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【日常】黒龍発スイーツパニック(グラース・2)

「それにしても、マコトのケーキは本当に美味いよな」  ハロルドが苺ショートを食べながら綻んだ顔をしている。 「あちらの世界でパティシエにでもなっていれば、人気が出たんじゃありませんか?」  シキはそう言いながらトリュフを摘まんでいる。 「ショコラティエでもいいですね」 「パティシエ? ショコラティエ?」 「パティシエはスイーツを作る専門の料理人。ショコラティエはその中でもチョコレートを作る専門の料理人ですよ。正確にはもっと、定義があるのかもしれませんが、一般的な認識はそんなものでしょう」 「そんな専門家がいるのか!」  俺は驚愕だ。是非ともマコトやシキの世界に行きたいものだと思う。専門職ができるほどに多様化しているなんて、なんて羨ましい。  マコトは少し顔を赤くして笑って首を横に振っている。 「俺なんてまだまだ。失敗もするし」 「好きだったり、誰かを喜ばせたいという気持ちでここまで腕を磨けるのですから、天職でしたよ」  シキが微笑んでマコトを褒めると、彼は余計に赤くなる。そういう部分を「可愛い」と、実は彼以外のママ会メンバーは思っている。 「それにしてもさ、グラースのそれは食べられるのか?」  ハロルドが俺の皿を見て言う。俺の皿の上には全てのスイーツが乗っている。勿論全部を美味しく食べる。そして足りない。 「グラースさん、本当に好きだよね」 「マコトの作るスイーツは他よりも格段に美味しい。今一番だ」  勿論これは本心だ。苺のレアチーズケーキを頬張りながら、俺はうっとりと微笑んでいる。 「美味そうに食べるよな」 「見た目に反しますよね、本当に。グラースさんは甘い物を食べている時に可愛い顔をします」 「ん?」  なんだか聞き慣れない……一部の変態以外からは聞いた事のない言葉が聞こえて俺は顔を上げた。シキは柔らかく微笑みながら、俺の皿にトリュフを一つ追加する。 「おや、自覚がありませんか? グラースさんはスイーツを食べている時は目尻が下がり、頬が上気して嬉しそうに微笑むのですよ。耳も少し折れるし、尻尾もずっと緩く揺れています」 「そんな事!」 「え? いや、可愛いは別としてすっごく好きなんだと思えるぜ」 「俺も、最近はグラースさんが喜んでくれるスイーツを作ろうと腕を振るってるんだよ」 「えぇ!」  分からなかった…。  俺はガックリと肩を落とす。そんな俺に、他の3人は大いに笑った。

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