を言っていたのです。母様は言い返せないまま、悔しそうに拳を握って耐えていました。
母様をお慰めしないと。思って姿を探していたら、不意に廊下の先で父様の大きな声がしました。続いて、母様の声も。
「俺は、ダメな嫁だ。周りは何人か子供がいるのに、俺は一人で、もう増やせない。それならいい相手をお前に娶せて、産んでもらうよりほかない。そんな風に言われて、俺が何か言い返せると思うのかよ。事実突きつけられちゃ、お終いだろ。我慢するしかないだろ」
この言葉に、僕の胸はズキリと痛みました。母様の苦しさや、悲しさが声から伝わってきます。言いたくても言えなかった思いが、全部を「ごめん」の一言に乗せてしまっていた気持ちが、溢れるように響いていました。
「私は貴方しかいりません。子など、これ以上はいりません」
「だって!」
「いりません! 貴方との子でなければ、愛せないでしょう。だからもう、いらないのです」
大きな声など出さない父様の強い言葉と、母様の泣き声に、僕の胸は締め付けられます。
僕は、一つ決意しました。母様がこれ以上悲しい思いをしないように、僕が頑張らなければ。僕が、沢山子供を産んでもらえる人と結婚して、黄金竜の王家を増やさないと。
僕は一つ決めて、父様と母様の側を離れました。
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